アルージェは村を出てからの話をかい摘んで話した。
ルーネとの出会い、フォルスタで冒険者になったこと。
ミスティとマイアとの出会い。
付与魔法が気になって、魔法学校を目指して王都に行った事。
魔法学校に入学して、エマと出会った事。
「そっかぁ、アルはいつの間にか遠いところにいっちゃったのね」
サーシャは嬉しそうに、アルージェに微笑みかける。
「ははは、すごいじゃないか!さすが俺達の息子だ!」
フリードは息子の冒険を楽しそうに聞いていた。
「ふふふ、そうね。さすが私達の息子ね!それで、アルはゆっくりしていけるの?」
サーシャは顎に指を置き小首を傾げる。
「うん!ゆっくりする予定だよ!ゴブリンも倒しに行かないといけないし」
受注書をアイテムボックスから取り出す。
「えっ!?今年はアルがその依頼受けたの?大丈夫なの?戦えるの?」
「どうだろう?まぁ、僕が無理でもアインさん達もいるからね」
「おっ?それなら、父さんと打ち合いとかどうだ?ゴブリンに勝てるか試してやるよ!」
「父さんと打ち合い!?やりたい!」
「よし、きた!木剣もあるし、久しぶりに親子水入らずの打ち合いやるか!」
「うん!」
アルージェはフリードについて、裏の畑のほうに行く。
「ねぇ、父さん。師匠は元気かな?」
「ん?あぁ、グレンデ爺さんのことか。そうだな、まだまだピンピンしてるな。最後会った時はアルには負けてられんってかなり張り切ってたな」
フリードは最後に会った時の事を思い出しながら話す。
「そっか!元気か!よかった!」
「また、明日にでも会いにいけばいいさ!それより、構えな。婚約者たちの前一瞬で倒されたら恥ずかしいぞ」
フリードはニヤニヤしながらアルージェを挑発する。
「ぐっ、確かにそうだね。息子を立てる為にワザと負けてくれてもいいんだよ?」
アルージェが木剣を構える。
「ははは、俺も母さんの前で負けるわけには行かないからな!よし!それじゃあ、はじめ!」
フリードの掛け声と同時にアルージェが身体強化魔法を全身に施す。
そして、フリードとの距離を一瞬で詰める。
「おぉ、身体強化は出来るのか!」
フリードは驚いたが、軽く受け流し同じく身体強化を付与する。
フリードはニヤリと笑い、そのまま何合も打ち合う。
「まさか、ここまで強くなったとはな!父さん嬉しいぞ!」
「まだまだこんなもんじゃないよ!」
アルージェは自分の成長をフリードに見せつけるように、何度もフリードに打ち込む。
「あらあら、二人とも張り切っちゃって。ほんと男の人っていつまで経っても子供なんだから」
サーシャはニコニコしながら二人の戦いを見ている。
「義母様から見て、どちらが勝ちそうですか?」
ミスティが椅子に座っているサーシャに紅茶を差し出す。
「あら!ミスティちゃん!ありがとうね!そうねぇ、今回は引き分けかしらね」
サーシャはミスティに差し出された紅茶を受け取る。
「ひ、引き分けですか?」
エマが聞き返したときに、二人が持っていた木剣が衝撃に耐えきれず折れる。
「ふふふ、こういうことよ」
「まさか剣が折れるとは。義母様も剣を嗜むのですか?」
「そうねぇ。もう全盛期程の速さで振ることはできないけど、まだまだあの二人には負けなそうね」
「もしかして義父様よりも義母様のほうが・・・?」
「シーッ、それ以上はいわないの」
サーシャは人差し指を立てて、ウィンクする。
「いやぁ、まさか木剣が折れるとはな!アル、ほんとに成長したな!」
フリードが折れた剣を見て、アルージェに近づき頭を撫でる。
「まだまだこんなもんじゃないよ!魔法も使えるからね!」
「おぉ、それならゴブリンくらい余裕だろうな!サーシャ!アルの成長みたかー?本当に強くなってるぞ!」
フリードは椅子に座って見ていた、サーシャに手を振る。
「はいはい、見てますよー」
サーシャも手を振って返す。
「父さんも母さんも鼻が高いぞ!木剣もなくなったし今回はこれくらいにしておこう」
「はーい」
アルージェは先に家に戻る。
フリードは折れた木剣を拾い、家に戻る。
ルーネにべたべたしていたマールがアルージェに駆け寄ってくる。
「にぃにぃ!私と遊ぼー?」
マールはアルージェに抱き着きながら、上目遣いでアルージェを見る。
「おっ!いいよ!何かしたいことある?」
「あのね、暑いから川に行こ!」
「川か、いいね!汗流したかったし!ちょっとマールと川に行ってくるよ」
「おっ、パパも行こうかなぁ」
折れた木剣をゴミ捨てに置いて戻ってきたフリードがついていこうとする。
「やっ!」
だがマールはフリードを拒否する。
「ガーン!?」
フリードはショックを受けて、膝から崩れ落ちる。
「えぇ、父さんはいやなの?」
アルージェはマールのあまりに直接的な物言いに慌てる。
「うん!にぃにぃと行きたい!」
マールは眩しいほどに満面の笑みを浮かべる。
「あはは、なら二人で行こうか・・・、ルーネは?」
アルージェはフリードを不憫に思い、乾いた笑いが出てしまう。
「ワンワンは一緒にいく!」
「ルーネ!ご指名だぞ!」
マールが離れてようやく落ち着いたルーネは寝転がって寝ようとしていた。
だが、アルージェがルーネを呼ぶと起き上がり、やれやれとアルージェ達についていく。
「二人とも気を付けてねー。ルーネちゃんも二人をお願いねー」
サーシャはついていこうとするフリードを制止しながら、二人と一匹に手を振る。
アルージェはマールを抱っこしてルーネに乗せてから、アルージェもルーネに跨る。
「ルーネ、大丈夫?」
「バウッ!」
これくらい余裕だとルーネから念が飛ばされる。
「なら、川までお願いね!」
ルーネは鼻息を荒くして、川に向けて出発する。