〇富士山山頂 火口
『黄泉平坂より那由多の域へ、神代の契約に従い我、竜王の英霊の声に答え六道の壁を超え地獄の星を砕き撒き散らせ』
オロチの周囲の岩がマグマ化しさらに沸騰して皮膚が焼けただれそうな熱風が巻き起こる
熱風の舞い上がった先の上空に熱せられた岩が集まり一つの大きな塊となって行く・・・
『竜術奥義 煉獄の星砕き』
上空に浮いている岩の塊は真っ赤に熱せられ時折崩れ落ちる岩の破片は炎を巻き上げ地面に落下すると、そのままマグマへと変わっていく・・・・
そして熱せられた大気を振動させながらゆっくりと火口内に向って落下してくる
「あ、あんなのが落ちて来たら火口に穴が開いて富士が大噴火してしまうぞ!?」
『ふふふ・・是非も無し、我と娘には心地よいマグマの海がここら一体を火の海とするだろう・・・残念だったなドラゴンロードよ貴様の事は我の記憶に悠久に留めておこう』
(君は間違うな・・・大事な物は何が何でも守り抜け・・・)
「っ!?慎吾さん!?」
耳元に慎吾さんに言われた言葉が蘇り聞こえてくる・・・・・
『・・・?何をしてる?悪あがきか?』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
俺は腰を落とし右拳を引き左手を右肩に乗せ全部の力を右の拳に集中する・・・・
『五月、雫・・・俺に力を・・力を貸してくれ・・・』
『!?進』『すすむん・・・わかってる・・』
「風神級長津比売(ふうじんしなつひめ)にかしこみかしこみ申す・・・導たもう、我が名は龍道 五月なり・・・・神風ナツヒメ!」
「龍道 雫の息吹」
五月からは風神の力を受け取り、雫からは体力と疲労度を回復してもらう
(俺は・・・やれる!一人じゃない・・・大事な物を守る為・・・皆の力を預かる!!)
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
おれは風神の力を借り上空の大きな隕石の様な大きな岩に向い飛び上がる
皮膚が髪の毛がチリチリと燃え上がり衣服にも引火する・・・・だが
【神龍の一撃(ダメージ限界突破)】
理力を込めた渾身の右拳を隕石に向け全力で突き出す
ドォォォォォォン!!
青白く輝く右拳が灼熱に焦げる隕石の表面と激しく激突し爆音と共に青い閃光と真っ赤な炎が入り乱れながら富士の火口全域の空気を震わす
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!く――――だ―――――け――――ろ――――!!」
バァァァァン!!
爆音と共に隕石中央から放射線状にヒビが入り隕石は粉々に砕け散る
「進!!」「すすむん!!」
『想定内だ!!ドラゴンロード!!』
貯めていた理力を放出し落下している進に向ってオロチの八つの頭が大きな口を開き嚙み千切ろうと伸びてくる
「いやぁぁぁぁぁ!!」「龍道 雫の息吹!」
咄嗟に雫がスキルを使用したが、間に合わない
【裏二式 神龍の一撃(ダメージ限界突破)】
進は空中で回転しながら固く握った左拳の裏拳をオロチの顎に叩き込む
パァン!!
乾いた破裂音と共にオロチの頭が一瞬で消え去る・・・・・
『ぎゃぁぁぁぁぁぁ』
オロチの絶叫と共に大きな巨体が火口の中でのたうち回る
『父上!?』
未だ回復しきれず空を飛べない赤龍はヨロヨロとオロチに向って歩み寄る
「五月!!!」「ええ!」
雫が首にかけていたお守りを取り出しオロチに向って思いっきり投げる・・・・投げた晴明の宝珠は丁度オロチと赤龍の中間付近に落下する
「今よ五月!!布津御霊でオロチと赤龍を封印して!!」
「任せて!!」
刀を覆っていた布を剥ぎ取り剣の柄に手を掛け一気に抜き去ると、目を閉じ源蔵から教わった祝詞を唱え出す・・・・・
「そうは、させない・・・」