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第百五十六話

アルージェは村を出てからの話をかい摘んで話した。

ルーネとの出会い、フォルスタで冒険者になったこと。

ミスティとマイアとの出会い。

付与魔法が気になって、魔法学校を目指して王都に行った事。

魔法学校に入学して、エマと出会った事。


「そっかぁ、アルはいつの間にか遠いところにいっちゃったのね」

サーシャは嬉しそうに、アルージェに微笑みかける。


「ははは、すごいじゃないか!さすが俺達の息子だ!」

フリードは息子の冒険を楽しそうに聞いていた。


「ふふふ、そうね。さすが私達の息子ね!それで、アルはゆっくりしていけるの?」

サーシャは顎に指を置き小首を傾げる。


「うん!ゆっくりする予定だよ!ゴブリンも倒しに行かないといけないし」

受注書をアイテムボックスから取り出す。


「えっ!?今年はアルがその依頼受けたの?大丈夫なの?戦えるの?」


「どうだろう?まぁ、僕が無理でもアインさん達もいるからね」


「おっ?それなら、父さんと打ち合いとかどうだ?ゴブリンに勝てるか試してやるよ!」


「父さんと打ち合い!?やりたい!」


「よし、きた!木剣もあるし、久しぶりに親子水入らずの打ち合いやるか!」


「うん!」

アルージェはフリードについて、裏の畑のほうに行く。


「ねぇ、父さん。師匠は元気かな?」


「ん?あぁ、グレンデ爺さんのことか。そうだな、まだまだピンピンしてるな。最後会った時はアルには負けてられんってかなり張り切ってたな」

フリードは最後に会った時の事を思い出しながら話す。


「そっか!元気か!よかった!」


「また、明日にでも会いにいけばいいさ!それより、構えな。婚約者たちの前一瞬で倒されたら恥ずかしいぞ」

フリードはニヤニヤしながらアルージェを挑発する。


「ぐっ、確かにそうだね。息子を立てる為にワザと負けてくれてもいいんだよ?」

アルージェが木剣を構える。


「ははは、俺も母さんの前で負けるわけには行かないからな!よし!それじゃあ、はじめ!」


フリードの掛け声と同時にアルージェが身体強化魔法を全身に施す。

そして、フリードとの距離を一瞬で詰める。


「おぉ、身体強化は出来るのか!」

フリードは驚いたが、軽く受け流し同じく身体強化を付与する。


フリードはニヤリと笑い、そのまま何合も打ち合う。

「まさか、ここまで強くなったとはな!父さん嬉しいぞ!」


「まだまだこんなもんじゃないよ!」

アルージェは自分の成長をフリードに見せつけるように、何度もフリードに打ち込む。


「あらあら、二人とも張り切っちゃって。ほんと男の人っていつまで経っても子供なんだから」

サーシャはニコニコしながら二人の戦いを見ている。


「義母様から見て、どちらが勝ちそうですか?」

ミスティが椅子に座っているサーシャに紅茶を差し出す。


「あら!ミスティちゃん!ありがとうね!そうねぇ、今回は引き分けかしらね」

サーシャはミスティに差し出された紅茶を受け取る。


「ひ、引き分けですか?」

エマが聞き返したときに、二人が持っていた木剣が衝撃に耐えきれず折れる。


「ふふふ、こういうことよ」


「まさか剣が折れるとは。義母様も剣を嗜むのですか?」


「そうねぇ。もう全盛期程の速さで振ることはできないけど、まだまだあの二人には負けなそうね」


「もしかして義父様よりも義母様のほうが・・・?」


「シーッ、それ以上はいわないの」

サーシャは人差し指を立てて、ウィンクする。


「いやぁ、まさか木剣が折れるとはな!アル、ほんとに成長したな!」

フリードが折れた剣を見て、アルージェに近づき頭を撫でる。


「まだまだこんなもんじゃないよ!魔法も使えるからね!」


「おぉ、それならゴブリンくらい余裕だろうな!サーシャ!アルの成長みたかー?本当に強くなってるぞ!」

フリードは椅子に座って見ていた、サーシャに手を振る。


「はいはい、見てますよー」

サーシャも手を振って返す。


「父さんも母さんも鼻が高いぞ!木剣もなくなったし今回はこれくらいにしておこう」


「はーい」

アルージェは先に家に戻る。

フリードは折れた木剣を拾い、家に戻る。


ルーネにべたべたしていたマールがアルージェに駆け寄ってくる。


「にぃにぃ!私と遊ぼー?」

マールはアルージェに抱き着きながら、上目遣いでアルージェを見る。


「おっ!いいよ!何かしたいことある?」


「あのね、暑いから川に行こ!」


「川か、いいね!汗流したかったし!ちょっとマールと川に行ってくるよ」


「おっ、パパも行こうかなぁ」

折れた木剣をゴミ捨てに置いて戻ってきたフリードがついていこうとする。


「やっ!」

だがマールはフリードを拒否する。


「ガーン!?」

フリードはショックを受けて、膝から崩れ落ちる。


「えぇ、父さんはいやなの?」

アルージェはマールのあまりに直接的な物言いに慌てる。


「うん!にぃにぃと行きたい!」

マールは眩しいほどに満面の笑みを浮かべる。


「あはは、なら二人で行こうか・・・、ルーネは?」

アルージェはフリードを不憫に思い、乾いた笑いが出てしまう。


「ワンワンは一緒にいく!」


「ルーネ!ご指名だぞ!」

マールが離れてようやく落ち着いたルーネは寝転がって寝ようとしていた。

だが、アルージェがルーネを呼ぶと起き上がり、やれやれとアルージェ達についていく。


「二人とも気を付けてねー。ルーネちゃんも二人をお願いねー」

サーシャはついていこうとするフリードを制止しながら、二人と一匹に手を振る。


アルージェはマールを抱っこしてルーネに乗せてから、アルージェもルーネに跨る。


「ルーネ、大丈夫?」


「バウッ!」

これくらい余裕だとルーネから念が飛ばされる。


「なら、川までお願いね!」


ルーネは鼻息を荒くして、川に向けて出発する。


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