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第102話 血と命を燃やせ


〇富士山山頂  火口



ザビーネの声と共に物凄い圧力が上空から押し寄せ俺たちは地面に押し付けられる


「ぐぅぅぅぅぅ!!何だこれは、空気が鉛の様に重いぃぃぃ」


「やだぁぁぁ潰れるぅ」


「くっ・・・このプレッシャー・・・竜王である我をも押しつぶす程の・・・あり得ない・・・化け物」


地面で潰れたカエルの様に打つ伏せる俺たちをあざ笑いながら、ザビーネがゆっくりと地面に降り立つ・・・



「さぁ神を崇めなさい・・・ゴミクズ共」


「あ、あれが・・・魔族・・・・」


「ク、クククク・・・・ア――――ハハハッ」


五月と雫・・・俺はザビーネの姿を見て驚愕する・・・・


美しい容姿や男を虜にする魅惑のスタイルは以前のザビーネのままだが・・・その身体の様相は大きく変わってしまっていた


蝙蝠の様な大きな翼、浅黒くなった皮膚、肘から腕にかけてそして膝から脛(すね)にかけての爬虫類の様な鱗、真っ白に変色した長い髪、黒い目に黄色い水晶体、そして羊の様な鋭い角


「そ、その姿・・・一体何が・・・」


「愚かなる愚者共にも分かるかしらぁこの素晴らしい肉体、全く素晴らしいわ~流石竜族の血の力、以前とは、桁違いの力だわ~」


「りゅ、竜族の血だと!?」


ザビーネの言葉にオロチが威圧に抗い片膝をつきながら起き上がる、俺も何とか理力を駆使して立ち上がった


「フフフ、哀れねぇ~竜王ともあろう者が、そこの童貞坊やの下僕に成り下がって、妹のミレーネ があの世で嘆いてるわよ~まぁ馬鹿な妹もこうして私に竜族の血を提供してくれたと思ったら少しは役に立ったのかもね~」


「!?なっ、ど、どういう意味だ!?」


妻の名前が出て、酷く動揺するオロチ


「ち、父上・・・あの力・・あの魔族の身体から感じる力・・・あれは・・・」


紅が垂れ込んだままオロチの方へ手を伸ばし訴える


「あれは・・・私の血の力・・・」


「なっ!?ど、どういう事だ!?」


混乱するオロチと俺、その背後でようやく五月と雫もザビーネからの威圧から脱する


「もしかして、貴方がオロチの奥さんであるミレーネさんと紅の誘拐を首謀した真犯人なんじゃないの?」


五月に肩を借りながら立ち上がる雫は鋭くザビーネを睨みつけながら自分の確信めいた見解を語る


「!?お、奥方!?」


「フフフフ、お頭が虫けら並みのゴミ連中ばかりだと思って居たけど、少しは頭の中身が詰まってるゴミ虫も居るのねぇ~」


ザビーネの黒い眼が動き黄色い水晶体が怪しく雫を見つめる


「ほぼ、そこのお嬢ちゃんの言う通りね」


「なっ!?お前は実の妹であるミレーネと姪である紅をその手に掛けたのか!?」


憤怒の表情にその巨漢の身体に竜族の鱗が浮かび上がり、その目が蛇眼に変わっていく


「妹?家族?アハハハハ~くだらない、そんな物が何になんの?たかが同じ雄と雌から生まれただけの所詮は他人よ、愛情?信頼?そんなものは只のまやかし」


「なっ!?ザビーネ!!」


「熱くならないでよ、鬱陶しい・・・童貞の馬鹿男が気安く名前を呼ぶんじゃないのよ!」


「馬鹿な妹に、姪に渡したいものを両親から預かったから会いたいって連絡したら罠だとも知らずにノコノコやってきたわ、本当に馬鹿、クククク」


「は、母上を馬鹿にするな!!」


紅もオロチの傍でザビ―ネに対する怒りに震えながら反論する・・・・


「人間を操って、ミレーネを拘束し姪である貴方の血を採取したのよ~まぁ当然ミレーネは抵抗したけど、所詮あの子は魔族の落ちこぼれ、司令級の私に敵うはずもないのにね、アハハ」


「自分の身体に竜の血を取り込むは言わば賭けだったけど、半分私と同じ因子を持つ姪っ子の血は私の身体に適応したみたいね、使えない落ちこぼれの妹もこんな貴重な道具を生んでくれた事、初めて感謝したい気持ち、キャハハハ」


「お、お前は・・・何処まで命の尊厳を踏みにじれば・・・」


嫌悪と憎悪が体の中からこみ上げる・・・・が


「き、貴様・・・貴様がミレーネと紅を・・・・殺す・・・滅する・・・」


俺の怒気をさらに上回る凄まじい怒気が、赤いオーラなのか湯気なのかその身体から溢れ出す


「ち、父上!?それ以上は!!きゃっ!」


オロチを止めようと紅が駆け寄るが・・・・・オロチの放つ赤いオーラに弾き飛ばされる


そしてオロチの身体が人のそれとも竜のそれとも違う何かに変化する・・・・


オロチは体の大きさこそ4メートル程だが、そのシルエットが異形・・・・足と胴体は人間の様ではあるが、その腕は4本有りその腕は手の形をしておらず、蛇の頭だった・・・そして肩からは4つの首が長く伸びその先端もやはり蛇の頭だった・・・・


「オ、オロチ!?あの姿は!?」


吹き飛ばされた紅の元に駆けより抱き起しながら、すっかり異形の化け物と化したオロチに視線は釘付けになる・・・


「あ、れは・・・竜族の超進化・・・自らの血液と命を燃やしてようやく到達する領域・・・零竜化(ノア・ドラゲード)」


「ノア・ドラゲード・・・」


「ピュ―――、これはこれは・・・竜王が自らの寿命を削って限界を超え私と同じ域まで到達するか」


ザビーネは、この状況を待っていたかの様な余裕すら感じる・・・





「さぁ!竜の王オロチよ、貴方のノア・ドラゲードと私の魔竜人(デモ・パンデモニウム)と、どちらが上か・・・これは見ものだわぁぁ!!」













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