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第89話 戦場を駆ける

〇富士の樹海前 防衛戦左翼 鳥居部隊



白骨の死体は大きな頭と尻尾、4本の脚をもつ爬虫類の様な形になる・・・その姿は噂に聞くドラゴンそのものだった


「あ・・・あれは・・・ドラゴン・・・・スカルドラゴン(骨竜)!?」


そう呟く美月


「い、いや・・・あれはドラゴンの骨を使ったモノでは無い・・・スカルドラゴンダミー(偽骨竜)って所だろう・・」


「確かに・・あれが本物のスカルドラゴンなら私らに勝ち目は無い・・・けど禍々しい大きな魔素の力を感じる」


警戒する三人に向い大きな口を開けて威嚇してるスカルドラゴンダミー・・・その背にネクロマンサーが乗り虫けらを見下ろす様に不敵に口をカタカタと鳴らし笑う


「本物のスカルドラゴンやドラゴンゾンビで無いなら・・・やりようは有る」


傑の言葉に美月と雪菜が何か策が有るのかと尋ねる


「時間が無い・・簡単に説明する・・・」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・


「解ったわ・・・それしか無さそうね・・」


傑と美月は雪菜を守る様に前に立つと詠唱を開始する



「我求めるは赤き炎 ファイア」


「我求めるは怒れる大地の槍 アースランス」


「我求めるは猛き風の刃  ウインドカッター」


「我求めるは青き氷の弾丸 アイスバレット」


「我求めるは赤き炎 ファイア」


「我求めるは怒れる大地の槍 アースランス」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・


傑と美月は初級の魔法を途切れることなく詠唱し目の前のスカルドラゴンダミーとネクロマンサーに撃ち込む・・・その背後で雪菜が詠唱を整えて行く・・


【我求めるは神の輝きに守られし楽園、安寧の柱と寛美の壁、慈恩の屋根に祈りの聖域を得たり、サンクチュアリ】


雪菜は地面に杖を立て聖域の魔法を発動する、スカルドラゴンダミーの足元に真っ白に輝く魔法陣が出現しスカルドラゴンダミーとネクロマンサーの動きを封じる


「美月ぃぃ今だ!!急げあまり時間は無いぞ!!」


そう傑が声を掛ける前に美月は一目散に駆け出した


「・・・・頼んだぞ・・美月・・・・それまでは・・・」


「ええ・・・なんとしても抑え込む!!」


【我求めるは、地獄の業火、深淵より吹きあがり我が敵を焼き尽くせ!ヘル・ファイア】


傑は聖域内で身動きの取れないスカルドラゴンダミーとネクロマンサー目がけて炎の上級呪文を放つ・・・着弾した魔法はスカルドラゴンダミーの足元で炎を巻き上げる


「・・・・ダメか・・魔法防御がダウンした状態でも大したダメージを出せない・・・」


「傑さん!!気を緩めないで!美月が戻って来るまで・・・ここで足止めするのよ!!」


「解ってる!!・・・・・頼むぞ・・・美月」



・・・・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・



「はぁはぁはぁはぁ・・・くっ・・・早く・・・・早く・・・」


美月は傑たちの戦ってる戦場を離れ何処かに向っていた・・・


「はぁはぁ!!?」ドサッ


しかし美月は全力で走っている途中でこけてしまう・・・


「くっ・・・!?」


立ち上がろうと周囲を見渡すと、三匹のゾンビドッグが美月を囲む・・・


「しまった!!詠唱を 我求めるは赤き炎 ファイア」


一匹は炎の呪文が命中し燃え上がるが残りの内一匹が美月に大きく口を開け襲い掛かる


ガッ!!


咄嗟にスタッフを横に持ち大きく開いたゾンビドッグの口に差し込みながら縺れる様に倒れ込む・・・・


「くっ・・・このままじゃ・・・・」


美月が横をみると、もう一匹のゾンビドッグが周囲をウロウロしながら襲い掛かる機会をうかがっていた・・・抜け出そうと足をバタバタさせるが女性の力では振りほどけない


「ガァァァ」


機会をうかがっていたゾンビドッグが痺れを切らし美月の頭を目がけて大きな口を開け向ってくる


「くっ・・・・・ゴメンなさい雪菜・・・傑さん・・・・五月・・」




「うぉぉぉりゃぁぁぁぁパワースマッシュ!!」


美月に襲い掛かるゾンビドッグは口から尻尾までを真っ二つに切り割かれ美月に届くまでに地面に崩れ落ちる


「いつまで美女に跨ってんだァァ」


美月の上にのしかかっていたゾンビドッグは吹き飛び地面に転げ落ちる


「くらえぇぇぇ」


額から切り割かれ倒れるゾンビドッグ・・・・


「大丈夫ですか?鳥居さん!!」


駆け寄ってきたのは、さっき雪菜の危機を助けてくれた女性のファイターと盗賊の男だった


「え、ええ・・・助かりました・・有難う・・っ!?」


起き上がろうとしたところで五月は自分の足首が真っ赤に腫れていることに気づき再び倒れてしまう


「鳥居さん!!無理しちゃ!!・・・これは折れてるかも・・橋本!!ポーション!」


「わーってる、偉そうに言うな!!・・・って・・・えへへへ・・美月さんなんなら俺が口移し・・・「ドガッ」ってぇなっ!!何すんだこのゴリラ!!」


女性のファイターは盗賊の男の頬を殴りその手からポーションを奪い取ると美月に手渡す


「取り合えずこれを・・痛みは治まりますので・・」


美月はお礼を言うと一気にポーションを飲み震える足で立ち上がり、足を引きずりながら歩みだした・・・が直ぐに歩けなくなりコケてしまう・・・女戦士はかけより美月を抱き起す


「無茶です!そんな状態でどこにいこうと・・・」




「!?・・・お、お願い!!私の代わりに・・・・」


美月は女戦士の襟を掴み訴える・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






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