〇富士山山頂 火口
『・・・番が気になるか・・・貴様には我の味わった苦しみを味わって、さっき我に言ったセリフが自分に向けれた時どんな答えを出すか・・・見ものだ・・』
オロチが放った暴風斬のスキルにより富士山の火口が切り割かれ裂け目より真っ赤なマグマが噴出している・・・辛うじてマグマから身を守っている五月と雫を見てオロチは俺に向ってそう口にする
「おい・・・五月と雫に何かしたら・・・・・おまえの魂ごと消滅してやる・・・・」
俺の中の何かが黒く塗り替わる様な感覚・・・これは協会の支部で人狼によって五月と雫が傷つけられた時に感じた感覚と同じだ・・・
『ほう・・・怒りにより理力が高まっているか・・・やはり人のそれとは異なる存在・・・ドラゴンロード・・この我が本気で相手をする必要があるな・・・』
オロチが俺に殴られ地面に垂れおちた頭を再び擡げユラユラと八つの首が俺の事を何時噛み砕こうかと様子を伺っている・・・
俺は右手と左手を前に突き出し指を鍵爪の形にして力を込める
「はぁぁぁぁぁ!!」
『面白い・・・見せてみろお前の力の全てを』
【神竜爪(六連撃)】
俺はその場に残像を残し一気にオロチの懐に飛び込むとオロチの頭の一つに鍵爪の形にした掌底を一瞬で六発叩き込む
『ぎゃぁぁぁおおおおぉぉぉ』
オロチの頭の一つの両目が俺の六連撃により切り割かれ無残な傷跡から青紫色の血を吹き出す
『・・・・やるな・・我のアダマンタイトの硬度を誇る体に傷をつけるとは・・・・だが』
地面に落下する所に残りの七つの頭が大きな口を開け、俺に襲い掛かる
「進!!」
「風神級長津比売(ふうじんしなつひめ)にかしこみかしこみ申す・・・導たもう、我が名は龍道 五月なり・・・・神風ナツヒメ!」
五月の放った魔法が竜巻を巻き起こし俺を包むと、俺の身体が宙に浮く
『!?飛行の魔法だと!?・・・ただの小娘と侮ったか・・・』
宙を舞いながらオロチより離れた場所にゆっくり着地すると再び鍵爪の形に両腕を掲げ俺に向って構える
『・・・・・小蠅の様にチョコマカと・・』
オロチは再び5つの頭を5角形に配置し紋様を発動する・・・・・
『爆炎地獄(ばくえんじごく)』
紋様から撃ちだされた炎がオロチの周囲に広がり炎の海へと変わる・・・当然オロチも炎の海に居るがマグマの中で封印されていたので炎は無効でダメージは無いだろう
「くっ・・これでは近づけない・・・炎の結界か」
『貴様の番(つがい)は・・・厄介だな・・・』
『父上!ここは私にお任せを!!』
そう言うと赤龍は羽を羽ばたかせ上空に飛び上がった
「!?させるかぁぁぁ!!」
オロチを回り込む様に駆け、五月達の元に合流しようとするが・・・・
『それをさせる訳なかろう・・・暴風斬』
5つの首の紋様から撃ちだされた無数の風の刃がマシンガンの様に俺の進行ルートの前に撃ち込まれ阻まれる・・・・さらに着弾地点の地面が割け勢いよくマグマが噴き出る
「五月ぃぃぃ雫ぅぅ!」
俺の叫び声と同時に赤龍が翼をたたみ上空から五月達めがけて滑空してくる
「くっ・・・・我求めるは聖なる棺、神聖なる領域にて安寧を約束する、グレートウォール」
雫が咄嗟に腰の杖を抜き上空に掲げ結界防御の呪文を唱え4人を守る防御壁を形成する・・・・
「まだまだぁぁ我求めるは聖なる棺、神聖なる領域にて安寧を約束する、グレートウォール」
「!?グレートウォールの重ね掛け!?」
雫の重複魔法に星奈が驚きの声を上げる
赤龍は雫の作り出した結界壁を一枚は破壊できたがもう一枚は破壊できず鋭い前足で何度も蹴り付ける
ガキィィン!!
結界は乾いた音を立てながら悲鳴を上げ今にも突破されそうだ
「五月ぃ!!持たないわ!急いでぇぇぇ」
五月は静かに目を閉じスタッフを掲げ集中する・・・・・
「雷神武御雷にかしこみかしこみ申す・・・導たもう、我が名は龍道 五月なり・・・・神雷ミカズチ!」
スタッフ先端の宝珠が輝き赤龍の頭上に真っ黒な雲が現れる
『紅!!何か来る、そこから離れろ!!』
しかし赤龍が反応する前に落雷が頭上から降り注ぐ
『がぁぁぁぁぁぁぁぁ』
体中を電撃が駆け巡り力なくその場に崩れ落ちる・・・・・
『くっ・・・娘を・・・貴様ら・・・皆殺しだ・・・35年分の恨みも纏めて・・自身の身体で思い知るがよかろう!!』
オロチの放った爆炎地獄の炎が上空に巻き上がり周囲に吹き出すマグマを巻き込みオロチを中心に炎とマグマの渦を作り出す
渦の中心からオロチの八つの頭が覗き上空に向って伸び8角形に位置取り魔法陣が生成される
「・・・なんだ・・この力・・・とんでもない力・・あり得ない程の魔素の量だ・・・」
『黄泉平坂より那由多の域へ、神代の契約に従い我、竜王の英霊の声に答え六道の壁を超え地獄の星を砕き撒き散らせ』
オロチの周囲の岩がマグマ化しさらに沸騰して皮膚が焼けただれそうな熱風が巻き起こる
熱風の舞い上がった先の上空に熱せられた岩が集まり一つの大きな塊となって行く・・・
『竜術奥義 煉獄の星砕き』