古代文明の最強破壊兵器として作られたはずのコンゴウは、今数匹の動物達に乗られ、その上で遊ばれていた。
コンゴウとしても、動物達に上に乗られているのは嫌な感じではなさそうだ、もう少しそのままにしておいてやろう。
その間にオレはパナマさんと話をし、この廃坑のトロッココースターを格安で領地の人達が遊べる施設として使えるようにした。
すると連日長蛇の列が出来るようになったので、この絶叫マシンを使う計画は成功すると確信できた。
うーむ、しかしジェットコースターだけというのもなんだか物足りないな、それならもう少し何かこの辺りに作ってもいいかもしれない。
オレはこの近くに火山があるかどうかをパナマさんに尋ねた。
すると、パナマさんはこの領地の近くに今は休眠状態の火山が存在した事を教えてくれた。
よし、オレの思ったとおりだ。
これならここに温泉施設を作れるかもしれない。
ここを温泉施設にし、そしてトロッココースターに乗れるようにすればちょっとした保養施設として使えるだろう。
建物は鉱山の時の飯場があるだろうから、それを少し改修すれば使えるかな。
これで建物の問題は解決として、その前に温泉を掘り当てないと。
だが穴を掘るにしても以前のようにサンドゴーレムを使うという事は出来なそうなので、ここはコンゴウのあの特大光線を使ってもらうのが良いかな。
コンゴウの上で遊んでいた動物達は、餌を捜すために離れたようだ、今ならコンゴウにオレが命令を出しても周りに危険は及ばないだろう。
「コンゴウ、頼む、力を貸してくれ」
「グゴゴゴ……」
オレはコンゴウの巨大レーザーを使い、地面が掘れないかと考えた。
あの古代文明の技術で作られた高出力レーザーなら、掘削せずとも地下数百メートルを掘る事は可能だろう。
そしてもし温泉を掘り当てる事が出来たなら、そこはあのアルキメディアンスクリューポンプを使ってお湯を汲み出せば良いはずだ。
「コンゴウ、この地下を掘ってくれ、どうやらここの地下に温泉の水脈があるみたいなんだ」
「グゴゴゴ……ゴ!!」
コンゴウはオレの指示通り、温泉の水脈のあると思われる地下深くまでレーザーを発射し、地面を貫通させてくれた。
コレがオレの予想どおりなら、この穴から一気にお湯が噴き出してくるはず、さあ、どうかお湯よ出てくれ!!
ゴボボ……ゴポッ……ブシャアアアアアッッ!!
成功だ!! コンゴウが高出力レーザーで掘り当てた地下からは、勢い良くお湯が噴き出してきた。
この熱さはそのままではとても人間が入れるものでは無いが、コレは間違いなく温泉だ。
源泉かけ流しという言葉があるが、これは源泉の温度の調節が必要な場合に人間が入れる温度にする為に加水、加温を施している場合の言い方で、場所によってあいまいな表現だともいえる。
オレが前の世界で携わった工事では温泉施設の建設というモノもあったが、これも加水、加温用のパイプ設置や源泉の熱いお湯を使ったサウナ等の設置といったものだった。
ここで出来そうな事としては、一度この源泉を冷ましてから近くの川の水と合わせて人間の入れる温度にするのが正解かもしれないな。
この温泉は、豊富な地下水脈が地底の溶岩で温められているモノなのでいきなり湯量が枯渇する事は無さそうだ。
よし、それなら保養施設を作ればここを新たな財源確保の場所に出来るな。
そういえば、以前見た漫画かアニメで古代の温泉技師が現代日本にタイムスリップしてその技術を取り入れた斬新な浴場を作るって作品があったよな……。
それを元にするだけじゃないが、ここの新たに出来た温泉地で設備を整えればかなりの集客が見込めるはず。
それをあの雷の魔王ネクステラの建設予定のテーマパークに併設すれば、一日だけではなく何日でも楽しめるような場所の新たな観光地になりそうじゃないのかな。
