☆第百二章 はじめてのケンカ。
藪内さんの不機嫌な顔を初めてみた。いつもニコニコ朗らかな表情なのに、怒らせてしまったのだろうか。
今まで、火曜と木曜は事務所で一緒に働いていたけれど、就職活動に専念するために動画編集の仕事を辞めた。
家がすぐ近くとはいえ、どうしたらいいのだろうか。
夜はメッセージのやりとりをしている。「おやすみなさい」とかそんな程度だが、日曜の夜にメッセージが届かなかった。
月曜日、どうしようか直接会いにいこうか。
火曜日、昨日の夜もメッセージがなかった。
もやもやする。仕事を十六時に終えて、杏を迎えに行く前に、藪内さんのアパートに寄ってインターホンを押すが誰も出てこなかった。
夜、メッセージが届いた。ピロン
『ごめんなさい』
それを見た途端、会いたくなって、杏が眠っているのを確認してこっそり家から出て藪内家にいく。
『わたしもごめんなさい』
ドアがあいて、彼が出てきた。玄関で抱き合う。
「本当にすみません」
「ううん」
杏を家に残したままなので藪内さんが我が家にきた。