目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第百六十八話

「カカカカカ、程々にな!」

グレンデは今日の仕事に方がついたようで、アルージェの作業の様子を眺める。


アルージェはゴブリン達が使っていた、鉄製の武器を解体する。


そして鉄部分を炉に投げ入れ、打ち直す。

ある程度形になってきたタイミングでグレンデが声を掛ける。


「んあ?作っているのは、武器では無いな?」


「ん?そうだよ。ハンティングナイフって言うのかな?狩った獲物の皮を剥ぎ取る時とかに使うやつだね」


「アルは自分の物持ってなかったか?壊れたんか?」


「まさか、プレゼント用だよ」

口を動かしながら手も動かして、ハンティングナイフを完成させる。


「よし、ここから刻印刻むぞ!」

アルージェは完成したハンティングナイフを台に置いて、ニヤニヤとしながら刻印用の道具を取り出す


「アル、家には戻らんでいいんか?だいぶ日が沈んできておるが」

グレンデは外の様子を見ながらアルージェに話しかける。


「これだけ!これだけやったら戻るよ!」

アルージェはグレンデの質問に答えることなく、ハンティングナイフに刻印を始める。


「ふむ、そうか。まぁアルが良いなら儂は構わんが。儂は酒でも飲むかの」

グレンデは一旦鍛冶場から離れて酒を取りに行き、戻ってきてからもアルージェの作業を眺めている。


「よっしゃあ!出来た!ちゃんと機能するかやってみよ!」


「はぁ、アルよそろそろ戻らんと皆心配するぞ?大丈夫か?」


アルージェは窓から外をみて、だいぶ暗くなっていることに気付く。

「えっ、もうこんなに暗くなったの!?みんなに何も言ってないから怒られるかも・・・」


「カカカカカ!戻って怒られると良いわ!ほれ、迎えがきたみたいじゃぞ?」

グレンデの家の玄関の扉からカリカリとしていた。


扉を開けるとルーネが前足で扉をカリカリと引っ掻いていた。


「あっ、ルーネ!来てくれたんだね!」

アルージェは嬉しそうにルーネに駆け寄る。


「あぁ、迎えに来たぞ。アルージェ、えらく遅いお帰りだな」

ミスティがルーネの背中からアルージェに声を掛ける。


「あっ・・・、ミスティさん・・・。えと・・・、ごきげんよう」


「あぁ、ごきげんよう。以前遅くなるならちゃんと知らせるようにと伝えたはずだが、まだ理解出来ていないようだな」


「あはは・・・、久しぶりの村で気分が上がっちゃったかなぁ・・・。なんて」

アルージェは横目でミスティを見ると全く笑っていない。


「すいませんでした!」

アルージェは素直に頭を下げる。


「はぁ・・・、お義母様とお義父様も心配している。戻ろうか。」

謝られたらこれ以上何も言えないので、ミスティはルーネの背中に乗るように促す。


「はい!戻ります!」

ミスティが許してくれたので、すぐにルーネに跨りミスティの背中に抱きつく。


「むっ、普通逆では無いか?まぁいいが」


「カカカカカ、アル。早速尻に敷かれているようじゃな。アルを制御するにはそれくらいの気概が有る女性じゃないと無理か」

グレンデは二人のやりとりを見て笑っている。


「アルージェから何度か話は伺っております。頭上からの挨拶となってしまいご無礼をお許しください。アルージェの鍛冶のお師匠様ですよね?私はアルージェの婚約者のミスティです」


「カカカカカ。儂はグレンデじゃ。畏まる必要は無いぞ。それにもう師匠では無くライバルじゃがな。アルの扱いは難しいじゃろうが、悪い子じゃないんじゃ。よろしく頼むな」


「えぇ、心労が絶えないですが、素直なので怒るに怒れないので困っています。お師匠様からも言ってやってください」


「アルよ、言われとるぞ」


「いやー、あはは・・・。面目ない・・・」

後頭部を手で摩りながら、謝る。


「もう少しお話をしていたいのですが、他にもアルージェを心配している者がいますので、私達はこれで失礼致します」


「あぁ、そうじゃな。アルージェ、明日もくるんか?」


「来ます!」


「分かった。ではまた明日の」


ミスティとルーネはグレンデに頭を下げて家に戻る。


家に戻るとまず、サーシャに怒られた。


「もぉ!アルちゃんと暗くなったら帰ってきなさい!私そんな悪い子に育てた覚えありませんよ!」


「気付いたら、暗くなってて・・・」


「グレンデさんだってきっと何度も帰らなくていいのかって、言ってくれてたはずでしょ!」


アルージェは作業中にグレンデに掛けられた言葉を思い出す。


「あ、言われてる」


「ほら!やっぱり!師匠って言ってるんだから、ちゃんと言うこと聞かないとダメでしょ!」


「はい、すいません・・・。はい・・・」


サーシャに何度も謝り、なんとか夜ご飯の席に着く。


「おい、アル!お前早速怒られてるじゃない、ハハハ」


「ちょっと父さんこんなの怒られたに入らないから!辞めてよ!」

フリードに笑われながら、夜ご飯を食べる。


食後、仮設の家に戻ると、ミスティとエマが仁王立ちで待っていた。


「げっ・・・」


「げっ、とは何だ!聖国のことも有るから本当に心配してたんだぞ」


「そ、そうですよ!村の中一周したんですからね!」


「すいません・・・」


「そうやって、謝っておけばいつか終わると思っているんだろ?」


「い、いえ、滅相もございません」

その後もこっぴどくミスティとエマに注意されて、秘密結社らびっといあー達にもなぜかもみくちゃにされた。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?