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第65話 立ちはだかる謎の黒い女

〇笹本ホテルリゾート 1F フロアー コンビニ前



「ところで・・・いまさっき女狐の内の一匹が見知らぬ男と一緒に車で出てったけど・・もしかしてあれって・・」


五月はホテルに入って来た時にタイミングで由利さんが時夜さんに連れて行かれた現場を目撃したようだ


俺は五月の質問に頷いて答える


「それで・・・すすむんは、どうするつもりなの?」


雫が腕を組んで俺の答えを黙って待っている


「俺は・・・由利さんを助けたい・・俺のやろうとしてる事はきっと世間から見たらきっと許されない御節介なんだと思う・・でも」


「いいんじゃない?」


「え?」


「そうね・・・御節介じゃないすすむんは、すすむんじゃないわよ」


「雫・・・」


「でも私らも一緒に行くからね」


何故か自信満々な様子の五月と雫に疑問を感じながらも、なぜか心強く感じる・・・以前よりも・・


「有難う・・二人とも・・・俺に協力してくれ」


「「当然!」」


取り合えず、2人はホテルにチェックインして荷物を置いてくると言い、俺も自室に戻り身支度を整える


それから三人でロビーで待ち合わせしてから、由利が連れて行かれたであろう黒原の屋敷に向かう、今回は場所が解ってるからタクシーで近くまで行き少し離れた場所から黒原の屋敷の様子を伺う


「あれ?・・・屋敷の前に誰か居るわね・・・」


「あれ・・は・・星奈さんだ!?」


勝手口のドアを叩きながら大声で由利さんに呼びかけている、俺たちは星奈さんの元に急いで駆け寄る


「星奈さん!?」


星奈さんは勝手口を叩いていた手を止め振り返る


「進?・・・由利が・・・由利が・・」


星奈さんは糸が切れた人形の様にその場にへたり込み両手で目元を押さえ泣き出した


「ちょっと、女狐こんな所で泣いていても解決しないわ」


「うぅぅぅうう・・雫・・・?・・それに・・五月も・・どうして此処に?」


「今はその事を説明してる場合じゃないわ、雫ドアの向うに人が居る・・・・行けるわね」


「ええ・・・【チャーム(魅了)】」


雫は勝手口の方に手をかざすとスキルを使用した


「え?え?どういう事?雫・・・てっ!その目!なんか虹色に!?モゴモゴ」


「進!説明は後でするから静かに!」


五月に口元を手で押さえられる、「ガチャ」勝手口が開くと目がトロンとしてうっとりしてる女性が頬を赤く染め呼吸を荒くしながら雫を眺めている


「はぁ・・貴方もう良いわ【スリープ(睡眠)】」


やはり雫の使ってるのは魔法では無さそうだ・・そもそも睡眠の魔法は魔術師系しか使えないはず・・ヒーラー系の雫には使えない・・


さっきの虹色の瞳と言い・・・二人に何が起こったんだ?


「ほら!進ボケっとしてないで!星奈さんが先に入って行ってしまったわ!」


五月に言われ周囲を見渡すとさっきまで蹲っていた星奈さんの姿が見えない・・


「い、いこう!」


俺たちも星奈さんの後を追う様に屋敷の中に侵入する・・・しかし星奈さんはこの屋敷に来た事が有るらしく右往左往する俺たちが外から侵入出来そうな場所を探してるのに屋敷の中を探して歩いているのを見かける


