☆第百三章 お正月、急にやってきた。
麗奈に相談したら当然の如くあっさりOKが出た。藪内さんのアパートと我が家は約三十メートルしか離れていない。家賃がもったいないから一緒に住みたい。ということで、我が家に藪内さんが引っ越してくることになった。
同棲っていうのかな。内縁の夫?
年が明けた。大晦日も元旦も藪内さんと一緒だ。当然杏も一緒でまるで本当の三人家族みたいになった。
三人で初詣に行く。神社のまわりに色んな出店がでていて、杏があれこれ欲しがるので、わたあめを買ってたべていた時、ふと、波琉ちゃんに似ている子を見かけた。その子は知らないおばさんと一緒だ。波琉ちゃんの他に三人ほど子どもがいる。
「波琉ちゃんかもしれない」
藪内さんの服を引っ張る。
声をかけようかと思ったが、波琉ちゃんはそのまま行ってしまった。
「案外近くにいるのかもしれないね」
今日、お参りに来ている神社は、大阪天満宮で人はかなり多い。このあたりに児童養護施設があるのか検索したところ、近くとまでは言えないが、ある。
なんとなく波琉ちゃんはそこにいるのではないかという気がした。
神社から帰宅すると、突然、スマホが鳴った。母だ。
「もしもし、久しぶり! あんた全然奈良に帰ってこーへんから、こっちから来たで」
「えっ、来たって今どこ?」
「ちょうど大阪で買い物したいなぁってことで朝から来てたし、さっき西区に入ったところ」
えええええええ⁉️
「どうしたの?」
「両親がきます」
「えっ……」
藪内さんと一緒に暮らし始めたことは両親には言っていない。
「僕どっか、隠れるか外出したほうがいい?」
考えたが、大学生とかならともかくもう三十も半ばなんだから、わたしが誰と一緒に暮らしていようが自由だ。
「ううん、ここにいて。紹介するよ」
鍋の用意をしていると僅か三十分後には両親が到着した。