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第198話 無口になる

きれいに生きたい


起きたての顔を洗ってを落とす

食後だけでもいいけれどできれば

食事前にも歯を磨いておきたい

めんどうくさいからこそ

習慣化してしまったほうがらく

ていうか気楽きらく

ていうか気にまずに


生きているとはよごれること

 よごれたままだ



キレイになりたい


あらがえない立場からの強要

恩を感じている相手からの要求

単純に上からの指示

ほうら

気持ちまで霞翳くすみやがる

どうしよう

どうするもなにも

どうしようもない

どうしようもなくて


どうにかしたい



きれいさっぱり

シャワーが好き

水のままでいい

そのきびしさをれてなお

喜びとなす

これも本性ほんしょう


どうにかしよう

どうにかしようよ

どうにかできる?

不安だ

心配で

はりさけそうな胸

だからこそ

どうにかできるんだと思う


願う時間さえもしみ

祈る時間さえもけずった

どうにかできる

どうにかできる

どうにもならない現状だけど

なんとかできる


根拠のない自信というより

遺伝子にきざまれた切札きりふだ

実体じったいのないカードを切って

さえぎれない陽射ひざしをびるよ



黙っていてもあふれてきそうな

この気持ち


ギュッてむすんで

こぼれさせるな



本気ほんき度合どあ

強まるほどに

おれは ますます 無口むくちになる




じっとしていても汚れる

なにをしても

なにもしなくても

だったら泥としりつつ戯れて

なおかつ汗を流れるままに

額から滴り

わきから湧いて

夢中なんだ

夢中なんだよ

夢中だから

わからなくて

夢中ゆえに

わからなくなる


ふと

そういえば

冷静になり

鏡のない場所でも

自分の顔が気になるとき

からだじゅうを拭きたい

キレイさっぱり風に吹かれて

自分のために自分を消した


さて

消したつもりが

消えていなくて

むしろバレてる



ああ やっぱり なんとなく

やることなすことすべてが

自分なりの選択なんだ


消したつもりも

拭いたつもりも

新しい存在を招くだけ



ありのままで自分らしくよごれを蓄積させれば

みっともなくて自分が自分でいられなくなる


おれは君に会いにいく

自分の匂いを消して

おれは君に笑いかける

自分の気持ち押し殺して

おれは君に声をかける

素直な気持ち…といきたいけれど

うらはら

よこしま

されど

正反対は両輪だから

片方だけでは走れない



はしゃいで

大声で叫ぶように名前を呼び合いたいが

波をって

髪はしお湿しめ

おれは言葉をうしなうばかり


素肌が汗をはじき散らす

水着が砂をはじき落とす

眩しい初夏の太陽を直視ちょくししかけて

視界しかいぼやけて立ちくらみそうだ


なにをしたいんだっけ

なにかしなくちゃいけないの?

なにもしていないようでも

なにかが常に変化し続けている


不思議なんか楽しい

本気ほんき度合どあ

強めるほどに

おれは ますます 無口むくちになる





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