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第63話 試作……発電機??

「こ、この通りに作れば、い、いいんだな」


 ファラデー爺さんはオレの書いた設計図のラフを見て発電機の形を理解してくれた。


 電気を生み出す事が出来れば磁力を作り出す事は簡単だ。

 だが、最初に磁力を作り出すのは電気が無いと難しい。

 だから、オレはこの辺りで鉄にくっつく石があるかどうかを調べ、天然の磁石を見つけた。

 あまり磁力は強いとは言えないが、これで最初の電力を作り出す事が出来れば、それを元に電流を流す事で鉄さえあれば磁石は簡単に作れるようになる。


 幸いこの付近には天然磁石があったようで、オレはそれを取り出し、ファラデー爺さんに手渡した。


 ファラデー爺さんは天然磁石を削り、細い棒状にした上で、鉄の小さな板にワイヤーを何重にも巻いたコイルを二つ作り、それを合わせる事で簡易式発電機を作りだしてくれた。


 流石は元魔技師というべきか、オレはそこまで器用ではないので作れないような発電機をファラデー爺さんは手回し式ハンドルできちんと作ってくれた。

 まあ昔日本で平賀源内の作ったエレキテルみたいなもんだな。


「ま、回してみるぞっ」

「お願いします」


 ファラデー爺さんは手回し式の発電機をグルグルと回転させ始めた。

 すると、電磁石とコイルが反応し、電流がその場に生まれた、成功だ!

 発電機からはバチバチッって音と火花が発生した。


 だが、この電気を作った後、きちんと何かに流さないと、ただの電気の実験だけで終わってしまう。

 そこでオレは小さなガラス瓶の中に鉄を通し、導線と簡易式のソケットのような蓋を作りそこにサトウタケの繊維を使ったフィラメントを使い、簡易式の電球を作った。

 まあ、竹を使って明るくするフィラメントを作るのは実際に地球の発明王エジソンが見つけ出した方法だ。

 彼はその技術で発明王と呼ばれるようになったくらい、地球人なら子供でも聞いた事のあるような話だ、まあ……日本人なら、かもしれないけど。


 この竹のフィラメントはそれほど長持ちしないが、サトウタケの繊維なら腐るほどあるのでいくらでも調達可能だ。


「こ、これは……あ、明るい光、こ、こんな物が作れるなんて」


 ファラデー爺さんは電灯を使えばここが夜も明るく照らせる事に驚いていた。


 これを使う事でオレ達は魔鉱石ランプに電流を通し、電灯を作る事に成功した。

 電灯は銅線を使った電線により、宿舎とサトウタケ精製プラント、そしてパナマさんの屋敷に張り巡らされ、これで夕方や夜の暗い時間も快適に過ごせるようになった。


 だがこれはオレの実験に過ぎない、超大型の発電機を使う事で、潮力発電の最初の動力とし、これで海水をゴッツン湖に流し込む超大型アルキメディアンスクリューポンプを完成させるのが電気を作り出す本当の目的だ。


