〇黒原邸 地下室
慎吾さんへ雫の上級治癒魔法 エクスヒールと俺の回復スキル竜の息吹を使ったが・・・
「・・・・・・ここは・・・」
皮肉にも目を覚ましたのは・・・黒原 時夜だった
「なっ!?」
時夜さんは上半身だけ起き上がると自分の手握られた血まみれのナイフを見つめる
「・・・・え?・・・・何これ・・・・・何これぇぇぇぇ!!」
持っていたナイフを放り投げコンクリートに落下した際の音と、時夜の叫び声に気を失っていた麻美さんが目を覚ます・・・
「・うっ・・うう・・・時夜さん?・・!?・お、お兄ちゃん!!!」
慌てて慎吾さんの元に駆けより慎吾さんの頭を持ち上げ自分の膝の上にのせると頬を軽く叩き涙を慎吾さんの顔に零しながら声にならない嗚咽を漏らし肩を震わす
「時夜さん・・」
俺たちは時夜の元に駆けよると
「ひぃぃぃ誰だお前ら!?俺に何をするつもりだ!?助けてくれぇぇマミ!!!マミィィ!!」
【パァッン!!】
地下室に大きな音が響き時夜さんが頬を押さえ床に倒れ込む
「時夜ぁぁ!!アンタいい加減にしなさいよ!!自分の仕出かした事くらい自分でちゃんと向き合いなさい!!」
「せ、星奈・・・なんで此処に・・・」
俺たちは時夜さんを複雑な気持ちで見つめる
「な、なんだよ・・・皆よってたかって・・・俺が何を?!・・・・うっ・・・」
時夜が急に頭を抱え苦しむ・・・・
「俺は・・・いや・・俺はこんな事してない・・・俺じゃない・・・俺は悪くない・・・俺が・・・俺が?」
慎吾さんを膝枕して泣きながら震えていた麻美さんから【ギリッ!!】と音が聞こえる程の歯ぎしりが聞こえたと思った瞬間
「死ねェェェェ」
さっき時夜の放り投げたナイフを手にして時夜に向って突進してくる
「!?ヒィィィィ!!!」
あまりの麻美さんの迫力に時夜は腰を抜かしその場を動けない
「ぐぅぅ離せぇぇぇぇぇぇ!!!離せェェお兄ちゃんの敵だぁぁぁぁ!!殺してやるぅぅぅ!!」
麻美さんの目からは血の涙が零れてる・・・そんな彼女を後ろから羽交い絞めにして引き留める俺の頭付近でナイフを振り回してるので俺の頬や腕がナイフで切れる
「!?進ぅぅ!!!」
俺の事を心配する五月と俺に治癒魔法を使おうとしてる雫に首を振って止めさせる、時夜は麻美さんの鬼気迫る姿に恐怖し地下室の入り口に向って逃げようとしていた
「フザケンナァァ!!」
星奈さんに顔を掴まれ、地下室の床に投げ飛ばされる
「ピギャァァア」
床に叩きつけられ情けない声を上げる
「いでぇぇいでぇぇ星奈が虐めるよぉぉママぁぁパパぁぁマミぃぃ!!」
時夜のあまりの醜態に平手打ちでは無く拳骨で殴りだす星奈さん・・・その目には薄っすらと涙が滲む
どのくらい殴られていたのか・・・俺たちはただ茫然とその姿を見ているしか無かった・・・そうしてると少し冷静になったのか俺に羽交い絞めにされてる麻美さんから力が抜けナイフから手を放し再び嗚咽交じりの涙を流す
「雫と五月は由利さんを診てくれ・・・麻美さん・・・時夜さんを殺めても何も解決しません・・それより慎吾さんの元に居てあげてくれませんか?」
俺がそう話すと3人とも黙って頷き五月と雫は由利さんの元に行き治療を始める、麻美さんは力ない足取りで慎吾さんの元に行き抱き上げ何か語り掛けてる
星奈さんが肩で息をしながらその場にへたり込むと、足元の時夜さんが目元を腕で隠し泣き出していた
その後目を覚ました由利さんは星奈さんに謝り、慎吾さんにも一言か二言語り掛け静かに目を瞑ると麻美さんにも頭を下げる
「進君にも五月ちゃんと雫ちゃんにも・・・いっぱい迷惑かけちゃったわね・・・ゴメンなさい・・・」
由利さんは俺達に向って頭を下げ、再び俯き沈黙する
「時夜・・・ここに居る皆には全部話してくれるわよね・・・皆話を聞く権利があるから」
冷たく言い放つ星奈さんの言葉に殴られボコボコになった顔で黙って頷く・・・そして慎吾さんの元に行き麻美さんと慎吾さんに向って土下座する
「すべて・・・すべて話します・・・・」
「あれは今から5年前星奈と由利がこの町を出て東京に行って少し経った頃・・・俺は偶然町で慎吾君と名前は知らないが高校時代の星奈の彼氏とバッタリ出会った」
観念したのかボロボロの時夜は俯きながら紡ぐように話を始めた
「俺は二人に向って言った・・・お前らが俺から由利と星奈という幼馴染を奪ったんだって・・・家の力でお前らに復讐してやると」
そんな時夜を腕を組み憐れむような冷たい目で見下ろす星奈さん、由利さんは床にへたり込んで俯き落ち込んでる・・・由利さんは元カレである慎吾さんの事がよほどショックだったのか星奈さんを殺めようとしていた事を悔いてるのか・・・俺には分からない
「すると二人は俺の胸倉を掴んで、お前がストーカーなんかしなきゃ俺たちは今でも上手くいっていたかも知れないんだ・・・と、逆に怒鳴られた・・・おれは怖くなり胸倉を掴む手を振り払い二人を振り切ってその場を逃げ出した」
「家に戻りその事を親父に話すと、溜息交じりに由利と星奈は東京で同じパーティーリーダーのAランクファイターの男と結婚した事を教えてくれた・・・俺はショックで家を飛び出しあても無く夜の街を彷徨っていると、見たことも無い美女に声を掛けられる・・・」
「その美女はマミと名乗った」