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第87話 燃え続ける……理由??

 火の魔王エクソンは、オレ達が地下資源を求めてここに来た事を聞いた上でダメと言っている。

 しかしいったいなぜ彼はそれほど頑なにダメと言っているのだろうか。


「エクソン様、一つよろしいですか?」

「なんだッ! まだ地下にある物の話をするなら本当に焼き殺すぞッ!!」

「いいえ、そうではありません。エクソン様はウソが嫌いだとおっしゃってましたね」

「そうだッ! その通りだッ!!」


 よし、話に乗せる事が出来たぞ、これならいけそうだ!


「それではお聞きします、人の話を聞くと言って、その後でその事を拒否するのは嘘ではないのですか?」

「!? な、なんだとッ!」

「だってそうじゃありませんか、人の話を聞くと言っておきながらその後で話の内容を全部聞かずに拒否するというのは、貴方の嫌いなウソではないのですか?」


 オレの指摘は火の魔王エクソンに突き刺さったようだ。

 彼は少し狼狽え、その場から立ち上がりオレの話を聞いている間、目が泳いでいた。


「な、何だと……た、確かにッ! 言われてみればッその通りだッ!!」


 どうやら火の魔王エクソンは、自身の行動を指摘され、自身を見つめ直してようやく自身の矛盾に気が付いたようだ。

 そして再びドッカと座り、腕を組んで目を閉じながら大きな声で宣言した。


「わかったわかったッ!! オレ様の負けだッ!! いいだろう、話を聞かせてやろうッ!!」


 そう言って火の魔王エクソンは足を組み直し、大きく息を吐いた。


「お前達は地獄の噴門を見たであろうッ! アレは最初から燃え続けていたわけではない、あそこはかつて燃える水と空気より軽い気体が取れる場所だったのだッ!!」


 やはり、あそこは石油や水素のようなモノが取れる場所だったんだな。

 でもそれならどうしてあのような炎の燃え続ける地獄の噴門のような場所になってしまったのだろうか。


「そうなんですね、よくわかりました。でも、何故そこは炎が燃え続ける場所になってしまったのでしょうか?」

「ううむ、そうだなッ! よかろうッ!! 話してやろうッ!!」


 そして火の魔王エクソンがオレ達に教えてくれたのは、ファイアドラゴンの鱗を狙った魔族が彼女を追い詰め、後の地獄の噴門と呼ばれる場所に追い込んだ話だった。


 命の危機を感じたファイアドラゴンは、口から放ったブレスで彼女を狙ってきた魔族を返り討ちにしたが、その際に採掘中の地下資源に引火してしまったらしい。

 それ以降、あの場所は地獄の噴門と呼ばれるようになり、火の魔族の眷属以外は誰も通る事が出来なくなってしまったそうだ。


「よくわかりました、あの場所の近くで作業をして再び引火して被害が増えるのを避けたいのですね」

「そういう事なので、地下の物を掘り出そうとすると、地獄の噴門からの火に引火し、また新たな地獄の噴門が出来かねんのだッ! だからオレ様はお前達の話を却下したのだッ!!」


 なるほど、確かにそれなら火の魔王エクソンが地下資源掘り出しを認めない理由もよく分かった。

 でもそれならば、その地獄の噴門の火を消す事が出来れば、オレ達の頼みを聞いてもらえるのではないのだろうか?


「エクソン様、よくわかりました。それではこういうのはどうでしょうか? オレ達があの地獄の噴門の火を消す事が出来れば、地下資源を掘り出す許可をいただけませんでしょうか。もちろん地下資源の料金はお支払いします」

「な、何だとッ!! あの地獄の噴門の火を消すというのかッ! 今までどの魔族でも、あの水の魔王ベクデルですら諦めたあの火を、お前なら消せるというのかッ!!」


 これは賭けだ、だがこの賭けに勝たなければ、オレ達の未来は無い。

 このまま雷の魔王ネクステラの力が使えないまま、魔族が手動でテーマパークの遊具を動かし続ける限りは、絶対にスタッフ達に疲労が溜まりいつか大事故が起きてしまう。

 その前に何が何でもこの火の魔王エクソンの支配地域にある地下資源を使えるようにしなくては!


