〇ミニバン車中 東駿河湾環状道路 走行中
AM7:10
俺は星奈さんの運転するミニバンの助手席に座り後部座席に雫と五月、由利さんが座ってる
「今回の作戦のおさらいをするわね」
雫が犬飼会長と真理恵さんから指示された作戦の概要を説明する
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
「つまり、私達は魔物たちのスタンピードに構わず一直線に富士山の頂上を目指していけばいいのね」
星奈さんが運転しながら答える、由利さんは相変わらず一言も喋らない
「・・・・ちょっとぉ?由利ぃ?何時までそんな辛気臭い態度取ってるの?!いい加減にしなさいよ!」
バックミラー越しに由利さんの様子を見て星奈さんも流石に我慢の出来ず声を荒げる
「・・・・別にいいでしょ・・ちゃんとミッションは遂行するわよ、それ以上なにが必要なわけ?」
「はぁぁアンタいったい何なの!!この間から!!いい加減ウザイのよ」
「・・・・・・・」
由利さんは何も言わずずっと外の景色を見てる
「まっまぁ・・星奈さんも落ち着いて下さい・・これからが本番ですし、由利さんも協力してくれるって言ってる訳だし・・ねぇ・・由利さんも」
「・・・・・・」
「ふん!!」
『ねぇ由利さん何かおかしくない?』
『ええ女狐らしく図々しいのが、取り柄だったのにこれじゃ拍子抜けね』
『二人とも、あんまり傷口を抉る様な事は言わないようにね』
『はいはい』『解ってるわよ~』
そんな話をしてる内に環状線から富士山へのルートへとミニバンは進んでいく
「ねぇ・・・・あれって・・・」
五月が窓の外を指さし顔を青くする、俺たちも窓の外を見てみると・・・・・
「あ、あれは・・・・スタンピード!!?」
緑の生い茂る森の中を何かが移動し、一面を覆いつくす程の砂煙と樹木の不自然な揺れ方から想像を超える事態にある事を理解したのだった
〇AM8:30 富士の樹海前 簡易作戦司令部
「犬飼会長!!娘は・・龍道君達はもう既に出発してるって事ですか!?」
傑は源蔵からの説明を聞き詰め寄っている
「そうだ、今回の作戦の勝敗の行方は龍道君と君たちの娘に託した、我らに出来るのは少しでも突入部隊へ魔物の注意を向かさない様にする事と住民の安全確保だ」
「し、しかし・・我等にも教えていただけなかったとは・・あまりにも」
傑の言葉に源蔵は不快を隠さず答える
「傑よ・・貴様は娘達の無事を信じる事が出来ぬかの?お前の娘はあの若さで異例のクラスチェンジした稀有な逸材だぞ?」
源蔵のクラスチェンジしたと言う言葉を聞いて、事情をしってる鳥居夫婦と蜂須賀夫婦以外の全員がザワザワと騒ぎ出す
「し、師匠!?それは本当の事ですか!?若干17歳にして呪術師と賢者にクラスチェンジしたと!?」
「その通りだ・・そしてリーダーの龍道君はドラゴンロードという特殊なタレントだ・・・もしかしたら、あのお方達の様に特級に匹敵する新しいタレントかもしれぬ」
司令部はさらザワつく、世界に3人しか居ない特級職・・・そこに4人目となる新たな特級の誕生となると世界的なニュースとなる
「龍道君の実力は未知数だ、しかし儂は彼の底知れぬ実力の一旦を垣間見て確信しておる、実際に龍道君の手によりオロチを鎮める事が出来たのなら彼の実力は35年前の儂ら全員の力と同等、いや、それ以上と言う事になる」
司令部は沈黙で包まれる、殆どのメンバーが龍道 進という人物を知らない、この場で彼の実力を知るのは鳥居夫婦と蜂須賀 雪菜、十文字 南斗、そして犬飼 源蔵と真理恵だけだ
いくら犬飼会長の言葉とは言え容易に信じられるものではない
「皆に儂の言葉と考えを押し付けるつもりも、信じて貰おうとも思わない結果は何れ解る」
その時、司令部の入り口の垂れ幕が乱暴に開けられ、ハンターの男が駆け込んできた
「会議中失礼します!!先行の偵察隊より伝令です!!魔物の進軍が始まりました!!数は・・・感知しきれない程の大群です!!」
「諸君!この国の未来をかけた一戦だ!!全力で阻止するぞ!!」
「「「「「おおおおおお!!」」」」」
「では各リーダーは作戦通りの持ち場にて各々の裁量で前線を維持せよ、後方の補給救護部隊は魔物の奇襲に警戒!後方待機部隊は後方部隊の警護と近隣住民の避難誘導を!」
「第二次富士防衛戦!!作戦開始ぃぃぃ!!」
各リーダーは各々の部隊に声を掛け嵐の様に司令部を出て行った
「会長・・・進さんは・・・突入部隊は・・・大丈夫でしょうか?」
心配そうに源蔵に尋ねる真理恵に振り返る事無く源蔵が呟く
「儂の眼力が顕在か・・・耄碌して節穴になってるか・・・その責は儂一人の命では償い切れんな・・」