あーしの名前は、リーリエ。クーラの森に住んでいたフェアリー。
森での生活に飽き飽きしていたあーしは、スリルを求めて、森を出た。……つーか、好奇心? うんまあ、そんな感じ。
外には危険がいっぱい……と物知り顔で言っていた同族はいたけど、その大半が実は森から出たことがないことを、あーしは知ってる。
エルフたちが森を守っていても、時々、人間たちにさらわれる子がいた。特にこの人間たちってのが、妖精をさらって売り飛ばす悪党だって言われる。全部が全部そうじゃないんだけどさ、まああーしらも、魔法で騙くらかしたり、攻撃したりするけど……。
でも問答無用で言うなら、肉食の獣や虫たちのほうが性質が悪いと思うんだ。つまり森の中だろうが危ないところは危ないわけ。
縁があって、あーしは、ヴィゴたち人間の冒険者と出会った。妖精狩りからあーしらを助けてくれたし、エルフたちから神聖剣の守護者なんて言われて、まあ悪いヤツじゃないのはすぐにわかった。
そうくれば、かねてより考えていた森の外に出る機会ってのを実行に移すことにした。ヴィゴたちも、妖精の籠っていう魔道具の件で、あーしらの助けが必要だったし、困った時はお互い様ってね、ばーさまも言っていたわけだ。
あー、あーしは別に困っていたわけじゃないけど。あ、いや、一応、恩人でもあるわけか? しかし、あーしも勘違いエルフたちを説得して助けたよな? ……まー、いいか。
そんなこんなで、あーしはクーラの森を出て、ヴィゴたちのパーティー『リベルタ』についていった。
外の世界は森と違って色々あってとても刺激的だったんだ。クランってのに昇格した『リベルタ』は大活躍! みんな強いけど、やっぱ魔剣と神聖剣を使うヴィゴが一番強かったな。
仲間たちも増えて、色々あってラーメ領ってとこに行くことになり、そこで黒きモノとかいう気味の悪いヤツがいて、瘴気とか黄金領域つー、おっかない場所だったんだけど、何だかんだ上手くやってると思う。
あーしも皆の伝令役やったり、ゴムちの分裂体と一緒に邪甲獣とも戦ったんだぜー! へへーん!
……っと、あーしのことはいいんだ。
あーしはフェアリーだ。妖精ってのは、元来のイタズラ好きなんだ。一日に1回何かイタズラをしないと落ち着かない性分でもある。
ま、ヴィゴやアウラには、あんまイタズラするなよって言われてるけどさー、それ無理! だって妖精だもの。
ネムっていうゴブリン女……ゴブリンに女がいるってのもメッチャ驚きだけど、オスしかいない生き物なんているのかって言われると変な話だし、そう考えるといたほうが自然なんだろう。と、それは置いておいて、ネムとは友達だ。
こいつもイラズラ好きで、よくあーしと連んで、本気で怒られない程度のイラズラをやらかして楽しんでいる。
さて、ここからが本番だ。……うん、よく前置きが長いって言われる。まあまあ聞いておくれよ。
リベルタクランのリーダーは、ヴィゴ・コンタ・ディーノ。魔剣と神聖剣を使いこなす魔剣士にして神聖騎士様だ。まあ、この人のことは誰もが知っているから、あーしから別に語ることはない。
何か本人は異性にモテないのを気にしているみたいだけど……。強い、冴えない顔だけど格好いい、優しい。それでいいだろ?
実際、クラン内ではヴィゴはリーダーにして中心。そしてモテモテだ。
本人も無自覚じゃないけど、オクテって言うの? 色恋ってもんに自信がないみたい。魔剣のダイ様や神聖剣のオラクルに、よくからかわれている。剣にからかわれるんだから、相当なもんだぜ?