「オレ様はウソが大嫌いだッ! お前はそれを本当にウソではなく本当に出来るというのだなッ!!」

「やりますっ、やってみせます!!」


 オレは言い切った、はっきり言って自信はあまり無い。

 実際、西アジアにある地獄の門を埋めようとすれば、数兆円の工事になると聞いた事がある。

 だがオレ達の挑戦する地獄の噴門は、それの数十倍のデカさの場所だ。

 しかも立地条件的にはその近くは切り立った崖や険しい山になっていて、なだらかな土地だったその場所だけが通れる場所だったのに燃え続ける石油やガスのせいで誰も通れなくなっている。


 こんな超最悪な状況で地獄の噴門を鎮火させると火の魔王エクソンに約束してしまった。

 これ下手に悪魔の契約書を作らされたら、オレはマジで追い込まれる事になってしまう。


「そうか、わかったッ! いいだろう、オレ様の部下を自由に使うがいいッ! あの地獄の噴門をもし本当に埋めて鎮火出来たなら、お前達の願いを聞いてやろうではないかッ!!」


 これで話が進展したと思いたいところではあるが、難題を押し付けられたともいえる。

 オレ達は通るだけでも大変だったあの地獄の噴門と呼ばれる超巨大火炎クレーターを鎮火させ、そこを埋める事を火の魔王エクソンに約束してしまった。


 さあ、どうやってあの巨大な猛火のクレーターを埋めていけばいいのだろうか。

 とにかく一度どう進めるかを考えなくては。


 しかし、ここは炎の魔王の居城、オレ達はここで休めと言われてもきちんと休む事が出来るのだろうか……。


「貴様ら、疲れているであろうッ! さあ、部屋を用意したから、ゆっくりと休むがよいッ!! 食事も用意させよう」


 火の魔王エクソンはオレ達を歓迎してくれるようだ、だが……ここで出される食事っていったいどんな物なんだ……オレ達は不安を感じていた。


 だが、オレ達の不安とは別に、食事は普通の物が用意されていた。

 いったいどうやって手に入れたのだろうか?


「コバヤシ様、どうぞお召し上がりください、エクソン様からのお食事です」

「わ、わかりました。でも、これはいったい……」

「ネクステラ様からお聞きしております。あの方の部下と名乗る二人がここに来て貴方がたの食事用にと食材をお渡ししてくれたのです」


 ネクステラの部下……トーデンとカンデンか?

 そうか、もし彼女達が以前にこの城に来た事があるなら、瞬間移動の魔法でここに来る事も出来るワケか。

 それでオレ達の食糧事情を考え、ここの城の人に食料を届けてくれたって事だな……。


 ――って、それって! 最初っからトーデン、カンデンの二人に頼んで瞬間移動をしてもらえばオレ達はあんな地獄の噴門を超えてくる事も無くこの城にたどり着けたって事じゃないか!!


 ……だけど、もしそれでオレ達がここに到着していたとしても、そのままでは火の魔王エクソンとの話し合いにもならなかったし、ましてや地獄の噴門を鎮火する事で地下資源を分けてもらうという話にはならなかったかもしれない。


 それに、ファイアドラゴンの赤ちゃんを助けるという流れも無かったので、下手すればテーマパークの設営地に赤ちゃんを失った暴れ狂うファイアドラゴンの母親が出没していた可能性すらあるワケだ……。


 そう考えると、遠回りで大変でもあのファイアドラゴンの住処を抜け、地獄の噴門を超えて来たのにも意味があるのかもしれないな。

 急がば回れ、途中経過で得たモノに何かしらの突破口のキッカケがある。


 さあ、今日は食事をしてゆっくり休むとしよう。

 地獄の噴門を鎮火する計画は明日またゆっくりと考えることにするか……。


 オレは久々にベッドで休む事が出来、次の日のお昼近くまで完全に寝てしまった。

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