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第百二十七話

アルージェはドルン教授の仮説を元にどうするかを考える。

物体が魔力を貯蔵し、それで何らかの付与魔法が発生している。

つまり物体が貯蔵している魔力を吸い尽くせばいいという話だったが、どうやって物体から魔力を吸い取るかがわからない。

これが分かれば付与魔法を消し去ることができるかもしれない。


どうやって魔力を吸い尽くすか。


「そもそも、魔力を吸う鉱石とか存在しないかな?」

図書館で鉱石について調べていたが、あまりパッとしたものが無い。


「んー?よく考えたら魔力を吸う鉱石とかって、普通に考えて持ってたら犯罪になるのかな・・・?」

魔道具もある世界だから、所持していることすら罪になるかもしれない。


「そんな素材を探すのはさすがにダメか・・・。なら他の方法ないかなぁ?例えば魔道具に触れている時だけ魔力を吸収するとか?あぁ、けど吸収するだけなら吸収した魔力の使い道は?そもそも持った瞬間に僕自身の魔力を持っていかれない?周りに魔力を吸収したくない魔道具とかの判断方法はどうする?魔力は人にも有るし人と魔道具のの判断方法は?はぁ・・・、考えだしたらキリがないや」

アルージェは頭を抱えながら机に顎をこすりつける。

周りから見たら間違いなく不審者に見えるだろうが気にしている余裕はない。


「あれ?あれあれあれ?」

アルージェが顔を上げてルーネに視線を向ける。


「昔ルーネに魔力吸い取られなかったっけ?」

ルーネは首を傾げる。


「いや、絶対吸い取られたよね!?ヴァプンコヌングル遺跡でマイアさんとミスティさんと戦った後!村で!」

ルーネはアルージェから目を反らす。


「魔力の吸い方知ってるでしょ!なんでこんなに頭抱えてたのに教えてくれなかったの!」

アルージェがルーネに近づく。


アルージェが騒いでいたので小型の警備用ゴーレムがアルージェの元に飛んでくる。


「あっ、すいません・・・。ほんと気を付けるので勘弁してください・・・」

ゴーレムはアルージェの周りに集まっていたが、散り散りに離れていく。


「はぁ、また怒られちゃったよ。それでルーネ魔力はどうやって吸うの?」


「ワウッ」

アルージェの脳内にルーネからやり方が伝わってくる。


やり方を纏めるとこうだ。

主人と従者が血の契約するとパスと呼ばれる、相手の気持ちや魔力を共有する繋がりが生まれるらしい。

これは主人側が従者側に許可を出せば、そこを辿って魔力を共有したり一方に寄せることも出来るようだ。

逆に従者側の許可が出れば主人も魔力をもらうことが出来るらしいがおそらく使うことはないだろう。


「なるほど、パスを通すか」

アルージェは少し考える。


吸収する魔道具から自動で吸収したい魔道具に魔力供給ができるようなものを繋げるのは無理だ。

これは自動化できないものだと思う。

自動で吸収したい魔道具を指定する方法は間違いなく条件式が難しいし、余計なものからも勝手に吸収を始めそうだ。

なら僕自身が吸収する魔道具と吸収したい魔道具に無理やりパスを繋いでしまうのはどうだろうか。


パスを繋げる魔法を考えるのは少し手間だけど、その魔法に吸い取る時間や量を明示することが出来る。


素材にもよるが吸収する魔道具側はパスがつながっている時だけ吸い取るように設計すればいいだけだから制御が簡単だ。


できるなら吸収する魔道具は、ただ魔力を蓄えるだけの貯蓄庫の役割をしてもらうのが一番楽だろう。


「おや?おやおやおや?魔道具にしようかと思ったけど、これ武器に転用できるんじゃ・・・?」

アルージェはニヤニヤと設計を考える。


「よっしゃ!とりあえずやってみよう!図書館探しても鉱石はわからなかったし、コルクス教授に聞いちゃおう!そうしよう!」


その足でまずはコルクスに会いに行く。


「教授!お久しぶりです!」

扉から入り元気よく挨拶すると、コルクスは舌打ちをする。


「何の用だ。もうお前に教えることはねぇぞ」

言葉とは裏腹に、コルクスは席から立ちアルージェの方へ寄ってくる。


「今日は何個か用事があってきました!まず攻撃魔法研究会ってご存じですか?」


「あ?知ってるがそいつらがどうした?」

コルクスはアルージェの近くにあった机に腰掛ける。


「実は新魔法体系について話したんですけど、かなり興味を持ってしまって自分たちも新魔法体系で魔法を使いたいらしいんですがどうでしょう?」


「あぁ、そういうことか。まぁ別に教えるのは構わんが、今持っている魔法の知識の大半を捨てる覚悟でやらないと無理だ」


「えっとつまり?」


「はぁ、少しはマシになったかと思ったがやっぱりお前は変わらないな。そもそも現代人は詠唱と言うシステムに甘えている。その結果、魔力を直接操作する方法やら属性の変化方法、それに一から魔法を構築するという動きが出来ねぇ。だから今どれだけ優秀な魔法使いであっても新魔法体系で魔法を行使するには自身の固定概念を取り払い、新しいことを一から学ぶのと同義になるわけだ」


「ってことは、今までしてきた努力を全て捨てろということですか?」


「あぁ、そうだ。それに新魔法体系でのやり方を一度でもやってしまったら、今まで使用していた魔法はおそらく使えなくなるだろう」


「利便性とかそういう意味でですか?」


「ちげぇ、新魔法体系で魔法を行使するということは自身の魔力を操作できるようになるってことだ。詠唱して勝手に魔力が動いたりすることに違和感を覚える。手足が自分の意志ではなく勝手に動いたら気持ち悪いだろ?それと同じだ。体が無意識に抵抗したりする。その結果、詠唱では魔法を行使できなくなるそういう理屈だ」


「な、なるほど。ち、ちなみにもし無理やりにでも詠唱で魔法を行使しようとしたらどうなるんですか・・・?」

アルージェは興味本位でつい聞いてしまう。


「そうだな、やってみたらいいんじゃないか?」

コルクスはニヤリと笑い提案する。


「えっ?こんな話された後でよしやってみよう!とはならないですよ・・・」


「だろうな。そうだな俺は何度かやったことがあるが、詠唱すると体の中を勝手に弄られているような感覚になる。それからは頭痛や吐き気、ひどければ失神をしてしまうこともあるな」


「愛弟子になんでそんなことさせそうとするんですか!」


「お前はいつ俺の愛弟子になったんだ?」


「コルクス教授が認めなくても、僕はコルクス教授の愛弟子だと皆に言いふらしてるので!」


「あっ?お前何考えてんだ!くそめんどくさいことしやがって。なんで俺がお前のお守なんてしなきゃならんのだ」

コルクスはぶつぶつと文句を言いながら顔をしかめる。


「なら、攻撃魔法研究会の方たちには覚悟が奴だけ来いって伝えておきますね」

アルージェはコルクス口調を少し真似する。


「癪に障る話し方だが、まぁそういうことだ。」

コルクスは魔法で紅茶を用意し始める。


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