〇富士山山頂 火口
『お待ちください』
オロチと赤龍の姿が激しく輝く
「!?なっ・・何をする気だ!?」
光が収まると中から筋肉質な中年の男性と少女が姿を現す
「主様、この私もお連れください」
「・・・私も父上についていきます・・・」
目の前に現れたのは、昔の武士の様な袴姿に短く刈り込んだ白髪と鋭い眼光、四角顔の強面で2メートルはあろうかと言う筋肉質の巨漢の中年男性と
同じく和装の巫女服を身に纏ったピンク色のミドルヘアの髪の毛に大きくつぶらな愛らしい瞳、そして雫にも負けない大きな胸元
しかし・・・二人には人族とは明らかに違うキリンの様な角が頭から覗いていた
「オロチと紅か!?」
「流石に竜の姿のまま奥方の元へは行けませんので」
「・・・・・・」
ちょっと理解が追いつかないが・・・今は時間が無い、無理やり自分を納得させる事にして二人にも一緒に来てもらう事にした
「分かった・・・一緒についてきてくれ」
「御意」
「早く行きましょう」
二人を連れ全力で五月達の元に戻る、その道中で今の状況を二人に説明する
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
「だから、オロチの血が必要だったんだよ」
「そうでしたか・・・魔族が・・私の封印を解除したのが魔族だというのですね・・これはキナ臭いですね・・」
「我等の神聖な竜の血を・・・魔族は一体何をする気なのでしょう・・何か思い当たる事は御座いますか?父上」
「・・・・・ミレーネ・・・」
「!?父上!?まさか」
「?ミレーネというのは?」
しかし、それをオロチに聞く前に俺たちは五月達の元に到着する
下手に此方の戦力が増えたと誤解してザビーネが暴走したら助かる物も助からない
ザビーネを刺激しない様にオロチと紅には気配を消したままで崖の下に待機してもらう事にした
崖をよじ登り再びザビーネの前に立つ、相変わらず五月と雫は拘束されたままだ・・・
『五月、傷の方は平気か?』
『ええ何とか痛みを制御してる、何時でも呪文は使えるわ』
『もう暫く倒れたふりをしておいてくれ、雫はどうだ?』
『口に出さずに詠唱するのは今の私には難しそう・・・』
『わかった、今から思念で作戦を伝える・・・』
『・・・・・・・・・・』『・・・・・・・・・』『・・・・・・・・・』
『タイミングが大事だ・・・作戦開始!』
「待たせたな・・・皆無事だろうな・・」
「ふふふ随分と時間が掛かったのねぇ~危うく二人とも殺しちゃう所だったわぁ~♡・・・・で、オロチの血は採取出来たかしら?」
俺は懐からオロチの青紫の血の入った瓶を取り出しザビーネに見せる
「良いわね・・・それじゃそれをこっちに渡してくれるかしら?」
ザビーネは手を俺の方へむけクイクイと瓶を要求してきた
「その前に二人を開放してもらおうか」
「ふふふ、その手には乗らないわ貴方たちを全員解放して反撃されたら私も只じゃ済まないからね、貴方に要求する権利は無いの?分かる?」
ザビーネが由利さんの方をチラッと見ると由利さんは再び胸元を大きくはだけ豊満な乳房に黒く蠢く肉腫を俺に見せる
「くっ・・判った・・・では・・・」
おれはゆっくりとザビーネの元に歩いて向かう・・・・が、途中で止まり地面に瓶を置き元の位置まで戻る
「・・・なんの真似なの?」
怪しむザビーネに両手を上げお道化て見せる
「お前の近くに罠でもあるんじゃないかと疑ってるんだよ・・・俺はここから動かない・・・」
疑いの眼差しを向けながらもザビーネはゆっくり警戒しながら瓶に向って歩みだした
「由利、何かおかしな動きをしたらその刀で小娘を刺殺しなさい」
由利は虚ろな目のままザビーネの命令で布津御霊を両手に構え五月の背中に剣先を向け待機する
由利が命令に従い五月に照準を定め刀を構える姿を横目で確認すると、俺に向って余裕の笑みを見せ瓶の元へ到着する
「何か企んでいたのだろうけど、ざぁ~んねぇ~ん」
ザビーネは優雅な所作で床に置いてる瓶を手にして目の前に掲げ恍惚の表情をする・・・
「いまだぁぁぁぁ!!」
俺の号令が富士の火口に響き渡る