付与魔法の授業に出ているが、いまだに
「そういえば、付与魔法の授業に出てる人って少ない気がするなぁ。カレン教授の攻撃魔法の授業は、教室いっぱいに人がいたのに」
教室を見渡しながら呟く。
「アルージェ君、どうしましたか?」
学生の様子を見回っていたドルン教授が後ろから声をかける。
「い、いえ、なんでもありません。」
授業の成果物の作成に戻ろうとする。
「授業に出ている人が少ないと思ったのでしょう?」
ドルン教授はため息をつきながら話す。
「えっ・・・?もしかして聞こえてました?」
「そうですね、広い教室に少ない人数。みな真面目に付与魔法をしていて、ほぼ無言。声は響きますよ」
「あははは・・・・、すいません」
「事実なので謝ることはありません。付与魔法は魔道具が発達したことで日の目を見るようになりましたが、それでもほとんどの貴族は付与魔法を学びません」
「貴族は学ばない?それはなぜです?」
「貴族は攻撃魔法を習得して、戦争に行って武勲を上げようとしている方がほとんどです。貴族社会では未だに付与魔法を学ぶものは臆病者といった扱いなのでしょうね。武功を上げることが悪いとは言いませんが、技術の進歩を助長することで功を成す方法ではいけないんでしょうかね」
ドルンはやれやれと首を振りながら話す。
「付与魔法を学んで出来る主流な戦い方は教授に見せてもらった
「アルージェ君を別枠と考えるならそうですね」
「なるほど」
アルージェは黙り込み思考を始める。
つまり付与魔法をいくら学んでも一人で無双出来るような人にはなりにくいのだ。
だから詠唱さえ覚えれば強くなれる攻撃魔法に貴族は力を入れている気がする。
攻撃魔法に関する派閥が多いのもそういう理由だろう。
ただ、その中でも実戦に重きを置いている派閥をなかなか見つけられなかった。
貴族が好きそうな、派手で威力の高いコスパ度外視の詠唱を学ばせている派閥が多いと言うことだろう。
「アルージェ君がもしも付与魔法や
「あぁ・・・、せっかく誘っていただいたのに申し訳なんですが派閥は合わなさそうなんで全部断ってるんですよ・・・」
「そうですか。まぁ確かにアルージェ君はそうかもしれないですね」
ドルンは少しがっかりするが納得する。
「あっ、成果物ほとんど手を付けてない!早くやらないと」
アルージェは話に夢中になりすぎて課題に手を付けていなかった。
「フフフ、アルージェ君なら楽勝でしょうけど、頑張ってください」
ドルン教授は別の学生の様子を見に行く。
なんとか課題を終わらし、授業時間内ギリギリに成果物をドルン教授に提出する。
他の学生はササッと終わらして、もう教室から退室していた。
「はい、あれからよくここまでの物を仕上げましたね。さすがと言わざるを得ません」
アルージェが刻印を施したものを見てドルンは驚嘆する。
「あはは、ほんとギリギリでしたけど何とか完成しました」
「やはり、アルージェ君は他の学生とはレベルが違いますね」
「い、いやぁ、どうでしょうねぇ」
教室内に他の学生がいないか見渡す。
「大丈夫です。他に学生はいませんよ」
「ふぅ」
アルージェは安堵のため息を漏らす。
「やりたいことがあって毎日必死に付与魔法に取り組んでますからね。そのおかげかもしれません」
「ふむ、アルージェ君のやりたいことですか。それは聞いてもいいですか?」
「えっ、あぁ、小さな目標みたいな感じなんですけど、実は付与魔法の授業に出てるのは、
「
「えぇ、そうです。今日はいないですけど、いつも一緒に授業に出てるエマっていますよね?理由は言えないですけどエマの首飾りには強力な付与が施されていて、それを解除したいんですよね」
「なるほど、多大な魔力による性質変化が起こったものの
ドルンが人差し指でトントンとこめかみを触りながら思考する。
「刻印は刻まれた刻印を消せば効果がなくなる。魔玉は外せば効果がなくなる。
ドルンは変わらずこめかみをトントンと触り呟く。
「魔力がなくなれば効果がなくなる
ドルンが思考をやめ、アルージェに視線を向ける。
「実際に試したわけではないので、あくまで個人の意見として聞いてください」
ドルンは紙とペンを用意して図を描き始める。
「マナスポットで付与魔法が施された武器などが見つかりやすいことから付与魔法とはどれだけの時間魔力に晒されていたのか、もしくはどれだけの膨大な魔力に晒されていたかで物体に魔力が貯蔵され、付与魔法が施されると仮定出来ます。
ドルンは図でアルージェに説明を続ける。
「それならば
ドルンはペンを仕舞って図を描いた紙をアルージェに渡す。
アルージェは渡された紙を見る。
「ってことは魔力を無理矢理にでも全部吸い出してしまえば・・・!」
アルージェは近くで眠っていたルーネを起こして跨る。
「教授ありがとうございます!ちょっと試したいことができたので失礼します!」
ルーネに指示を出し、教室を後にする。
「若いっていいですねぇ、私も昔はあれくらい輝いていたんでしょうか」
ドルンも立ち上がり、教室から出て自室に向かう。