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第77話 テーマ……パーク??

 これでこの世界でもスリルの為に人間が金や時間を惜しまないってのが確証になった。

 さあ、それじゃあネクステラに計画を説明しつつ、絶叫マシンや他の遊具を作って大型遊園地を建設出来るようにしよう。


「トーデンさん、カンデンさん、聞こえてるんでしょう、オレ達をネクステラ様の所に連れて行ってくれませんか?」

「そんな大きな声を出さなくても聞こえていますよ。承知致しました、少々お待ちください」


 トーデンはオレ達を何かの魔法の膜で包み込み、瞬時に移動させた。

 そしてオレ達が到着したのは、何度か来た事のある雷の魔王ネクステラの城の大扉前だった。


「こ、ここはいったいどこっ?」

「何だか……ものすごくピリピリした空気を感じるのだ」

「まさか、ここは魔王城!? そうなのであるな!」


 まあオレは以前に水の魔王ベクデルに連れてこられたので、ここに来るのは三回目だが、他のカシマールやモッカ、フォルンマイヤーさん達は初めてだ。

 しかし、一緒について来たパナマさんは怯える事も無く、至って冷静だ。

 コレが本来の貴族のあり方なのかなと思う程、彼女は毅然とした態度で品良くその場に立っていた。


「さあ、ネクステラ様がお待ちです。どうぞ中にお入り下さいませ」


 バリバリバリッ!!


 オレ達が雷の魔王ネクステラの部屋に入ると、いきなり雷撃が飛んできた。


「なっ!! いきなり攻撃とは、卑怯である!!」

「違いますよ、フォルンマイヤーさん」

「何が違うのであるか、部屋に入った瞬間にいきなり攻撃を仕掛けてくる相手に卑怯と言って何が悪いのであるか!!」


 最近フォルンマイヤーさんの機嫌が悪いようだが、それが尚更に今回いきなりの雷撃で爆発しそうになっている。

 ここはきちんと説明しないと、面倒くさいことになりそうだな。


「コバヤシ、儂はお前を呼んだが他の者は呼んだ覚えはないのじゃがな」

「ネクステラ様、彼女達はオレの仲間です。同席をお許しいただけますでしょうか」


 今にも剣で斬りかかりそうなフォルンマイヤーさんを抑え、オレは雷の魔王ネクステラと対峙した。


「ふむ、コバヤシ。お前のおかげで儂の魔力もかなり調子が良くなってきたようじゃ、感謝するぞ」


 椅子に座っていた雷の魔王ネクステラは髭がダンディなイケオジといった風貌だった。

 コレが本来の雷の魔王の姿なのだろうか。


「ネクステラ様、トーデンさん、カンデンさんにはお伝えしましたが……」

「よい、報告は聞いておる。しかし、まさか本当に人間が自ら恐怖を喜んで味わいたいと思うとは不思議なモノじゃな。しかしこの恐怖の感情、確かに本来のモノとは違うが儂の活力になるのは確認させてもらったわい」


 どうやら雷の魔王ネクステラは、部下であるトーデン、カンデン達からオレが廃坑とトロッコを使ってジェットコースターを試作したのを聞いたようだな。

 その上で彼の求める人間の恐怖の感情は伝わったようだ。


 以前会った時には少年、青年の姿だった雷の魔王ネクステラは、魔力の暴発が落ち着いて来た事で、本来の自分の姿に戻ったといったところか。


「しかしコバヤシよ。お前は儂の依頼を完遂したとはいえんのう、まだ儂の求める人間の恐怖の量には遠く及ばぬ、この姿は調子のいい一時だけで、気を抜けばまたこのように姿が戻ってしまうのでな」


 そう言うと雷の魔王ネクステラは放電しながら少年の姿に変わってしまった。


「うーむ、気を抜けばすぐにこうじゃ、コバヤシ、出来るだけ早く儂の為に人間の恐怖の感情を集めるがよい」

「ちょっと待つのである! コバヤシ、お前は最近いったい何をしていたのであるか? まさか、この雷の魔王の手下になって人間を苦しめる為にあんなものを作ったのであるか!!」