で、ヴィゴ本人はともかく、好意を寄せている女ってのもいるわけだ。
その一が、ルカ。ドゥエーリ族っていう戦闘民族ってとこの出の巨人。……っと、本人にそんなことを言ったら、泣いちゃうから言わないけど。高身長コンプレックスってやつだ。あーしからしたら、ルカは特にでかい部類に入るんだけど……。
まあ、うちのクランはベスティアやカイジン師匠っていう動く鎧とか、アラクネのセラータがいるから、身長だけならそこまで目立つわけじゃないけど、純粋な人間としては、クラン一の高身長なんだよな……。
背も胸も大きいルカは、普段は優しい。普段は、というか周りは皆あの人のことを優しいと思っている。あーしに言わせると、ちょっと細かいことを気にし過ぎなところがあるんだよな。
……ちょっとくらい悪さしたっていいじゃんかよー。小うるさいぞ、あんたはあーしのお袋かっての!
まあ、あーしとネムの些細なイタズラに目くじらを立てることもないと思うんだ。たぶん、綺麗好きなんだろうな、うん。よく風呂に入ってるし。
話逸れるけど、料理は上手。
ヴィゴのことが好きなんだけど、自分から口に出すことはあまりない。そういうとこもお母さん、なんだよなー。見守ってるっていうの? まあ、夜不安になると、ヴィゴんところのベッドに潜り込むのは、どうかと思うけど。
……あれなに? イタズラか何か? あーしがやったら、潰されちゃうから絶対に真似しねーけど。
そしてヴィゴ好きその二、シィラ。高身長以外似ていないルカの妹。何でもお母さんが違うんだって。肌色違うし、姉妹って言われても「ん?」ってなるけど。
シィラも、ルカに負けずに高身長でほとんど変わんないだけど、本人は僅かに負けているらしくて、悔しがってるらしい。ルカの方はむしろ背の高さでは負けたいらしいけど。
ルカよりもよっぽど戦闘民族の出ってのが納得できるほど、好戦的かつ男勝り。とにかく負けず嫌いで、自分にも厳しいから鍛錬も欠かさない。初見のイメージだと、ちょっと目つきが怖いんだけど、あれでかなり優しい。
怒ることもあるけど、基本大らかで、面倒見がいい。ネムなんて、かなり懐いちゃってるんだよねー。お姉ちゃんみたいってさ。
姉のルカと違って、かなり積極的。ヴィゴはあたしの婿を豪語しちゃうくらい。彼女がいるから、ルカも何かと張り合ってヴィゴに接しているみたいだけど。……もしシィラがいなかったら、ルカってヴィゴに対して態度に出せたんだろうか、ちょっと気になるねぇ。
でもシィラは、ああ見えて、案外不器用っていうか、積極的なんだけど、肝心なところで尻込みしちゃうんだよね。豪胆にみえて、実はナイーブってやつぅ? 初々しいね。
ヴィゴ好きその三。ヴィオ・マルテディ。聖剣使い。メンバーとしては新参。つーか、名前が似ているせいで、あーしも時々言い間違えそうになる。
外見はボーイッシュ。一人称も、僕なんだよな。でもここのところ、ちょっと髪が伸びた、というかメスの匂いを漂わせている。恋のせいだろうね。
他の二人が大きすぎるってこともあるけど、体格的にはヴィオは普通。お胸のサイズも、たぶん普通。あるにはあるんだろうけど、ルカやシィラと比べちゃうとね。あの二人は山だから……。
ヴィオは、ヴィゴには素直。基本、彼の言う事は何でも肯定的かつ好意的に受け取る。不満があれば顔に出すけど、可愛いの範疇に収まっているのがポイントだ。
あーしら妖精とは違うんだけど、やっていいことと駄目なことのラインの見極めが上手いんだろうね。偉い人の家に生まれて、その辺りの測り方が身についているんだと思う。
好意的ではあるし、ヴィゴに対してはシィラほど直接的な表現はしないけど、ルカよりは積極的だし、明るく振る舞われると悪い気はしないんだよね。
ただ……何かヴィオの好きっていう態度の出し方が、ご主人様大好きな犬が尻尾を振ってるみたいに見えるのは気のせい、かな……?
で、次は――