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第88話 死への冒涜

〇富士の樹海前 防衛戦左翼 鳥居部隊





「報告します!!密林の左端にローブを身に着けた大型のゾンビの存在を確認!個体の種別は判明しませんが魔素の保有量から上級以上と推測します!!」


「!?ようやく出て来たか・・・・ネクロマンサー・・・」


報告を受け傑と美月、雪菜はネクロマンサーが出現したとされる地点へと移動する


駆け付けた時には既に密林から数体のグールが神輿の様な物を担ぎならがゆっくりと此方に向っていた


「あ・・あれが・・・死霊使い・・ネクロマンサーか・・・」


神輿の上には報告にあった通りボロボロのローブを身に着けた骸骨が上空に向って手にした杖を掛けげていた、掲げた杖の上空には魔法陣が浮かび上がっている


「何をするつもりなの?」


「・・・・あれは・・私達の神聖魔法とは全くの対極の力・・言わば暗黒魔法・・・」


「暗黒魔法・・・」


雪菜の言葉にネクロマンサーの方へ視線を移すと、ネクロマンサー達の通った後ろの地面が幾つも盛り上がり土の中から白骨と化した人の手が現れ這い出してくる


「!?あ、あれが・・死霊召喚!?・・・」


出現したスケルトン達はさび付いた武器を手に次々とネクロマンサーの行軍に加わっていく、見れば首にはハンターの証であるハンター証を付けてる者も居る


「こんなこと・・・あれは35年前に、この地で富士防衛戦で命を落とした人たちの・・これは死への冒涜だわ・・・」


「美月・・・雪菜さん・・・アイツだけは許さない・・・必ず倒すぞ!!!」


「ええ、骨も残さず消し炭にしてやるわ」


「英霊達に魂の休息を・・・」


傑と美月は杖を構え詠唱の体制に入る、雪菜は防御壁を形成する為二人の前に出て地面に杖を突き立てる


【我求めるは聖なる棺、神聖なる領域にて安寧を約束する、グレートウォール】


雪菜の目の前に、神聖なる白い壁が現れる


しかしスケルトン達はお構いなしに目の前のグレートウォールに進撃してきて壁に触れると白骨が崩れ灰になって消えていく


「くっ・・・同じ所ばかりに突撃してくる・・・このままでは・・・傑さん!美月ぃぃ!このままじゃ持たないわ!」


魔力を送り直してグレートウォールの形成を維持する雪菜には激しい疲労が襲い掛かる


規格外の魔力量を保有する雪菜とは言え、休む間もなく魔力を垂れ流していればMPの枯渇より先に集中力が続かない、それを狙ってか次々同じ一角にスケルトンは突撃しては消えていく


「特攻・・・って訳ね・・・しょせんはネクロマンサーの駒って事ね・・吐き気がするわ」


額に汗をにじませながら、死霊を生み出し続けるネクロマンサーに嫌悪感を口にする雪菜・・・そんな中でようやく傑と美月の詠唱が整う



傑と美月は共に目を瞑り二人同時に掲げたスタッフの先端についてる宝珠が真っ赤に輝く




【【我求めるは、地獄の業火、深淵より吹きあがり我が敵を焼き尽くせ!ヘル・ファイア】】


宝珠から撃ちだされた炎の玉は先ほどデュラハンに撃ちだした時よりも大きく1メートル近い火球となり放物線を描きながらネクロマンサーの一団に降り注ぐ


ネクロマンサーは上空から降り注ぐ2つの火球を確認するとカタカタと口を動かし何かを指示してる・・・



ドォォォン


着弾した2つの火球は爆炎を上げ周囲のグールやスケルトンを巻き込み一帯を火の海とした


「・・・・待たせたな雪菜さん・・」


「ふふ・・詠唱に何時もより魔力を注ぎ込んだから威力も十分なはず・・・これで終わったわね」


爆炎が収まるとネクロマンサーの居た辺りには白骨の骨の山が出来ていた


「・・・35年前に人類を救う為に犠牲になった人々もこんな所でネクロマンサーの玩具にされて・・・雪菜・・彼らに安らかな眠りを・・・お願い・・」


美月は複雑な表情をして雪菜の肩を叩き浄化を頼んだ・・・・


「ええ・・・そうね・・まかせ・・!?・・て、ちょっと待って!!あ、あれ・・なんか動いて・・」


雪菜の指さした白骨の死体の山の天辺で何かが蠢いている・・


「う・・うそだろ・・・まさか!?」


白骨の天辺が崩れ中から無傷のネクロマンサーが姿を現す


「や、奴は、死霊たちを自分の壁にしたのか!!くっ・・なんと卑劣な・・・」


死体の山の上に立ったネクロマンサーは口元をカタカタと音を立て・・・笑っている様だ・・・そして杖を両手で持ち上空に掲げると空中に魔法陣が3重に折り重なり出現する・・


「こ、今度は何をする気だ!?」


ドサッ


「!?雪菜!どうしたの!?」


急に雪菜がその場に膝から崩れ倒れ込む


「負の・・負の魔力が・・この周囲に集まって・・今までの比じゃない・・・このままじゃヤバイ・・・」


傑は振り返ると、ネクロマンサーの足元の死体の山が生き物の様に蠢き出し何かの巨大な形を作り出す


「何が・・・・何が起こるんだ・・・」






白骨の死体は大きな頭と尻尾、4本の脚をもつ爬虫類の様な形になる・・・


それは伝説の中で語られるこの世界で最強の種族である・・・・






「あ・・・あれは・・・ドラゴン・・・・スカルドラゴン(骨竜)」








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