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第101話 竜族の血

〇富士山山頂  火口



オロチは俺の前を遮る様に立ってザビーネの方を見て酷く動揺していた


「ミ、ミレーネ・・」


「!?父上?そ、そんなまさか!?」


「・・・・・・・・・・・」


オロチは紅の問いに答える事なくザビーネを見つめ固まっている


「そんな・・・まさか、あの魔族が私の母上・・・・」


「!?」


紅の言葉に驚く・・・だって紅母親・・オロチの奥さんは35年前の富士防衛戦で・・・・


「くっっ・・・私の事を妹と見間違えてるのね・・・ミレーネは私の妹」


「!?ミ、ミレーネの姉だと言うのか?!・・いや確かに面影が似ている・・・こんな事が・・・」


明らかに動揺して周りが見えてないオロチ、自分の母親の姉・・つまり叔母だというザビーネを食い入る様に見つめる紅


「オロチ!紅!ダメだ飲まれるな、そいつは言葉巧みに相手の心を操る魔族の女だ!」


「!?っあ、主・・・しかし・・」


(ダメだ完全に主導権はザビーネが握ってる・・・なんとか冷静を取り戻さねば・・)


『雫、五月・・・いざとなれば俺たちだけでザビーネを討つ』


『ええ、分かったわすすむん』『私の方も行ける』


ザビーネの身体も時間と共に治癒が進んで修復される・・・このままでは・・・


「ふふ、オロチを従えるなんて想定外も想定外貴方本当に人間?あり得な過ぎて呆れてくるわ・・・でも私もこのままじゃ危ないわね・・・オロチの血の入った瓶も割れてしまった・・・」


ザビーネは割れて底が無くなった瓶を左手で持ち上げ苦々しい顔で放り投げる


「仕方ないわ・・・此れは最後まで取って置きたかったんだけど・・・でもあの方もお許し下さるはず」


「!?何をする気だ?」


「フフフ・・さぁ~て何でしょう~」


ザビーネはボロボロになった左腕を伸ばすとその先に黒い渦の空間が現れザビ―ネの手が吸い込まれる


ザビーネが手を引き抜くとその手には赤紫の液体が入った注射器が握られていた


「では、実験の開始よぉぉ魔族に竜族の血を混ぜるとどうなるか!実験体は私の身体、しっかりとその目に焼き付けなさい!!」


狂った様に叫び出したザビーネは自分の喉元に注射器を刺すと躊躇(ためら)う事無く中の液体を注入する


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


ザビーネは喉を押さえながら苦しみ出し地面を転がり回る


「こ、これは・・・・あのザビーネとか名乗った魔族の女・・・今竜、族の血と言ったか?」


未だに混乱から立ち直れないオロチは地面を転げまわるザビーネを唯々眺めるしか無かった


「!?っくっ胸がっ!?」


「紅!?」


急に胸を押さえ苦しみ出す紅にオロチも気が付き俺たちと共に駆け付寄る


「雫、治療を頼めるか」


「ええ任せて」


「我求めるは万物の癒し神秘の光を我にハイ・ヒール」


紅の身体を白い光が包込む・・・・が


「がはっ!くぅぅぅぅ」


「治癒が効かない!?くっ【龍の息吹(全体回復)】」


俺のスキルで回復を試すが


「くっがはっ!ごほっくっっ」


治癒が全く効かない・・・・何か外傷ではない物に苦しんでいる様だ・・・


「まさか!?」


俺はザビーネの方を見ると、紅の苦しみ方と同じだ・・・・何がどうなってる・・・


その時・・・・


「「「!?」」」


「何だこの気配!?」


突然近くに背筋が寒くなる様な程の強い殺気と気配を感じた、その場にいた全員が同じ感覚になっているのだろう・・・オロチですら気配に飲まれてるみたいだ


「ん?ザビーネ?」


そう言えばさっきまで苦しみのたうち回っていたザビーネが急に静かに・・・・!?居ない


「え?何処に?!」


全員が周囲を見渡す・・・・・と


「う、上よ!」


全員の視線が上空に向く・・・すると蝙蝠の様な羽を拡げた人影が上空で羽ばたいていた・・・


「あ、あれ・・・ザビーネ?なの・・・?」


すると上空の人影から声が聞こえる


「クククク・・・あぁ~ハハハハハ、最高よ最高!この体、もう最高!!」


「その声はやはりザビーネか!?」


「・・・・・気安く名前を呼ぶんじゃない・・・ゴミクズが・・・私は神に匹敵する力を得たの・・惨めに地面にひれ伏すが良い」


!?


ザビーネの声と共に物凄い圧力が上空から押し寄せ俺たちは地面に押し付けられる


「ぐぅぅぅぅぅ!!何だこれは、空気が鉛の様に重いぃぃぃ」


「やだぁぁぁ潰れるぅ」


「くっ・・・このプレッシャー・・・竜王である我をも押しつぶす程の・・・あり得ない・・・化け物」


地面で潰れたカエルの様に打つ伏せる俺たちをあざ笑いながら、ザビーネがゆっくりと地面に降り立つ・・・



「さぁ神を崇めなさい・・・ゴミクズ共」















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