☆第百十四章 結婚はゴールインじゃない。スタートラインに立ったということ。
「唐突だからビックリした」
麗奈の家に遊びにきていた。本当に突然、何の前触れもなく、誰かの誕生日でもない日に婚姻届を提出した。四月の二十日。
わたしの誕生日は一月十一日、杏が一月の二十五日、藪……いや、洸稀さんは六月が誕生日だ。
そして、麗奈にもう一つ報告があった。
「あのさ……。結婚したばかりで唐突なんだけど」
わたしは麗奈に耳打ちをする。
「ええっ!」
「まだ誰にも言ってないの」
「藪内さんにも?」
「うん」
「なんで、言ったら喜ぶんじゃないかな。それでもしかして慌てて結婚したの?」
「ううん、別にそういうわけじゃない」
リアルな話だが、妊娠検査薬を使ったのはつい昨日のこと。
「楽しみだねぇ♪」
「何なにー、なんの話?」
行登さんが近づいてきた。
「何もない、女ノコの話」
「もう子っていう歳じゃないでしょうw」
「失礼ねぇ、何歳になったって女子よ」
今はちょうど偉月くんは眠っている。
「麗奈、眠れている?」
「うーん、なんとか三時間とか四時間とか」
三年前に杏を出産したのに、すでに忘れつつある。そうだ、夜中に授乳やらミルクやらで何度も起きるんだった。そんなことできるかな。
「で、お相手にはいつ言うの?」
どうしようか。そのうちつわりが始まるかもしれないし、言うしかない。それにしても、
ソーシャルワーカーになろうと決めた矢先に、無計画だろうか。
早速、児童養護施設での求人がないか探してみた。すると、パート勤務ではあるが、家から電車で通えるところに、一件求人があって、一昨日に電話をしたところだった。
働き始めた途端、妊娠しているんです。っておかしいかな。無計画だと思われるのかもしれない。