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第93話 赤龍「紅」

〇富士山山頂  封印社跡



富士山の火口跡の中に立てられた、かつて富士防衛戦の最後戦場、大勢のハンターの犠牲と宝剣天叢雲剣の理力により封印が施された後に建てられた社


「ここが・・・・・封印の社跡・・・?」


五月が辺りを見渡しながら呟く


確かに何かが建っていた跡はあるが、既に跡形も無く破壊され天叢雲剣も見当たらない・・・・


「やはり・・・あのザビーネとか言う魔族に破壊されたのか・・・」


ゴゴゴゴゴゴゴ


その時火口が激しく揺れ、火山岩の足元に亀裂が走る


「危ない!!亀裂から離れるんだ!!」


俺と五月達4人は地割れにより隆起した火山石により分断され五月達の足場は俺の立っている場所より2メートル近く隆起した


「五月!?雫!?星奈さん!!由利さん!!無事ですかぁぁぁ!!」


地面の振動が収まらないので四つん這いになり踏ん張ってる五月が崖になってしまった場所から顔を覗かせ手を上げ無事をアピールする


「ふぅ・・・ひと先ず無事で良かった・・・取り合えず合流しないとな・・・」


周囲を見渡しながら合流するルートを探してると上空からバサバサと羽ばたく音が聞こえ俺の周囲が暗くなる


「す、す、進!?上、上ぇぇ!!」


上空を指しながら混乱してる五月の指す先に目を向けると


「なっ・・・なんだぁぁ!?」


上空には大きな鳥の様な影がゆっくりと旋回していた・・・その影は羽を折りたたむと一気に俺目がけて下降してくる


「逃げてぇぇぇ進ぅぅ!!」


「くっっ」


慌てて後方に向って走ると、影は大きな羽を拡げ羽ばたきながらゆっくりと地面に着地する・・・・


赤い鱗に鰐の様な大きな口、黄色く輝く瞳、蛇のような長い首、蝙蝠の様な大きな羽、鋭い爪が輝く体に似合わない短い腕と相反する様な太く強靭な足、そして長い尻尾・・・・


「ド・・・ドラゴン・・・・」


ガァァァ!!


鼓膜が割けるかと思うような咆哮・・・・目の前に現れたのは身の丈10メートル近くある真っ赤な竜・・・赤龍(せきりゅう)だった


『この場所は我が父上が眠りし神聖なる場所・・・貴様ら人間に受けた辱めと仕打ち・・忘れはせぬ・・もうじき父上が復活し貴様ら人間を駆逐するであろう』


「!?人間の言葉が解るの!?」


「わたしにも聞こえるわ!?」


どうやら五月と雫にも赤龍の言葉が解るらしい


「え?なに?五月と雫にはあのドラゴンの鳴き声が言葉に聞こえてるの?」


五月と雫の後ろから顔を覗かした星奈さんにはドラゴンの言葉は理解できない様だ


『我が声に耳を傾けし、人間よ貴様らには選択する機会を与えよう、今すぐ此処から立ち去り我が父上の裁きを受けるか、今からオロチの娘たる我、赤龍「紅(くれない)」に食い殺されるか』


目の前の紅と名乗った赤龍はそう話すと鋭い牙が覗く口元から真っ赤な炎が漏れ吹き出している


「紅と言ったか・・・悪いがそれは出来ない、俺たちにはこの地に住む人たちの幸せを、命を守るという使命がある・・・悪いが俺たちの邪魔をするというなら・・・」


『交渉は決裂だな・・・ますは貴様から消炭にしてやろう』


赤龍は首をもたげ上空を見上げるとその長い喉元の部分が膨張する・・・・そして一気に進に向かって首を伸ばし大きな口を拡げると


ドォォォォォ!!


「くっ!!」


咄嗟に顔の前で腕をクロスさせガードの体制を取った進は真っ赤な炎に包まれる


「進!?」「すすむん!!」「進!!!」


崖の上でその光景を目にした3人は絶叫と悲鳴をあげる


赤龍より吐き出された炎は進の立っていたであろう周囲の火山石をも溶かし溶岩に変えていく・・・


吹き荒れる炎のブレスは黒煙を巻き上げ荒れ狂い・・・ようやくおさまった・・溶解した火山石から白い煙が立ち上る


『立派な言上も実力が伴わなければ、只の道化・・・』


《ドラゴンロードにブレスは無効です》


『・・・・?なんだ・・今の声は・・・・』


「言いたいことはそれだけか?俺にはお前のブレスは効かないぞ・・・」


白い煙の中から現れた進は全くの無傷で火傷一つしてなかった


「進!!」


『あり得ない・・なんだ貴様は・・・我のブレスが効かないだと!?』


「今度は俺の番だな・・・【永久凍土(多段)】」


進が手を翳すと赤龍の足元から氷が現れ足元が凍りつく


『くっ・・・・こんな氷、我の炎で!』


ドォォォォォ!!


赤龍は凍った自分の足元に向って炎のブレスを吐き出す


『!?』


しかし足元の氷は溶けるどころか、赤龍の吐き出した炎ですら氷ついて行く・・・・


「無駄さ・・・俺の永久凍土は多段スキルだ・・・一度発動すれば俺が解除するまで物体は分子運動を止めすべてを凍てつかせる・・・お前こそ俺たちの使命の邪魔をすると言うならここで氷の彫刻となってもらう」


『くっ・・・体が凍る・・・っ!?足が地面に凍り付いて飛べない!?このままでは・・・』


徐々に氷に覆われる赤龍は悔しそうに、呻き声を上げ凍り付くのを防ぐため必死に腕を振り回し鋭い爪で氷を砕く・・・しかし進の永久凍土の侵食は止まらない・・砕いた後から次々氷が作られとうとう首を残し全身が凍り付く


『一度ならず二度も人間に辱めを受ける等・・・我に父上の様な力があれば・・・こんな人間等に遅れは取らないのに・・・』


進は赤龍の目の前に立ち、じっと見つめる


『・・・何でそんな目で我を見る・・・貴様・・・何故そんな悲しそうな・・・』


ドォォォォォン!!


その時再び足元の火口全体が激しく揺れ地割れしながら足元の岩が次々と滑落していく・・・


「!?五月、雫!!星奈さん由利さん!!早く安全な場所に!!」


進は滑落して行く足場をジャンプして移動しながら外周付近まで退避する・・・さらに距離が離れてしまった五月達も同じように外周に無事退避出来た様だ・・・


火口の中央に穴が出来真っ赤なマグマが溢れ出す・・・・


『父上!』


凍り付いた足場の岩盤と一緒にマグマの海に浮かんでいる赤龍が叫ぶと、マグマの中から蛇の様な大きな頭が出現する・・・・




『貴様か・・・早々にこの地を去れと伝えていたはずだが・・・この場に至って我が娘を害すると言う事であれば縊り殺すしか無いな・・・苦しまずに死ねると思わぬ事だ・・・』





いよいよ伝説の竜王 オロチがその姿を現した・・・・




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