〇富士山山頂 火口
火口の中央に穴が出来真っ赤なマグマが溢れ出す・・・・
『父上!』
凍り付いた足場の岩盤と一緒にマグマの海に浮かんでいる赤龍が叫ぶと、マグマの中から蛇の様な大きな頭が出現する・・・・
『貴様か・・・早々にこの地を去れと伝えていたはずだが・・・この場に至って我が娘を害すると言う事であれば縊り殺すしか無いな・・・苦しまずに死ねると思わぬ事だ・・・』
これが・・・・龍王オロチ・・・・
蛇の様な三角の形をした頭が八つその一つ一つが10tトラックにも匹敵する大きさだ、その体皮は蒼黒く輝きその瞳は蛇特有の縦に割れた黒目が獲物をすくみあがらせる
さらにその蛇の頭から伸びた首は自在にうねり一つ一つは30メートル以上有りそれを支える体は丸々と大きく支える4本の脚は強靭な力強さを誇示するかの如く一歩踏みしめる度に地面が悲鳴を上げる
そして首よりもさらに長い1本の尻尾は、9本目の首の様でもあった・・・
まさに竜王・・・元の世界の古い書物にも出て来る伝説の化け物 「遠呂智(オロチ)」の名に相応しい・・・・
「・・・これは・・・目の前にして分かる・・・桁が違い過ぎる・・・フフフ草薙の剣でもあれば其れらしいんだがな・・・」
RPG好きゲーマー特有の遠呂智と言えばのお約束武器の事を想像し不謹慎ながらも笑ってしまう
『貴様が我の意識に入り込んで来た身の程知らずの人外だな・・・もう一度訪ねる・・・貴様は何故人間に味方する』
「進!?」
「なにこれ・・・赤龍に続いてオロチの声も聞こえる・・・すすむんが言ってたのはこの事!?」
『貴様の番(つがい)か・・・だが人族だな・・・確かに他の者とは違うオーラをもっている・・だが貴様とは根本が違う存在だ、人族は愚かで浅ましい穢れた存在だ、貴様も何時かは裏切られる・・』
「黙れ・・・それ以上二人を侮辱する事は許さん・・」
『ふっ・・怒りか・・無駄な事だ・・我との力の差を推し量れんとは・・・見込み違いであったか・・』
16個の瞳はすべて俺に向けられている、その蛇眼は心まで凍てつかせそうな程冷たい・・・
「オロチ・・・貴方と話をしたい!!」
『!?貴様ぁぁ我が父上に対し不敬も大概にせよ!っ!?・・・っ父上・・?』
マグマの熱により俺の永久凍土から逃れた赤龍が俺に向って飛び掛かろうとしたところをオロチがその巨大な尻尾で制止する
『良い、貴様の遺言として聞いておいてやろう・・・』
「貴方の奥さんと娘さんを攫って酷い目に遭わせたのは確かに人間だ・・・だがそれは35年以上前の事・・今この地に暮らす人達には関係ない事だ」
『くだらぬ・・・たかだか数百年でウゾウゾと生まれ出でる人間等我にとってはどれも同じ・・・我が憎しみと恨みはこの国に住む人族全てを根絶やしにしても尽きる事は無い』
「貴様は私怨に囚われすぎている・・・35年もあってその事が分からないとは・・・」
『たった・・・・35年だ我等にとっては昨日の事と変わらぬ・・・貴様が言いたいことはそんな下らぬ事か・・・興ざめだ・・』
「・・・貴様には奥さんの気持ちが理解できないのか?」
『・・・何?』
「奥さん・・竜の巫女である魔族の女性は確かに当時の人間に攫われ殺された・・・と思われていたが実は瀕死の重傷ながら生きていた・・魔族としての力は失ってしまったが」
『戯言を・・・我を謀るならもっとましな・・・?貴様、何故竜の巫女が魔族の女だと知っている・・・』
俺はオロチの問いには答えず話を続けた・・・
「奥さんはお前が暴れた35年前にお前を鎮める為、浅間大社にて鎮魂の踊りを踊ったサクヤ隊の一人だったんだ・・・」
『・・・そんな事はお前らの作り話だ、そもそも35年前の事を何故お前が知っている・・人間共の話等信じるに値しない』
「・・・・俺の話は・・・」
『通じぬな・・・』
「では・・仕方ない・・・お前を再びこの地に封じるのみ!!」
オロチは八つの首をもたげると喉が大きく膨れ上がる・・・・『父上!?こいつには!!』
ドォォォォ!!
オロチの口から吐き出された炎と氷のブレスが進を直撃する
《ドラゴンロードはブレス無効です》
『・・・何?・・・何だ今の声は・・・ドラゴンロード?聞いたことは無いが何か深層意識の底にある感情が揺さぶられる響きだ・・・それよりブレスが効かぬとはな・・・』
オロチのブレスが荒れ狂う中、人影が飛び出してくる
『!?』
「うぉぉぉりゃぁぁぁ!!」
ドガッン!!
進は飛び掛かりながらオロチの頭の一つを殴り飛ばすと他二つの頭を巻き込んで地面に倒れる
『ほう・・人間の領域を超えておるな・・この我に素手で土を付けるとは・・』
オロチは残りの五つの首で五車星の位置を取る
『#?%?&&・・・%###?$』
「!?これはドラゴンスキル!?」
『暴風斬』
オロチの首を起点に複雑な模様が浮かび上がり、緑色に輝くと激しい風が鋭い刃となり進へと撃ちだされる
「くっ!」
進は防御で凌ぐのは無理と判断し後方へと飛び上がり風の刃を避ける
地面はオロチの放った風の刃で切り割かれ、裂け目よりマグマが吹きあがる
「不味い・・こんなのがあちこちに撃たれたら五月達が・・・何とかしないと・・」
『・・・番が気になるか・・・貴様には我の味わった苦しみを味わって、さっき我に言ったセリフが自分に向けれた時どんな答えを出すか・・・見ものだ・・』
「おい・・・五月と雫に何かしたら・・・・・お前の魂ごと消滅してやるぞ・・・・」