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第百二十五話

あれからも何度か付与魔法の授業に出た。


ドルン教授が学生に見せている刻印は、コルクス教授から教えてもらったものとほぼ違いはなさそうだ。

つまり、後は自分でどれだけ無駄を省けるかに掛かっている。


授業が終わるたびにドルン教授の元に行き、図書館で読んだ変わり種の付与魔法について話す。


「ドルン教授は本当に付与魔法への知見が深いですね。何を話しても大体知ってるじゃないですか」


ドルン教授は付与魔法が好きでしっかりと話を聞いてくれる。


「まぁ付与魔法は本当にお金になりますからね。図書館にあったものは全て目は通してますよ」


「あはは、変わり種の付与魔法はあまりお金には直結しなさそうですか?」


「そうですね。確かに面白い発想には違いないのですが、どうしても日常的に使うとなると刻印のほうが使い勝手がいいですね。ですがこれはあくまでも日常的に使うにはですけどね。どんな技術も無駄にはならないと私は信じているので」


「日常的に使うとなると・・・」

アルージェが顎を触りながら考える。


「実は僕戦う時に自分が持っている武器に簡易付与テンポラリーを使っているんです」


「持っている武器に簡易付与テンポラリー・・・?ふむ。良ければ少し見せてもらえないですか?」


アルージェは返事をして、アイテムボックスからブロードソードを取り出す。


「『簡易付与テンポラリー硬質化リジダイズ』」

簡易付与テンポラリーを施した後、もう一本ブロードソードをアイテムボックス取り出す。


「後ですぐ直すから、ごめんね」

取り出したブロードソード額をつけて謝り、そして上に放り投げる。


上に投げて目の前まで落ちてきたブロードソードを、簡易付与テンポラリーを施したブロードソードで叩き割る。


「こんな感じです。今回は硬質化リジダイズだけでしたが、鋭利化シャープネスやらも使います」

粉々になったブロードソードのかけらを風魔法で拾いながら話す。


「まだ効果時間終わってないですね。どれくらいの時間持つんですか?」

ドルンはアルージェが付与を施したブロードソードを観察しながら言う。


「魔力をどれだけ使うで変わるので、一概には言えないですが、鐘一つ分くらいです」

アルージェは風魔法で集めたブロードソードをアイテムボックスにしまいドルン教授の方へ視線を向ける。


「アルージェ君はなかなかに面白い発想をしますね。しかも理にかなっています」


ドルン教授は立ち上がりアイテムボックスから土を出す。

形を整えて刻印を刻み、ささっとアルージェの倍はある大きな泥人形ゴーレムを作り出す。


簡易付与テンポラリー硬質化リジダイズ

最後に出来上がった泥人形ゴーレムに、簡易付与テンポラリーを施す。


「私は戦うなら表立って戦うより泥人形ゴーレムを少し離れた場所から操作して戦うやり方です。元々剣を持って戦える程の技量はないですし、攻撃魔法の種類も知っているわけですからね。少し操作しますのでこの泥人形ゴーレムをアルージェ君のやり方で倒してみてくれませんか?」


「わかりました」

アルージェは簡易付与テンポラリーを施したブロードソードを構える。


「では行きますよ」


泥人形ゴーレムを操作してアルージェを襲う。


泥人形ゴーレムは鈍重だが確実にアルージェを狙って攻撃する。

アルージェは軽やかに全て躱し、ブロードソードで確実に泥人形ゴーレムの付け根となる部分を攻撃する。

次第に泥人形ゴーレムが動かなくなり、地面に倒れ込みただの土となる。


「ふむ、やはり即席ではこの程度ですね。見てもらった通り泥人形ゴーレムを運用する場合、簡易付与テンポラリーを施したとしても恩恵がないんです。一応泥人形ゴーレムにも簡易付与テンポラリーを施したんですけどね。刻印と反発して邪魔になってしまう」

ドルンは土塊となってしまった泥人形ゴーレムの元に行く。

アイテムボックスを開き、土塊を回収する。


簡易付与テンポラリーは魔力があればほとんどの人が使えます。つまり誰でも使える技術ですね。一国の兵士全員に簡易付与テンポラリーを教えて使えるようになれば、相手は相当嫌でしょうね」


「うわぁ・・・、下手したらそこらへんに落ちてる木の棒の方が鉄より固くなってしまいますね・・・」


「そうですね。やはりどんな技術も無駄にはならないですね。ただ今回この発見が出来たのは、元々違うものに特化したアルージェ君だからです。我々魔法使いとは土台が違うから新しい視点で見ることが出来て、面白い発想に至る。今後もアルージェ君の面白い発想に期待していますよ」

ドルンはそろそろ自室に戻ろうと動き始める。


「なら教授!鉄に効果を五つ付与する方法教えてくださいよ!」


「方法?そんなものはありません。とにかく無駄を省いて最適化。そして最適化した後更に最適化をするだけです」



「えぇ・・・、そんな簡単にいいますけど・・・」

アルージェは少し引いた。

僕がドルン教授に付与魔法で勝てるようになるのか、かなり怪しくなってきた。


「やることは簡単です。ですがこれを会得するにはかなりの歳月と知識を有するでしょうね。最適化をやり始めたら本当に止まらないですよ。こうやってアルージェ君も沼にハマっていくのですね」

そう言い残してドルン教授は教室を立ち去った。


「はぁ、敵いそうにないや・・・、さっき壊したブロードソード直しに行こ・・・」

ルーネに合図を出すとルーネが立ち上がる。


そのままルーネに跨り、鍛冶場に連れて行ってもらう。



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