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第百十章 環名ちゃんはいつも突然だ。

☆第百十章 環名ちゃんはいつも突然だ。


「あ、わたしも引っ越すことになりました」


 いつもどおりサラリと話す環名ちゃん。


「え、どこに?」

「大阪の港区の方に。前澤さんと一緒に暮らします」


 なんだってーーーーー⁉️


「えっ、いつの間に⁉️」

「実はプロポーズされました」

「えええええ?」


「6月に挙式しますね」


 本当になんというか、今日はいい天気ですねくらいのテンションで言ってしまう環名ちゃんは大物なのかもしれない。


「う、ウエディングドレス?」

「そうですね、ほら、海の見えるホテルで」

「す、素敵……」


 わたしの知らないところで環名ちゃんと前澤さんのロマンスがあったのだろうか。


「これでやっと親にごちゃごちゃ言われない」

「え、もしかしてそれが理由で結婚するの????」

「まさか」

「あ、そういえば和装もいいなって思ってこの間、神社で写真撮ってきたんですよ」



 素敵だ。赤の彩り鮮やかな着物の環名ちゃんと袴姿の前澤さん。ベストカップルだ。


「本当はあき婆のほら、前に料理を手伝ったあのレストランで挙式したかったんですけど、

親戚の人数が多くて」


 なんか、話を聞いていると、環名ちゃんは一人っ子じゃなくて五人姉弟だと初めて知った。


「わたしだけ女で、残り四人が弟なんです」

「長女なんだ!」

「長男は早くに結婚して子ども二人いるし、さらにわたしの親も兄弟が多いんです。つまり叔父、叔母が大量にいるんです」

「はあ……」



 環名ちゃんがカレンダーの裏に家系図を書いたらなんかすごい大家族みたいだ。


「わたしの母が四人姉妹で、わたしの父は五人兄弟なので……」


 さらに前澤さんは公務員で、職場の人も招待する。招待客はざっと八十人ほどになりそうだと。

「もちろん琴さん、藪内さんも招待状出しますね」


 なんか、人の結婚式はワクワクする。



 春めいてきた頃、招待状が届いた。わたし、藪内さん、杏……。あれ、杏も行くのか。誰も預かってくれる人いないもんな。大丈夫かなぁ。式の間あちこちウロウロされても困るよな。


 もちろん、有馬一家も招待しているはずだ。ということは、星弥くんも来る。

星弥くんは立派な小学生になる。


 この間、麗奈の家にお呼ばれした時に。星弥くんのランドセルを見せてもらった。

黒でも青でもなく、黄色というか黄土色のランドセル。珍しい色だった。


 みんなどんどん成長していく、当然わたしは歳をとっていく。


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