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第百八十一話

辺境伯はアルージェの元まで行き、地面に倒れていたアルージェに手を差し出す。

「アルージェ君、よく止まってくれた。屋敷の方まで君の魔力で震えていたよ。魔法学校に行って、また腕をあげたんじゃないか?」


「い、いえ、そんなまだまだです」

辺境伯の腕を取って、アルージェは立ち上がる。


「ははは、謙遜しなくてもいいぞ。流石、私が見込んだだけのことがある」

辺境伯はアルージェに笑顔を見せる。


「今回の件だがアルージェ君の事はまだ少ししか知らないが、ジェスのことはよく知っている。余計なことを言ってしまったんだろ?彼は気になった相手を見ると、つい余計なことを口走ってしまうんだ。そのせいで誤解を招くことが多くてね。私達も苦労させられているよ。けど彼も歴とした私兵団の一員なんだ。私が代わりに謝らせてもらうよ。この通り、すまない」

辺境伯はアルージェに頭を下げる。


「や、辞めてくださいよ」

アルージェは慌てて、辺境伯の体を起こす。


「そうです。俺が彼を当てたんです。可能性を考慮出来てなかった俺のせいです。俺が謝りますよ」

いつの間にか近くに来ていたスベンも慌て、て辺境伯の体を起こす。


辺境伯は慌てるスベンとアルージェを見て笑う。

「ははは、私が頭を下げるだけで許されるのであれば軽いものさ。それでスベン、アルージェ君はどうだ?強いだろ?」


「えぇ、正直子供だと思って侮ってました。俺でも勝てるかどうか・・・」


「おいおい、うちの団長がそれだと困るな。まぁアルージェ君は私にも決闘で勝っているからね。ジェスには荷が重かったかもしれないな」


「どうだ、スベン。私の婚約者は強かっただろう?」

ミスティは上機嫌でアルージェを自慢している。


「そうだな。まさかお嬢の婚約者がこんなに強いなんて思ってなかった。これは辺境伯家も安泰だな、ガハハ」

初め会った時は無愛想だったが、アルージェが強いことを知ってスベンは嬉しそうに笑っている。


「さて、ジェスの奴を治療室に連れ行くか。これに懲りたら余計なことを言わないようになってくれたらいいんが」


「そいつは無理な話ですね。こいつから無駄口を取ったら何も残りませんよ」

スベンは地面に伏せているジェスも元に行き、持ち上げて肩に担ぐ。


「ははは、その通りだな。今日の訓練はここまでにするとしよう。今日はミスティの帰宅とアルージェ君とエマちゃん、後はアイン達も来ているから、盛大な食事にするとしよう!」


「やったぜ!流石、辺境伯様だ!お前らぁ!今日は豪華な食事だとよ!!」

スベンが叫ぶと、兵達が嬉しそうに雄叫びを上げる。


「アルージェ君、この後少し時間いいかな?アイン達と一緒に話を聞いて欲しいんだ」


「いけますよ。汗を流してすぐに行きますね」


「あぁ、わかった。ミスティとエマちゃんも連れてきてくれ」


「わかりました」

アルージェは辺境伯にお辞儀をして、医務室に向かう辺境伯とスベンを見送る。


「流石私の婚約者だ!アルージェは本当に強いな!」

上機嫌でミスティが話しかけてくる。


「いやー、でもジェスさんも凄い強かったですよ。結局、過負荷状態の身体強化でゴリ押ししただけですし」

アルージェは投擲した武器を可能な限り拾う。


「それでも、本職の兵隊さんに勝つなんて、凄いですよ!」

エマも先程の戦いを見て興奮しているようだ。


「あはは、でもそのせいで明日体バキバキになるだろうけどね。そういえば、辺境伯様に呼び出されたんだけど、この後二人とも時間あります?」


「私は特に予定は無いな」


「私も何もすること無いので大丈夫です」


二人ともまだ何も予定は決まってないようだ。


「おっ、良かった。僕は汗かいたので水浴びしたいんですけど、屋敷の中にお風呂とかありますか?」


「もちろん有るぞ。案内しよう」


ミスティに浴室まで案内してもらう。


「ここだ。広いからって長いこと遊ばずに、早く出てくるんだぞ」


「子供じゃないし、そんなことしませんよ!」

すでに何度か前例があるので、ミスティはジト目でアルージェを見る。


「あっ、はい・・・。汗流したらすぐ出ます・・・」


ミスティに怒られないようにパパッと汗を流して、サッと湯船に浸かる。


「それにしても広いなぁ。何人で入るつもりでこんな広くしたんだろう」

顔をお湯で流したり、ボーッと天井を眺めていると扉が開く。


「アルージェ!いつまで入ってるんだ!」

どうやらミスティが遊んで無いか様子を見に来たらしい。


「えっ、そんなに入ってました?」


「うむ、余りに長いからまた遊んでいるのかと思ったぞ」


「えー、そんなに入ってたかな・・・?」

ミスティはそういうが体感で言うなら15分程だ。

髪を洗ったり、体を洗ったりして、湯船に浸かればそれくらい経つだろう。

あくまで日本人的な感性だが。

もしかしたらこの世界の人たちはあんまり長風呂をする習慣がないのかもしれない。



「なら、もう出ます」

アルージェは立ち上がり湯船から体を出す。


「ば、馬鹿者!まだ私が居るのに、湯船から出るやつがいるか!」

ミスティは顔を赤らめて慌てて、扉を閉める。


「えぇ、なんか理不尽に怒られたんですけど・・・。」



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