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第九十一話

学園長からもらった封書を事務室にいた人に渡すと、

すぐに鍛冶場の使用許可が下りた。


しかも、置いてある素材は好きに使っていいらしい

この学園どんだけ儲かってるんだろ。


いや学園が儲かってるっていう概念は良くない気がするからやめておこう。

探求の為ならどんな犠牲も厭わないのだと思っておこう。


どんな犠牲も厭わないだと、別のところで・・・・


アルージェが余計なことを考えながら歩いているとルーネから「バウッ」と吠えて、

しっかり前見て歩けよと脳内に伝わってくる。


「あぁ、ごめん、なんか余計なこと考えてたらそのまま沼にハマっていきそうだった、助かったよ」


ルーネはやれやれと首を振って、「ヒューン」と聞いたことない鳴き声を出された。


「なにその鳴き声!おもしろっ!」


アルージェに鳴き声を指摘されルーネは少し恥ずかしくなって、すたこらとアルージェを置いて先に進む。


「あぁ、ルーネ待ってよー!」

ルーネを追いかけて、鍛冶場に向かう。


ルーネはすたこらと進む割に向かう場所だけは間違いないので魔法学校の主になる建物から少し離れた鍛冶場に到着する。

部屋の中に入ると明かりが自動で起動する。


魔法学校なので、流石に鍛冶をしている人はおらず、長い間使われなかったみたいだ。


「埃とか被ってるところもあるな、まぁ当たり前か、魔法使いが鍛冶するわけないよね」

まずは掃除からかなぁなんて思ってルーネを見ると、

今の状態だと足をつくのも嫌なようで入り口から部屋に入ってこようとしない。


「あはは、まずは床の埃だけでも水で流そうかな、ルーネ入口閉じてもらえる?」

アルージェがルーネにお願いするとルーネは何をしようと思ったのか、すぐに察知したようで、扉を閉めて次の指示を待つ。


「ちょっと雑だけど許してねっと」

アルージェの周りに魔法陣が表れ、天井と壁に勢いよく水が放たれる。


放たれた水は天井と壁を端から端まで沿うように放たれて、壁と天井の埃を巻き込みながら床へと落ちてくる。


アルージェの膝くらいまで溜まったのを確認して魔方陣を消す。

そして溜まっている水を操作して、流れを作り、床の埃を一掃する。


天井、壁、床の埃を巻き込んだ水は黒く濁っていた。

「よし!だいぶ取れたみたいだね、ルーネ、扉開けて!」


アルージェが指示するとルーネは扉が開きすぐに距離を取る。


扉が開いたので、逃げ場ができた水は入り口から出ていくが、水を魔力で操作して扉からすべて追い出す。

最後に残った水滴を魔力で操作して床掃除が完了。


「鍛冶場が建物の中じゃなくてよかったよ、こんな大雑把な掃除できなかっただろうし、ルーネこれなら中に入れる?」


ルーネに確認すると、扉から顔を出して、中の様子を伺い、問題ないと判断し中に入ってくる。


「うわっちょっと待って体に埃被ったかもしれない」

魔法陣を展開し、アルージェの頭上に水の塊を出して、自分の周りに纏わせて、汚れを取り、そのまま外に放つ。


「あとは」そう言って先ほどの魔法陣とは違う色の魔方陣を出し、火を起こし体を乾かす。


「もしかして水の操作で乾かせるかな?」

服についている水を意識して操作すると、服についている水が動き始めて小さめの塊になって現れる。


「おぉ、これは便利だ!」」

出てきた水は外に出して、火の近くで温まる。

体が温まるまでゆらゆらと燃えている火をボーッと眺める。

ルーネも火の近くでボーッっとしている。


「火を見てると落ち着くなぁ、よしそろそろ体も温まったし、鍛冶やり始めようっと!」

そういって炉に火をつけ、設備に問題がないことを確認する。


素材を置いてある、倉庫を見に行くとそれはそれはかなりの量の鉄鉱石やら鉱石やらがたんまりと置いてあった。


「すげぇ!これを好きに使っていいってほんと!?」

早速鉄鉱石を手に取り、鍛冶場に向かおうとするが、他にも置いてあるいろいろな鉱石に目がいく。


「他の金属って使ったことないけど、鉄とはやっぱりやり方全然違うのかな」

近くにある、紺碧色の金属を手に取る。


「これは何だろう、色が奇麗だな、金属図鑑とかあるのかな、特徴を知ってからやらないと無駄にしちゃうよな」

紺碧色の金属を元の場所に置いてから鉄鉱石だけを手に取り、鍛冶場に向かう。


少ししてから、アルージェは倉庫に向かい、紺碧色の金属を少しだけ手に取り、また鍛冶場に向かい。


いつも通り鍛冶を始める。

完成したものはいつもの剣と見た目は何も変わらない。

剣を振ってみるが、重さもそこまで変化はない。

鋼のインゴットを用意して、切り付けてみると剣は少し刃こぼれをする。

ただ肉なんかを切ってもいつも通り違和感なく切れる。


「んー、なんかあんまり変化ないや、強度もいつもの鋼とそんなに変わらないし、まだ余ってるし、もう少しだけこれで武器作って、いつも通り、鉄鉱石だけで作ろうっと」

見た目も違和感が無いため合金にはなっているのだろうが、強固になったわけでもなく、柔軟性があるわけでもないので、

余っていたものでショーテルを二本作って、槍の刃を作って、残りは全ていつも通り鋼で付与魔法練習用の武器を作成した。


「ふぅ、やたらと作ったな、気づいたらもうちょっと明るくなってきてるし、こりゃ帰ったらミスティさん達心配してるかもなぁ・・・、謝って許してもらえたらいいけど」

鍛冶場の端で丸まって寝ているルーネに視線を向ける。


「今日はここで仮眠とって、そのままコルクス教授のとこにいこうかな」

丸まっているルーネに近づくと、ルーネが体勢をを変えずに目だけ開ける。


「あぁ、ごめんね、起こしちゃった?少し仮眠取りたいから一緒に寝てもいいかな?できればいつもの時間に起こしてほしい」

そういってルーネの返事を待たずに丸まっているルーネにもたれかかり、すぐに寝息を立て始める。


ルーネはアルージェが寝たのを確認すると、寒くならないように尻尾をアルージェの上に乗せて掛布団の代わりにして、また目を閉じる。


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