〇富士山山頂 火口
雫が首にかけていたお守りを取り出しオロチに向って思いっきり投げる・・・・投げた晴明の宝珠は丁度オロチと赤龍の中間付近に落下する
「今よ五月!!布津御霊でオロチと赤龍を封印して!!」
「任せて!!」
刀を覆っていた布を剥ぎ取り剣の柄に手を掛け一気に抜き去ると、目を閉じ源蔵から教わった祝詞を唱え出す・・・・・
「そうは、させない・・・」
「え?」
「五月!?」
五月の足元に真っ赤な血が滴り落ちる・・・・・
「な・・・なんで・・・アンタが・・・・」カラン
五月は布津御霊を地面に落とし、そのまま前のめりに倒れる・・・その背中には小型のナイフが刺さっていた・・・
五月の背後に居た人物が五月の落とした布津御霊を拾い上げる・・・・
「ゆ・・・由利・・・さん・・」
五月を背後からナイフで刺した人物は由利さんだった・・・・
「あ、あなた何してんの!?い、いや、さ、五月、龍道 雫の息・・・っ!?」
今度は雫が背後から誰かに口を押えられる
「うううぅぅぃ!?」
(星奈さん!?)
雫を背後から抑え込んでいるのは星奈さんだ・・・しかし二人の目は虚ろで呼びかけには答える様子は無い
《花嫁候補の危機です、早急に救援が必要と判断します》
!?
力を使い果たし蹲ってる進の元に五月と雫の危機を告げる警告が聞こえる
「五月!?雫!?」
進は目の前で暴れるオロチとその横で声を掛けてる赤龍を無視して全速力で五月と雫の元に駆けつける
!?
進が目にしたのは背中をナイフで貫かれ地面に倒れてる五月と、その横で布津御霊を手に佇む由利、それと星奈に背後から拘束され暴れてる雫の姿だった
「星奈さん!?由利さん!?これは・・・一体・・」
「きゃははははは」
その時火口全体に、聞き覚えのある女の笑い声が響き渡る
「こ、この声は!?ザビーネ!?」
「あらあら、覚えていてくれて嬉しいわぁぁぁふふふ」
目の前に黒い空間の歪みが現れその中から魔族の女ザビーネが不敵な笑みを浮かべ現れる・・・・
「それにしても、まさかまさかオロチを倒してしまうなんて、私の想像を超えてるんだけどぉ~凄いじゃない!フフフ本当に私の物にしちゃいたいかも」
悪戯ぽく笑うザビーネに気が狂いそうな程の怒りが沸き上がり
「ふざけるなぁ!!全部お前の仕組んだ事なのか!!」
「ふふ、意外とお頭が弱くて助かっちゃったわぁ~そっちの星奈って女は傀儡に出来てないから催眠で操ってるだけだけど・・・・ほら」
ザビーネが指差した先にいる由利さんが左手で乱暴に上着を掴み強引に割き自身の胸元をあらわにする
「!?・・・ま、まさか・・・・・」
由利の左の乳房には、グロテスクに蠢く黒い肉腫が脈打っていた・・・・・
「ふふふ、流石に理解してくれた?これは時夜に埋め込んだのと同じ死の肉腫よこの肉腫に私がちょっと力を送ると・・・・ふふふ解るわよね?」
頭の中に黒原邸の地下で肉腫が破裂して絶命した時夜さんの事が蘇る・・・・
「由利さんから肉腫を取り除け!!」
「ぷっ馬鹿じゃないぃ~そんな事言われて、「はい解りました」って言う訳ないじゃん~アハハハハ馬鹿なのぉ~ぎゃはははは」
「・・・・・・・何が望みだ・・・」
俺の言葉に驚いた顔をしたが直ぐに不敵な笑みを向ける
「意外と物分かりが良いじゃない、そういう男嫌いじゃないわぁ~貴方本当に私の新しい旦那にしてあげるわよ?」
自分の胸元はだけ俺に豊満なバストを見せる
「・・・・・・・・」
「あら、つまないわね~まぁ良いわ私の望みはオロチの血よ」
「血?」
「そう、竜族の血が必要なの、あ、理由は聞かれても答えないわ」
「・・・・・・解った・・・オロチの血を取ってくれば良いんだな・・・・」
「ふふふ、本当に良い男ね・・・ほら」
魔族の女は俺に向って透明な瓶を投げてきた・・・俺はそれを受け取る
「これにオロチの血を入れてくれば・・・・」
「はいはい解ってるって・・・早くお願いねぇ~」
胸元で小さく手を振りながら悪戯ぽく笑うザビーネを睨み付ける・・・
「まってろ・・・直ぐに取ってくる・・・」
チラッと雫と五月の方をみると五月は苦しそうだが笑っている様にみえる、雫も目だけで俺に訴えかける・・・
『五月大丈夫か?』
『大丈夫な訳ないでしょ・・いてて・・でも不完全だけど雫のスキルで出血は止まってるわ』
『雫は星奈さんの状態異常を解除できないか?』
『口に出さずに詠唱できるか解らないけどやってみる』
『頼む・・・・俺はオロチと対話してみる・・・』
『話の通じる相手なの?』
『解らない・・・だがこのままオロチの血をザビーネに渡しても無事に皆を開放してくれる保障は無い』
『ザビーネよりは話が出来ると思いたい』
『・・・すすむんに任せるわ、こっちはこっちで出来る事をする』
『ああ、二人とも・・・・頼むぞ絶対に無事でいてくれ!』
『あたりまえよ』『すすむんの子供を最低6人は産む約束だからね』
『ふふそうだな・・・いってくる』
五月と雫との念話を終わり急ぎオロチの元に駆けよるとオロチは赤龍の必死の呼びかけで多少落着きを取り戻していた
「オロチよ・・・・俺の声が聞こえるか?」
『ぐぅぅぅぅぅ』
「お前と話がしたい」
《竜王オロチに既定値のダメージを与えました、テイム出来ます、テイムしますか?》