 あーあ、フォルンマイヤーさんが完全に誤解している。

 これはきちんと説明をしないといけないな。


「フォルンマイヤーさん、少し落ち着いてください。オレの話を聞いてください」

「問答無用である! この裏切り者、私はお前を見損なったのである!!」

「だーかーらー、話を聞いてくださいって!!」


 この拗らせた状態を止めてくれたのはパナマさんだった。


「ファンタ、少し落ち着いてください。コバヤシ様が意味もなく人間を裏切るとは思えませんわ、ここは少し冷静になってくださいませ」

「う、わ……わかったのである。コバヤシ、どういう事か詳しく説明するのである!」


 パナマさんのおかげでフォルンマイヤーさんは冷静さを取り戻したようだ。

 やはりパナマさんは貴族としての気概がある方のようだな、彼女が止めてくれなかったらフォルンマイヤーさんが何をしたか、まるで想像がつかない。


「わかりました。ネクステラ様、今までの経緯を彼女達にお話ししてもよろしいですか?」

「うむ、お前に任せるのじゃ」

「ありがとうございます」


 そしてオレは、カシマール、モッカ、フォルンマイヤーさん、パナマさんに、オレがどうして雷の魔王ネクステラと面識があるのかとかを説明した。

 つまり、水の魔王ベクデルの紹介で雷の魔王ネクステラに会わせてもらったオレは、ファラデー爺さんの作った大型発電機の初動の為に雷の魔王ネクステラの力を借りた。


 そして今度はそのネクステラが魔力の暴発で頭を悩ませていたのでそれを解消する為に避雷針を作ったり、玉座を高い位置に置いてアースをつけたりした事でいったん解決したが、それは一時的なものでしかなかったので、その根本解決の方法として人間の恐怖を集める機械を作るという依頼を受けたという話もした。


「それで……私をあんな怖い目に遭わせたという事であったのか! コバヤシ、私はもう怒ったのである!!」

「だ、だからフォルンマイヤーさんはもう乗せませんって……」

「モッカはたのしかったぞっ」

「ボクも……悪くなかった、少し怖かったけど……」


 どうやらフォルンマイヤーさん以外はオレのやろうとした事に好意的みたいだな。


 まあ、フォルンマイヤーさんが絶叫系マシンの全くダメなタイプの人だったのは分からなかったのでこれも仕方ない。

 馬や空飛ぶ魔物には乗れたのに……あのトロッコのジェットコースターでダメなら、他の絶叫マシンも全部ダメだろうな。

 あ、そういえば先日、ニッコとニックという双子に空飛ぶ魔獣で運んでもらった時、フォルンマイヤーさんは少し涙目になっていたかもしれない。


 そうか、フォルンマイヤーさんは高い場所での高スピードが苦手なんだな。

 これは意外な一面が知れたのだが、だからと言ってそれを悪用するわけではないからまあ良いか。


「とにかく私は今回の話からは抜けさせてもらうのである! 早く元の場所に帰してほしいのであるっ!!」

「まあ待て、帰してやるから少し落ち着くのじゃ。焦っても良い事は無いぞ」

「私はこんな話に付き合わされたくはないのであるっ!!」


 あーあ、フォルンマイヤーさんが今までにないくらい不機嫌になってしまっているな。

 だがここで彼女を元の場所に帰すにしても、先に雷の魔王ネクステラとの話をつけてからでないとここから生きて帰れる保証はないんだよな。


 とにかく早く話を進めないと、そうでないとフォルンマイヤーさんを元の場所に帰すどころか、今後の計画も滅茶苦茶になってしまう。


「とにかく落ち着いてください、今からオレのやろうとする事を説明しますから。オレは雷の魔王ネクステラ様の依頼を誰も傷つけず、苦しませずに完遂する予定なんです、それはテーマパークの建設で実現できるんです」

「「「テーマパーク??」」」


 うーむ、どうやらテーマパーク、この言葉の意味がまだいまいちみんなには伝わっていないようだな。


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