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第百二十八話

コルクスは研究机の方には戻らず、淹れた紅茶を座って飲み始める。


「・・・?」

アルージェがコルクスの様子を伺う。


「なんだ?もう一つ用があるんだろ?早く言え」


「あっ、すいません。なんか研究机の方に戻らないの珍しいなと思って」


「あぁ?あぁ、確かにそうかもな。お前のおかげで少し前に研究が落ち着いたんだ。もう学会に提出したから少し休憩だと思っていたが、余計なことが立て続けに起こってあまり休憩できてないがな」


「おっ!研究終わったんですね!ならもう一つも遠慮なく聞けますね!」


「あぁ、聞いてやるから早く言え」


「実際にあるかどうかわからないんですが、魔道具で魔力を吸収できるものとかあるんですか?もしくは魔力を永遠にため込み続ける鉱石、魔力を吸収する鉱石とかそういうものが欲しいんです」


「どちらの条件も満たすものがあるぞ。魔力を吸収し続けて、貯蔵し続ける鉱石」

コルクスは紅茶を机に置く。


「どこに有るかも知ってるが、今のお前が探しにいくのは危険かもしれないな。聖国がお前を狙っているんだろ?そんな状態で学外に出れば間違いなく暗殺者が来るだろう」


「そ、そうですよね。ここにいたら安全でいつもと変わらない生活できてたので、自分の立場分かってなかったです」

アルージェは肩を落とし俯く。


「はぁ」

コルクスがため息をつき魔法陣を展開する。

その魔法陣に手を入れて、ペンと便箋と封筒を取り出す。


ペンがサラサラと勝手に動き、便せんに何かを書き始める。

ペンの動きが止まると封筒の中に入れて封蝋を施す。


「ほらよ、これを学園長に渡せ」

その封筒をアルージェに渡す。


「こ、これは?」

アルージェは封筒を受け取りコルクスを見る。


「今回だけ俺の研究で必要ってことにしてやる。新体系魔法に興味がある奴を紹介してきた礼だ」


アルージェは少し考えて意味を理解し、キラキラの笑顔でコルクスを見つめる。

「ありがとうございます!コルクス教授さすが!愛弟子思いの最高の教授です!」


「だからお前は愛弟子じゃねぇ!お前は今のところ俺の役に立ってるからだ。さっさとそれを学園長に渡しに行け!邪魔だ!」


「はい!失礼します!」

アルージェは封筒を大事そうに持って学園長の元に向かう。


「チッ、あいつといると調子が狂う」

コルクスは帽子を取り、髪がぼさぼさになるくらい頭をめちゃくちゃに掻く。

持っていた杖の石突部でトンと地面を叩き魔法陣を展開する。

そして転移を発動させて、研究室からいなくなる。


「ねぇ、ルーネ学園長どこにいると思う?」

コルクスの研究室から出てきながら、アルージェはルーネに尋ねる。


ルーネがスンスンと匂いを嗅いで、外に出ようと脳内に伝わってくる。


「外に?」

ルーネの鼻が利かないのかと思って外に出ると、学園長がコルクスの研究室に前に立っていた。


「ふむ、転移が弾かれてしまったか。また腕を上げたかの」

学園長が顎髭を触りながら、ブツブツと呟いている。


「あっ!学園長!」

アルージェが学園長に駆け寄る。


「おぉアルージェか、どうしたんじゃこんなところで」

アルージェに気付き、髭を触るのをやめる。


「こんにちは!さっきまでコルクス教授に会ってたんです!」


「そうかそうか、コルクスとはうまくやってるようじゃな」

学園長はフォッフォッフォと嬉しそうに笑う。


「あはは、どうでしょう。今日は"ささっと出てけ、邪魔だ"と言われましたけど」

アルージェはコルクスの口調を真似する。


「まぁ、照れ隠しじゃろうな。それでコルクスは中におるか?」


「さっきまで話してたので、いると思いますよ!」


「ふむ、そうか。なら儂はコルクスに用があるから行くとするか」

学園長は研究所に少し速足で向かっていく。


「あっ、学園長!ちょっとだけ話いいですか?」

アルージェが慌てて、学園長引き留める。


「ちょっとだけじゃぞ?」

学園長は振り返りアルージェのほうを見る。


「実はちょっと必要な素材が有るんです。でも僕が外に探しに出たら危ないって教授に言われて、これを学園長に渡せと」

アルージェはコルクスから受け取った便箋を学園長に渡す。


学園長は便箋の表と裏を見る。

そしてその場で開いて書かれている内容を確認する。


「ふむ、なるほどな。アルージェはよっぽどコルクスに気に入られとるな。あい分かった。近々に鍛冶場に届くように手配しておくわい。それまでは儂がちょっと持っておるからこれを使うとよい」

魔法陣を展開し、その魔方陣の中に手を入れる。


「これでもない。これでもないの。痛っ!植物に嚙まれてしもうたわい。あったこれじゃ!」

魔法陣から手を引き抜くと学園長の手には真っ白の鉱石が複数個握られていた。


「これがお主が求めてるデゾルブ鉱石じゃ。ありとあらゆる物の魔力を吸うから扱いには気を付けるんじゃぞ。ちなみに王都ではこれを剥き出しで持っているだけで衛兵に嫌というほど追われるからの、アイテムボックスに入れて保管、もしくは魔法学校内に保管しておくことおすすめするぞ」

学園長がデゾルブ鉱石をアルージェに渡す。


「あ、ありがとうございます!」

学園長からデゾルブ鉱石を受け取ると魔力がグイグイと吸い取られていく感覚が分かる。


「なんか吸い取られてるこの感覚、気持ち悪いですね」


「フォッフォッフォ、ワシが持っていたことは秘密じゃぞ」

学園長はウィンクして、コルクスの元へ急ぐ。


「ありがとうございます!」

アルージェは学園長の姿が見えなくなるまで頭を下げる。


「ほれほれ!」

アルージェが手に持っているデゾルブ鉱石をルーネに近づけると、牙を見せて威嚇された。


「ご、ごめんよ。そこまで嫌がると思わなかったんだ・・・」

アイテムボックスにデゾルブ鉱石を片づける。


ルーネに跨り、デゾルブ鉱石のことを調べる為に図書館に向かう。


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