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第86話 十文字流の真骨頂、「奥義 桔梗」

〇富士の樹海前 防衛戦右翼部隊 十文字部隊



右翼部隊を強襲したゴブリンキングは得体の知れない黒い影に飲み込まれ浅黒い地肌の魔物へと進化し自らアマイモンと名乗った・・・ネームドの降臨だ


南斗が何とか抑え込もうと奮戦したが瀕死の一撃を受け左肩を負傷、なんとか小五郎の治癒魔法のおかげで治療したが戦意を喪失したのか自ら剣を手放し戦場の真ん中で立ち尽くす


次に力を持っている小五郎に狙いを定めたアマイモンは必殺の一撃魔人剣を撃ち込む、小五郎と小五郎を守ろうと集まったハンター達にその見えない衝撃波が襲い掛かる


キィン!!


しかし、その衝撃波は小五郎達に届く前に弾かれる


「!?・・・・南斗・・・」


ミスリルの剣を振り抜いた南斗は目を瞑った状態で剣を振り抜き小五郎達の前で固まっていた


『ほう・・我の魔人剣を弾くとは・・・諦めた訳では無かったか・・・良かろう、もう一度相手をしてやろう』


アマイモンは再び南斗に向って突進する


キィン!カン!キィン!


明らかに力に差が有る南斗とアマイモンは戦場の真ん中で激しく切り結ぶ、打ち込む度にミスリルの剣と黒剣からは火花が迸りその激しさが伺える


「す・・・すげぇぇ」


小五郎の前で壁になっていたハンターの一人が感嘆の声を漏らす


「あれが十文字のもう一つの力・・・十文字流古流剣術だ・・・・」


小五郎から語られる聞きなれない剣術流派に首を傾げるハンター達に小五郎は説明を始める


「十文字流は今から1000年前に起きた流派だ、その剣の真理は「流水に流れる枯葉の如く」力を受け流し、その力を蓄積し必殺の一撃とする。南斗はその性格から受け身技である十文字流を毛嫌いしていたが、本人の意志とは無関係にその実力は十文字家の歴史においても5本の指に入る程の天才・・・ここに来て自分の信念を曲げ全力の十文字 南斗を見せるか・・・」


一同の目の前には目を瞑ったままで、アマイモンの剣戟を捌き距離を一定に保ちながら抑え込む南斗の姿がまるで舞を舞う様に見え戦いを忘れ魅入ってしまう


『・・・なんだ?まるで形の無い空気と戦ってるようだ・・・貴様・・何者だ・・』


「・・・・・・・」


『しかし・・・そろそろ我もこの戦場を鎮めねばならぬ・・・この先の人間共も供物に捧げねばならぬのでな』


アマイモンは上段に黒剣を振りかぶると、全力を込める・・・腕の血管が浮き上がり腕の太さが膨張しギリギリと黒剣を握る手から軋む音がする


『喰らうが良い、我が一撃、【魔人黒閃】(まじんこくせん)』


アマイモンのあり得ない理力で振り下ろされる黒剣は鈍い黒い軌跡を描きながら、南斗の頭をめがけ打ち下ろされる


「十文字流・・・紅葉」


瞑っていた目を見開きミスリルの剣の腹を左手で支えながらアマイモンの魔人黒閃を真正面から受けようと構える


『おろかなり、その自慢の剣と共に潰れるがよい』


ガギィィィ


耳障りな金属音が南斗の剣の悲鳴と錯覚させる、南斗は先ほどと同じ様に身体屈めるとアマイモンの撃ち込みの勢いを受け流し右側に体ごと側転させ勢いに身を任せる様に空中に舞うと


「十文字流・・・奥義一閃 桔梗・・・・・」


全力で振り下ろされ地面に撃ち込まれた黒剣に着地した南斗はそのまま黒剣からアマイモンの腕を駆け上がり、アマイモンの顔の前で横に剣を一閃するとその勢いでクルクルと横に回転しながら華麗に地面に着地する


