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第百五章 とべないつばさ

☆第百五章 とべないつばさ


 三が日の終わり、メッセージが届いた。


『児童センターは明日から開いているみたいですよ。よかったらまた一緒に行きませんか?』


 片桐さんからだ。

 今年は四日が土曜日で、五日が月曜日。児童センターは月曜日から土曜日まで開いている。


 無視をしようかと思ったが


『すみません、彼氏が男の人と一緒にいるのいやがるので……』

『そうですか、風夏が悲しむな』


 確かに子どもたちに何の罪もない。


『前田さん、僕のこと覚えていました?』

『もしかして、翼くんなんですか?』

『あ、やっぱり覚えていた。琴ちゃんだよね』


 小学生の時は一学年1クラスしかないので、六年間ずっと一緒だった。

『昨日まで気づかなかった』

『そうそう、オレ太ってたからな。随分痩せたでしょう?』


 小学生の頃の翼くんは、翼が生えても飛べなさそうな肥満児だった。


『ばあちゃんが孫になんでもかんでも食べろ食べろって、与えまくるから太ってたんだ』


 畳屋のおばあちゃんの顔もなんとか覚えている。というか、うっかりメッセージのやりとりをしている。


『ごめんなさい。本当に子どもたちには申し訳ないけれど、今後一緒に車に乗ったりはしないようにします』


 返事は来なかった。


 数日後、正月明けに藪内さんは、まきば保育園ではなくて、どんぐり保育園に就職を決めた。


 ああ、仕方ないか。せっかくの就職を喜ばないワケにはいかない。


 通勤のためにリサイクルショップで自転車を購入した。


「雨の日が大変だね」

「レインコート着て爆走するしかないな」



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