☆第百九章 三十五歳の災難はつづく。
『引っ越すことになりました』というメッセージと共に、住所までご丁寧に送信されてきた。
その住所はわたしの家からほんの二分ほどのところにあるマンションだ。
あり得ない……とわたしは固まる。藪内さんといい片桐さんといい、我が家のすぐ近くに住む作戦を実行する根性があるのはすごい。ある意味尊敬するけれど。
片桐さんには家の場所も電話番号も、本名も知られている。
わたしは藪内さんに相談した。
「ストーカーみたいですね。って僕が言ったら自虐ですが」
あの日から休日は指輪をはめている。それを見て彼がニコっと笑った。
「つけてくれているんですね。僕は琴さんを信用します」
「あの……何かあったら」
「手を出させません」
そう言ってくれる藪内さんは頼もしい。しかし、片桐さんからのメッセージは続いた。
『四月から風夏がどんぐり保育園からさくらんぼへと転園します』
んんんんなんだってえええ⁉️???
まさかと思うけどそこまでする⁉️
『実家と同じマンションに引っ越すことになって。おふくろも親父も歳のせいか元気がなくて』
なるほど、そういう理由があるわけで…………。
何だろう、そういう理由があるのなら、と思うのと、明らかに何かイヤな予感がするのと。