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第82話 もう一人の同行者

〇笹本リゾートホテル フロントロビー



AM6:30  早朝


朝起きて五月と雫は自分達の部屋に荷物を取りに行くと言って朝食も取らず俺の部屋から出てった


二人を玄関先で見送り俺も自分の支度を整える


朝食用に昨日コンビニで購入したサンドイッチとペットボトルの水を数本リュックに入れる


あとは・・・掃除用の箒を手に取り軽く振り回してみる


「うん・・・やっぱり金属の付いてない物なら扱える・・・こんな物でもないよりましか・・」


俺は箒の先を取り外し木の棒として持って行くことにした


それと・・・俺は自分の首にかけられた心音ちゃんから貰ったネックレスを指で触る・・・


「羽生さん達・・・元気にしてるかな?・・・また会えた時このネックレスのお礼をしないとな」


部屋を見渡し忘れ物が無いか確認する・・・


「この部屋にまた帰って来れるように気合を入れて行かないとな」


部屋を後にしてフロントでコンシェルジュの女性に自分の部屋の鍵を預ける


「え?進君どうしちゃったの?これって社員寮の鍵だよね?」


「ははは、念のために一旦お返ししときます、また受け取りに来ますのでそれまで預かっておいて下さい」


「・・・・・そう・・・何をするのか聞かないけど気を付けてね、ちゃんと預かっておくね」


俺は受付の前で彼女に頭を下げロビーへと向かう


・・・・・・・・・・


「星奈さん!」


ロビーには魔法使い用の黒を基調としたローブを身に着け、少し短いスタッフを腰に差して待っていた星奈さんに手を振り駆け寄る


「進だけ?二人は?」


俺に気付き此方に歩み寄ってきた星奈さんは俺の背後を覗き込むと五月と雫の姿がないので俺に尋ねる


「準備があると言う事で自分達の部屋に戻りました」


すると星奈さんは意地悪な表情を浮かべ俺の横腹を肘でつっついて来た


「ふふふ、てこ事は無事、3人共卒業って事かなぁ~初めてで上手く出来たかなぁ~ふふふ」


「えええ、いやいや何も無いですよ!!卒業だなんて!!」


「え?何あんな可愛い子と同じベッドで寝て何もしてないの!?進・・・あんたって・・・本当に・・」


「そ、そんなまだ交際してる訳でもない女性にそんな不誠実な・・・って!?なんで同じベッドで寝てたって知ってるんですか!?」


「え?あぁぁぁそれねぇ~まぁ?女の勘?ってやつかな?」


星奈さんは目を泳がせながら話をはぐらかしている・・・俺の疑いの目を見ようとしない・・・・


「はぁ・・・朝からこんな所で騒がないでよ・・・」


「ふふふ、すすむんとは此れから幾らでも機会はあるわよぉ~ねぇ~すすむん♡」


そう言うと雫は俺の腕に抱き付く、雫の大きな胸の感触が・・・ん?


「雫・・それって・・・」


雫の首には昨日犬飼会長から託された晴明の宝珠の入った巾着がかかっていた、雫は微笑み頷く


「ちょっと!!進も雫ももっと緊張感をもって!!」


腕を組んで怒ってる五月の背中には布津御霊が背負われてる


「二人の戦闘用の服初めてみたかも・・・・」


五月は赤を基調としたフード付きの革製の上着に白いインナー下は同じく赤いパンツ、オープンフィンガーの手袋の甲の部分には何やら模様が刺繍されてる、手には赤い宝珠が埋め込まれたスタッフが握られてる


雫は黒い片襟の上着を身に着け胸の谷間が強調されてる、下は膝丈の黒いスカートを履いており、黒いナース服の様だった、その手には天然樹から作り出したスタッフが握られている


「へぇ五月ってば、そのルビースタッフ持って来たんだ、両親からの許可も取れたって事ね」


「雫こそ、その新樹の杖って嫁入りの時の為に小五郎小父さんが用意してくれてたやつでしょ?」


どうやら二人とも気合は十分な様だ


「星奈さんそろそろ時間ですし出発・・・・


「まって・・・私も一緒に連れてって・・・・」


その声がする方を向くと・・・・・・


「由利さん・・・」「由利・・・・」


由利さんも白いローブに身を包み肩からバッグを下げ腰には小ぶりの杖を刺して立っていた


「由利・・・これから私達が向かうのは・・・」


「知ってる・・・富士山の火口に向かうんでしょ?あのザビーネとかいう魔族が言っていた・・・私も当事者なのよ?この戦いを最後まで見届ける権利があると思う」


由利さんの表情は冷静だ・・・落ち着き過ぎてるぐらいだ


「しかし・・由利さんこの作戦は大変危険で・・・・」


「進!!」


星奈さんが俺の腕を掴み俯いている


「私からもお願い・・・由利を連れて行くことを許可してほしいの、由利が今何を考えているのか私にも分からない・・でも私も由利もこの一件に深くかかわり過ぎたの・・・今更知らぬ顔で待つのは無理なのよ・・・だから・・」


「星奈さん・・・解りました・・由利さん・・・宜しくお願いします」


由利さんは俺たちに頭を下げ小さく「ありがと」とだけ呟いた


「それじゃ少し時間が押してるし早速向かいましょう」


「「「はい!」」」


俺たちは星奈さんの運転するミニバンに乗り込み、笹本ホテルを出発した・・・・いよいよ第二次富士防衛戦の作戦が開始された









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