よし、それを踏まえた上でここで実際に温泉保養地を作る事にしよう。
雷の魔王ネクステラが部下を使っていいと言ってくれていたし、ここで実際に保養地を作れば、雷の魔王ネクステラのテーマパークを完成させるデモンストレーションにもなる。
さあ、それではトーデン、カンデンの二人を呼んでみよう。
「トーデンさん、カンデンさん、聞こえてるんでしょう、少し来てもらえますか?」
「はい、どのような御用でしょうか?」
「なんなりと、ご命令を。我々はコバヤシ様に従うようにネクステラ様からお聞きしております」
オレは魔族の兵士達を借り、温泉地の設営に取り掛かった。
とりあえず作るのは、露天風呂に屋内用の建物、それに寝たままお湯を楽しめる寝湯とサウナ、それに温水を流した滑り台といったところか。
これらの設備を作るのにはそれほどの時間はかからなかった。
なんせ、コンゴウ一体がいれば一日どころか数時間でこれらのベースは簡単に作る事が出来るからだ。
オレが魔族の兵士達に頼んだのはあくまでもコンゴウが大雑把に用意したものを細かく整えていく作業だった。
最初は何をやらされているのか分からない魔族の兵士達だったが、完成が近づくとなんだかみんなテンションが上がっていったようだ。
そうだ、折角だからこの工事に携わってくれたスタッフ全員に無料でこの温泉を楽しんでもらう事にしよう。
それで実際の感想も知る事が出来る、やはり実際に体験してもらわないと設計図だけの計画ではなかなか実感できないからな。
全員の頑張りのおかげで温泉保養地は数週間で完成した。
フォルンマイヤーさんは最初オレに否定的だったが、その後態度を軟化させたのか……チラチラと工事現場に姿を現すようになった。
ひょっとして、本当は温泉が気になっているのかもしれない。
でもここ最近の絶叫マシン騒動でなかなか素直になれず、オレに対して否定的な態度を変えるわけにもいかなかったのかもな。
まあいい、どうせここが完成したらカシマール、モッカ、フォルンマイヤーさん、それにパナマさん達を呼ぶつもりだったから。
彼女達は女湯と男湯を分けているのでそちらの方に入ったようだ。
高い壁の向こう側からキャイキャイと楽しそうな声が聞こえる。
どうやらフォルンマイヤーさんの声も聞こえるが、機嫌は悪く無さそうだな。
さて、オレも一番風呂といくかな!
オレは工事に協力してくれた魔族の兵士達を連れて、温泉場に向かった。
「よし、完成だ! みんな、よく頑張ってくれたな。さあ、今日は完成記念のお祝いだ! 好きにここに入ってくれ!!」
「……?」
「ガウ……ガ?」
魔族の兵士達はオレの言っている事が最初分からないようだった。
まあ、彼等にしたら雷の魔王ネクステラの命令でオレに従っていただけだろうからな。
自分達がやっている事の意味もあまりわからなかったのだろう。
オレが服を脱いでお湯に入ると、同じようにすればいいのかと思い、魔族の兵士達も真似を始めた。
本来なら体を洗ってからと言いたいところなのだが、これは源泉かけ流しなので次々と新しいお湯が流れ込んでくるのでそれほど気にする事も無いかな。
本当なら体を洗う習慣まで教えてやりたいところだが、まだこの世界にある石鹸は貴族や富裕層の為のもので、一般化はしていない。
どこかに石油らしいものでもあればそれが簡単に作れるようになるんだが、そういう技術をオレは持ってないからな。
とにかく、温泉は完成し、実際にこれに入った魔族達は最初こそ戸惑っていたが実際の温泉でリラックスできたようだ。
さて、一度試しに温泉保養施設を作る事も出来たので、次は雷の魔王ネクステラのテーマパークでも同じように作ってみる事にしてみようか。