「あ、居た!もう中に入ってる・・・何処から入れば・・・」


????「アラアラ、可愛い泥棒さんねぇぇフフフフ」


その声に振り返ると、マミさんが此方をニヤニヤしながら見ていた


「マミさん!?・・いや・・勝手に入って来てしまったことは謝ります、それより由利さん・・笹本さんと話させてください!!」


「ウフフ、私前に貴方に言いましたよね・・私に任せて・・と・・それなのに勝手に不法侵入して来て厚かましく要望ですか?」


「ですから、その事は謝ります!!今は一刻も早く・・・」


「進!コイツ・・・ヤバいわ!」


「ええ、コイツは普通じゃない・・・・何者!?」


俺の前に立ちマミさんを睨み付ける五月と雫を見てマミさんは少し考える様なそぶりをして何か思い出したようにケラケラと笑いだす


「アハハハハ、何処かで見た子猫ちゃんだと思ったら私のワンコちゃんと遊んでくれた子猫ちゃん達じゃない~」


「「!?」」


「ま、まさか・・・アンタは・・・」


「あの時の・・・魔族・・・・」


五月と雫がそう言うのと同時にマミさんが両手を広げる、すると俺の足元に魔法陣が現れ一瞬で目の前の景色が変わる


「!?」


「ここは空中うぅぅぅ!!!」


魔法陣で飛ばされた先は空中だった、俺は地面に向って速度を上げて落下する


「うわぁぁぁぁぁぁぁ」


どんどん地面が目の前に迫る、俺は空中で手をバタつかせ悪あがきするが勢いは止まらない


ガサガサ・・・・バキバキ・・・ドサッ


運が良いのか悪いのか大きな杉の木の上に落下し枝をへし折りながら俺は地面に背中から落下した


「ガハッ!!!」


背中への衝撃で息が出来ない・・・全身が痛みで動けない・・・・不味い・・・全身の骨が・・・


「おい!・・・・ぶ・・・か・・・お・・・じょ・・しっか・・・・ろ」


誰かの影が朦朧とする意識のかなで見えたが俺の視界が暗転する・・・・




《ドラゴンロードが瀕死の重傷から復帰します・・・・所持金の半分が消失しました》



「はっ!!」


「うわぁぁぁぁ」


起き上がると布団の上だった・・・周囲を見渡すと髪を短く刈り込んでいて、鋭い目つきだが痩せて頬のこけた男性がこっちを驚いた表情で見ていた


「あ・・あの・・ここは・・」


「・・・・お前・・無事・・・なのか?・・・瀕死の重傷だったはず・・・」


男は俺の質問に答える事無く俺をお化けでも見るように指さしながら少し震えている、俺は自分の身体を触って確認したが異常は無さそうだ


「・・・大丈夫そうです・・見たところ僕を助けて頂いた様で・・・有難う御座います」


そう頭を下げると・・・少し安心したのか腰を落とし気が抜けた様な返事をする


「ああ、そうだな・・・俺は立花(たちばな) 慎吾(しんご)・・ここは俺の部屋だ・・」


部屋を見渡すとハンガーにコック服が掛かっていた・・・この服・・何処かで・・・俺の視線に気づいたのか慎吾さんは説明してくれた


「ああ俺、コックの見習いなんだ・・・この辺で一番大きな笹本リゾートホテルのレストランで働いてるんだ」


しかし働いてる割にはあまりに質素で慎吾さんの部屋にはテレビもエアコンもラジオすら無い・・


「ははっは・・・何も無くてビックリだろ・・・見ての通り貧乏でな・・色々あって・・」


・・・・・・・!?


「あれから!!あれから何時間くらい経ちましたか!?」


俺は慎吾さんの両肩を掴んで尋ねる


「へ?・・あ、ああぁ・・3、4時間位寝てたかな・・多分・・」


「!?不味い・・・不味い不味い不味い不味い・・・寝てる場合じゃない!行かなきゃ」


俺は飛び起きると玄関に向かい靴を履く


「お、おい待てって・・そんな慌てて何処いくんだ?」


「由利さんが・・・お世話になった人がピンチなんです!それに俺の大事な人達も、だから行かなきゃ!!」


「由利?・・笹本 由利か!?」


「え?立花さん由利さんの事知ってるですか?」


そう尋ねると立花さんは俯き苦しそうに口を開く


「笹本 由利は俺が高校の時に付き合った元、彼女だ・・・・」






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