オレ達は、テーマパークと大型レジャー施設の運営をパナマさんとトーデン、カンデンに任せ、火の魔王エクソンの居るという南を目指した。
超巨大ゴーレムのコンゴウ、それにムコーガ、グリュック、ガリバー、マテック、ナメガの五体がオレ達を肩や手の上に乗せてくれているので、移動に体力を使う事もなく、また、凶暴なモンスターが出たとしてもSSクラスモンスターともいえる超巨大ゴーレムのコンゴウとAクラス以上とは思われる他の五体のゴーレムの前には敵はいない。
だから旅の危険という点ではほぼ安心できるのだが、問題はそこではない。
オレ達の向かっているのは火の魔王エクソンの居るという居城だ。
つまり、この先は灼熱の炎が吹き荒れる土地だと言えるだろう。
南に行けば行くほど、気温は上がっている。
フォルンマイヤーさんは普段の鎧姿で熱くないのだろうか?
モッカとカシマールもかなり暑そうだ。
カシマールは普段のトレードマークともいえる黒いフードを外し、綺麗な銀髪が熱風にたなびいている。
オレが彼女に最初に会った時は男の子と勘違いしたが、今見るとカシマールはかなりの美少女だと思う。
あの黒いフードはネクロマンサーとしての彼女のスタイルなのだろうな。
それよりもそろそろ何か水分補給でもしなければ、みんなそのまま倒れてしまいそうだ。
幸い、コンゴウや他のゴーレムはオレ達よりもよほど身体が大きいので、小さなコンテナを背中に背負ってもらい、旅の荷物はそこにしまっている感じだ。
しかもそのコンテナはオレが断熱材の代わりになる物を入れて、設計しているので、いざ休もうという時にはその中で休めば安全に休めるようになっている。
おかげでオレ達は野宿する事無く、安心快適な旅を出来ている。
だがそれでも、この熱さは異常だ!!
ゴーレム達に出来るだけ多くの水を持たせる事で、旅の途中の水不足は解消出来たのだが、それでもこの暑さで水がお湯になってしまっている。
「熱いのだ……ボクもうダメなのだー……」
「モッカも……たおれるっぅ」
「この暑さは異常なのである、コバヤシ……本当にこのまま南に進むのであるか?」
カシマール、モッカ、フォルンマイヤーさん、三人ともがもうダウン寸前だ。
まあ、オレは何だいっても、前の世界でスタッフが逃げたり欠けた場合に猛暑の炎天下で作業したり、極寒の夜の高速道路の作業をした事もあるので、それに比べればまだ耐える事が出来る。
極寒の高速道路での作業は、横をトラックが凄いスピードで通り抜けていく事もあり、吸い込まれそうになる命の危険との隣りあわせだったのでもう絶対にやりたくない仕事の一つだ。
まあオレの先輩なんて……水のほとんどない紛争地域の中東で、コンビナートや電波塔を作る仕事をやり遂げた人もいるくらいだから、このくらいで根を上げていたら仕事にならない。
それが本当の命がけの建設の仕事だったと、オレは酒の席で先輩から何度も聞いた。
当時はそれがジャパニーズビジネスマンとも言えたんだろうな。
オレ達はゴーレム達にコンテナを降ろしてもらい、その中で一晩休む事にした。
みんなもうかなりダウンしていて、食事をしようという気にもならないようだ。
「オンセン、入りたいのだ……」
「そうだな、この旅が終わったらまたあのお風呂にみんなで行きたいのである」
「モッカ……もうだめだっ。おゆはいりたいっ」
この猛暑の中、みんなが思っているのはあの温泉の事みたいだ。
まあこんな場所では水浴びすら厳しいからな……そりゃああの豊富なお湯での温泉を楽しみたいという感覚も分からないでもない。
まあ不幸中の幸いと言えば、オレ達にはゴーレムがいるので水不足にならないだけの水を用意して旅に出られたというところか。