一同が固唾を飲んで戦場が一瞬静寂に包まれる


ズルッ・・・・


アマイモンの頭が鼻を中心に真横に切れ落ち、頭の上部半分が地面に落ちる・・・ドサッと鈍い音のあとでアマイモンの身体が大きく後方に倒れ込み地響きが鳴り響く


「や、やった・・・・やったぞぉぉ!!南斗さんが敵のボスを倒したぁぁぁ!」「うおおおおおおお」


南斗の勝利に沸くハンター達は武器を掲げ勝鬨(かちどき)をあげる


「お前ら!浮かれるのは未だ早いぞ!!敵はまだ沢山いるんだ気を抜くな!!!」


先程のトランス状態から何時もの南斗に戻り浮かれる皆に激を飛ばすが、興奮で士気が上がるハンター達を見て小五郎は呆れてる南斗に向って小さく頷く


こうして右翼を襲った魔物スタンピード第一陣は、南斗はじめ歴戦の猛者達の活躍で人類側の優勢にすすんでいた・・・・・




〇富士の樹海前 防衛戦左翼 鳥居部隊



傑と美月の任された左翼が配置した目の前の樹海からは魔素を含む風と共に腐臭も漂っている


樹海の奥の方には素人目に分かるオドロオドロしい雰囲気が漂っている


「ねぇ貴方・・・この匂いって」


美月は腐臭に顔をしかめ傑の元に身を寄せる


「ああ、どうやらコッチを強襲するのはアンデットの様だな・・・まぁアンデットに物理は通りにくいからなある意味我が社がこっち側に配置されて良かったのかもな」


「私アンデットって苦手なのよね・・・はぁ~憂鬱だわ・・・」


額に手をおいて首を振りながら嫌悪を口にする美月に苦笑しながら傑も答える


「アンデットを好きな奴なんて居ないさ、でもアンデットなら力も強くないしな、奴らの毒と麻痺の攻撃さえ気を付けて遠距離から火炎系で仕留めれば苦戦はしないはずだ」


ポンポンと美月の肩を叩き雪菜が顔を覗かす


「あら私はアンデットは嫌いじゃないわよ?」


「げっ雪菜・・・あんた本気ぃ?趣味悪すぎでしょ・・・」


美月のイヤそうな顔を見て首を傾げる雪菜


「あら?だってアンデットなら私らの浄化の魔法が効くからねぇ~浄化するときに消えてくあの瞬間がたまらないのよねぇぇ」


うっとりする雪菜にすこし、引いてる傑と美月


「鳥居社長!!第一陣が森を抜けます、構成はグールとゾンビドッグです!!」


報告に来た盗賊ハンターの報告を聞いて眉間にしわを寄せる傑


「まずな・・・ゾンビドッグは足が速い・・・呪文詠唱中に距離を詰められると厄介だな・・・・」


「美月、配置式の呪文を設置するぞ」


「了解」


傑は美月を伴い魔物の気配が迫る樹海の手前に立つ


「「我求めるは荒ぶる大地の息吹、母なる大地に仇成す者へその意を示せ・・・アースグレイブ」」


傑と美月の展開した上級土系魔法の設置型のトラップ呪文が生成され目の前の地面に大きな二つの魔法陣が出現し一瞬だけ輝くとスッと消える


呪文の設置を確認した傑と美月が陣営に引き上げてくると


「来ました社長!!スタンピードです!!!」


鳥居スタッフ社員のマジシャンの男が密林を指さすと、密林から大量のゾンビドッグが砂塵を巻き上げ此方に突進してくる


奥からは人の姿をしたグールが腕を前に伸ばし足を引きずる様に現れる


「もうすぐ、先頭のゾンビドッグの集団がアースグレイブに掛かります!!」


先程、傑と美月が設置した魔法陣の上を突進して駆け抜けるゾンビドッグ・・・・その時地面に魔法陣が出現し激しく輝く


魔法陣からは無数の尖った岩が針の様に飛び出しゾンビドッグの群れに襲い掛かる


ゾンビドッグ達は魔法陣から飛び出した岩の槍に体を貫かれ串刺しになったり、身体を切り割かれ千切れたりして百体近いゾンビドッグの群れは一網打尽となった


「やったぁぁ!!流石、稀代の呪術師 鳥居夫婦!!桁違いだ」


目の前にで第一陣に大打撃を与える事が出来た一同は歓喜に沸いていた


「油断するな!!次がくるぞ!!」


傑の叱責と同時にアースグレイブで岩の剣山となった場所を迂回してきたグールとゾンビドッグがこちらに向って突入してくる


「いくぞぉぉ!!マジシャン部隊詠唱開始ぃぃぃ」


傑の掛け声に従い、40名近いマジシャンが魔物に向って魔法の詠唱を開始した・・・・


こうして右翼に続いて左翼でも戦闘の火ぶたが切って落とされる



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