☆第百十五章 ファミリーソーシャルワーカー。
GW明けから働き始めることになった。電車に乗って十駅なので割と遠い。時間は早番、六時出勤で三時に終わる。遅番は三時から九時まで。いずれにしても洸稀さんの力を借りないと働けない。
早番の日は、杏を保育園に送り届けるのは洸稀さんの仕事になる。
遅番の日は、杏をお迎えに行くのが彼の仕事。
週にまず四回、働く。幸いまだつわりは始まっていないのか、それとも軽いのか。
麗奈の家に遊びに行った日の夜に洸稀さんに報告すると、すごく驚いた顔をしていた。
そして、予想外に謝り始めた。
「ごめんなさいごめんなさい」
喜ぶと思っていたのに、謝りまくる洸稀さんをなだめていた。
「大切に育てていこうね」
妊娠の初期は不安定だ。まだ流産の可能性も大いにある。
初出勤の日、六時から仕事スタートなので、始発の電車に乗る。車内にはほとんど人がおらず、徹夜明けで飲んでいたのかへべれけの若者たちがぐったりしていたり、
始発に乗るっていうことがなかなかない体験なので、周りの人たちは何ゆえ、始発電車に乗っているのか。正直眠いしあくびも出る。
慣れないことだらけだが、わたしが働くことになった養護施設には、幼児七人、小学生五人、中学生五人、高校生四人のトータル二十一人がいるとのことだった。
波瑠ちゃんがいる養護施設ではない。
ここにいる子の九割が虐待が理由で預けられているという旨を聞いて、心が痛くなった。どんな気持ちでここにいるのだろうか。
「いってらっしゃい」
最大限の笑顔で送り出す。
子どもたちが学校や保育園に行くと、児童施設は子どもゼロになる……ワケではない。心に傷を負った、小学生の藍ちゃん、中学生の奏ちゃんは学校に通えない。二人にはマンツーマンで勉強を教えたり、お話をしたり。その後、清掃や事務作業を行い、三時に終了。
遅番の方が子どもたちに触れる機会が多い。学校から帰ってきた子どもたちに宿題をさせて、一緒に遊ぶ、夕飯を食べさせる、お風呂にいれる。
みんなそれぞれ、性格が見えてくる。几帳面な子、大雑把な子、優しい子、でも全員に共通するのが、怖がりなんじゃないかと思った。職員がコップをうっかり割ってしまった時の音に、子どもたちはビクっと反応する。
どんな環境で過ごしてきて、保護されたのであろうか。
奏ちゃんの背中には火傷の跡があった。藍ちゃんは何本か歯がないらしい。