今のオレ達でこの状態なんだから、限られた水だけで大昔に砂漠を旅していたキャラバンとかがどれだけ命がけだったのかを本当にすごいと感じるな。
何もない荒野を進み続け、オレ達は数日かけて南に向かい、灼熱の山に到着した。
どうやら聞いた話だと、ここがファイアドラゴンの住処のある場所らしい。
だがファイアドラゴンは普段は自ら巣の外に出てこないそうなので、下手に刺激を与えなければここはすんなりと通り抜け出来るだろう。
さあ、出来るだけ音を立てないようにこの山を抜けるとしよう。
――だが、運の悪い時には運の悪い事が重なるようで……。
「ギャオオオオオウウウウッッ!!」
上空からけたたましい鳴き声が聞こえて来た。
「なんだこの鳴き声は?」
「これは……ファイアドラゴン??」
「でも、ファイアドラゴンは巣からなかなか出てこないと聞いたのである。それでは何故こんな事に?」
オレ達は確かにファイアドラゴンの鳴き声を聞いた。
それは、上空から聞こえてくるので、ファイアドラゴンは巣にはいないようだ。
しかしいったいなぜ、オレ達は上空に警戒しつつ山を登った。
すると、崖の所に何かがいるのが見えた。
「あれは??」
「崖に何かが引っかかっているのである。あれはいったい何なのであるか?」
オレ達がよく見ると、そこにいたのは翼が崖の石に引っかかったまま身動きできない小さな生き物だった。
あれは、ひょっとすると!!
「コンゴウ、出来るだけ音を立てないようにあの崖の下に行ってくれ!!」
「グゴゴゴ……」
コンゴウはオレの指示通り、音を立てないように崖下の方に移動し、崖に引っかかった生き物の下に手を伸ばした。
オレはコンゴウの手の上に乗ったまま、崖の下から赤っぽい生き物を拾い上げて助けてやった。
これは……ドラゴンの赤ちゃん??
そうか、上空を飛んでいたファイアドラゴンはこのドラゴンの赤ちゃんが巣から何かのはずみで落下してしまい、それを捜して上空を飛び回っていたのか。
オレはファイアドラゴンの赤ちゃんを両手に抱え、コンゴウにゆっくりと地面に降ろしてもらった。
すると、上空からいきなりファイアドラゴンがオレ目がけて飛び掛かって来た!!
「ギャオオオオォォウ!!」
マズいっ! ひょっとしてオレがドラゴンの子供を攫おうとしていると思われたのか!?
怒り心頭のファイアドラゴンはオレ目がけ、攻撃を仕掛けて来た。
あんなのに攻撃されたらオレなんて一瞬で即死だ!!
「コンゴウ、オレを守ってくれ!!」
「グゴゴゴ!!」
コンゴウがオレの前に立ち塞がり、ファイアドラゴンの攻撃を受け止めた。
「コンゴウ、あのドラゴンを抑えてくれ、それと、殺さないように頼む!!」
「グゴグゴゴ……」
無茶な命令をしているのはわかっている。
でもあのファイアドラゴンはあくまでも自分の子供を取り戻そうとしているだけで、それは母親の本能なのだろう。
だから出来るだけアレとは戦いたくない。
だが見ているとコンゴウとファイアドラゴンの対決はまさに怪獣大決戦といったところだ。
コンゴウはオレの命令に従い、ファイアドラゴンの身体を押さえつけ、どうにか動きを止める事が出来た。
だがこれでどうやってあのファイアドラゴンを説得すればいいんだ。
「こばやし、そのこ、モッカにわたしてほしいっ」
「モッカ、君ならあのドラゴンと話が出来るのか?」
「できるっ、モッカ、ひゃくじゅうのおうのむすめ、どらごんもおおきなとかげっ」
いやいや、ドラゴンをトカゲ呼ばわりって……まあ今は頼りになるのが彼女しかいないので、モッカにやってもらうのが一番確実かな。
モッカはドラゴンの赤ちゃんを抱え、ファイアドラゴンの前に立った。
「ググガァァアア、ギャオオウゥウ!!」
「ちょっとおちついてっ、モッカのはなしをきいてっ」
そしてモッカはファイアドラゴンに向かって何かを話そうとしていた。