 だが、ファラデー爺さんのおかげで発電機を回す事で電気を作るのは可能だと分かった。

 後はここで電流を使って巨大磁石を作り出すだけだ。

 この巨大磁石が大型発電機を回す為のメインになるので、これさえ作って回す事が出来れば、大型発電機によって生み出された電力で超巨大ポンプが動くようになる。


 そこまで出来ればこの動力を使う事でポンプを回すのと、閘門の開け閉めも電力で作り出せるようになるワケだ。

 幸い巨大な物体を設置するのはコンゴウや他のコンクリートゴーレムのおかげでそれほど苦労せずに進める事が出来そうだ。


 ――だが、そうは上手く行かないのが常である。


 コンゴウ達のおかげでオレはどうにか大型発電機を作る事に成功した。

 そして、駆動実験を始めようとしたのだが……電源を入れても発電機は動かなかった。


 何故だ!? システムはきちんと完成していて、これで動き出すはずだったのに……。

 だが、コンゴウが軽く叩いても、コンクリートゴーレムが手動でコイルを回しても、発電機は結局動かなかった。


 どうしよう、このままこの発電機が動かなければ、海水を吸い上げるポンプは使えず、大型水路はゴッツン湖に水の溜まっている雨季限定の物になってしまう。

 それだとイニシアチブ的にスエズに負けてしまい、結局ここは使われないまま廃棄という流れすら作られかねない。


 だが、どう動かそうとしても発電機は全く稼働しない。

 これはもうあきらめるしかないのだろうか……。


 電気は間違いなく発生している、だが……その力が弱すぎて巨大なコイルを回転させるだけの力にならないという事だ。

 試しに巨大ハンドルを使ってコンゴウにそれを回転させると、その一瞬は凄い速度で回転し、電気を作り出して海水を吸い上げるポンプは動き出した。


 しかし、この作業をずっとコンゴウにやらせ続ける事は出来ない、どうにかして発電機の大型コイルを回せるだけの電力を作り出せないと、この水路計画は頓挫してしまう。


「あらあら、どうしたのかしらね、みんなで暗い顔しちゃって」

「その声は! ベクデルさんか」

「そうよ、アンタ達が何か困ってるみたいだったからね、気になって見に来たのよね。ところでその後ろのデッカイ変なモノは何かしらね?」


 そうだ、水を自由自在に操れる魔王ベクデルならこの発電機を回転させる事も出来るかもしれない。


「ベクデルさん、この発電機を回す事は出来ますか?」

「ハツデンキってこれ? まあ、出来ない事も無いかしらね」


 やはりベクデルは水の魔王を名乗るだけにそれだけの力をもっているのか。


「それじゃあ、ちょっとやってみるわね……って、アバババババババッ!?」


 あーあ、水の魔王が感電してしまった。


「な、何なのかしらね!? コレって!!」

「これは……発電機、簡単に言えば雷を作り出す機械です」

「それってアタシと一番相性が悪い奴じゃない。こんなのアタシにはお手上げだからね!」


 やはり、水と雷は相性が最悪だったようで、ベクデルの力ではこの発電機を回すのは無理みたいだ。


「でも、彼なら力を貸してくれるかもしれないわね」

「彼……とは誰ですか?」

「ネクステラ、雷の魔王ネクステラって知ってるかしら」


 ネクステラ、それは確かコンゴウの話に出て来た雷の魔王の名前だ。


「そうそう、ネクステラちゃんだけど、最近会った時にアンタの事を話したら、結構興味持っちゃってね、それでアタシにアンタと会わせろって何度も催促してくるのよね」


 何だって、雷の魔王がオレに会いたいって言っているのか。

 待てよ、雷の魔王って事は、電気を作り出す事も出来るのではないのだろうか。


「オレに会いたいって、それはネクステラが言っていたのか?」

「そうね、どうやらアンタに相談したい事があるらしいのよね」


 魔王自らがオレに相談したい事? それはいったい何なのだろうか。

 まあいい、渡りに船かもしれない。

 ここは一度、その雷の魔王ネクステラに会って話をした方が良いかもしれない。


「わかった、それじゃあそのネクステラに会わせてくれないか」

「わかったわ、そうね……とりあえずアタシの力でちょっと移動するから、動いちゃダメだからね」

「えっ!?」


 オレは水の球の中に閉じ込められ、ベクデルの魔法によって一瞬でどこかに飛ばされてしまった。


「な、こ……ここはどこだ!?」

「ここはネクステラちゃんのお城、暴れたら落ちちゃうからね」

「あわわわわわ、ちょ、ちょっと待ってくれぇー!」


 何ともメチャクチャだ。

 オレはいきなり水の魔王ベクデルによってここがどこかもわからないような城の前に来てしまったらしい。


 城の中からは激しい雷の落ちる音が聞こえる。

 マジでオレ……ここから生きて帰れるのだろうか?


「さあ、ネクステラちゃんに会いに行くからね、あまり失礼のないようにするのね」


 オレは、なし崩し的に雷の魔王ネクステラに会う事になってしまった……。


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