次の日、オレ達は地獄の噴門についての話をする事にした。
「あんな怖い場所……ボク初めて見たのだ……」
「モッカ、あついのもういやだっ、みずあびしたいっ」
「私としても、鎧が着れないほど暑いというのは、防御面で考えても避けたい事なのである」
まあ全員の共通意見としては、あの地獄の噴門はあまり行きたい場所ではないという事だ。
オレも今までの工事の中で一番条件的に最悪な場所だと思っているくらいだ。
それでもあの地獄の噴門を鎮火する方法を考えなくては……。
考えられる方法としては、巨大な岩や土で上からかぶせてしまい、空気を奪って鎮火する方法。
だが、これだと火の勢いが強すぎれば上にかぶせた岩や土が火を消す前に全部解けてしまう。
だからこれは無理だ。
次の方法としては、水で火を消す方法だが、水の魔王ベクデルですら匙を投げたような場所にオレ達が何かを出来るワケがない。
だからこれも却下。
そうなると、どうにか燃えるモノを地下から奪い、炎が燃える前に資源を地面に吸い上げる事で炎の元になる可燃物が届かないようにする方法。
これなら燃えるモノを奪う事でその場所で燃え続ける事が出来なくなる。
よし、これが炎を鎮火する一番の方法だな!
この方法を使いつつ、火に強いオリハルコンで出来たコンゴウがガスや石油の噴出口である場所に巨大な岩石を次々とおいて埋めていく、これであの場所を鎮火する事が出来そうだ。
これだ! これなら火の魔王エクソンの依頼を解決しつつ、オレ達の手に入れたい可燃性の地下資源を手に入れる事が出来る。
さあ、みんなを連れて地獄の噴門に向かおう。
オレ達はトーデン、カンデンに頼んで水を用意してもらい、それを持って地獄の噴門に向かった。
地獄の噴門ではまだファイアドラゴンが翼を休める為にその場にうずくまって寝ていた。
彼女を起こすのは少し可哀そうだが、ここで作業をする以上、騒音や危険から遠ざけてあげたいってのもオレの気持ちの中にある。
「モッカ、ファイアドラゴンに少しどいてもらう事は出来そうか?」
「わかったっ、モッカ、いってみるっ」
モッカがファイアドラゴンにここをどいてほしいと伝えると、ファイアドラゴンは翼を広げて空に飛び上がり、上空で旋回を始めた。
うーん、このまま空を飛び続けてもらうのも悪いから、それこそエクソンの居城にでも行ってもらうか。
でもいきなりファイアドラゴンだけが城に現れたら敵襲と勘違いされそうなので、オレが背中に乗っていった方が良いかも。
オレはモッカに頼み、ファイアドラゴンに背中に乗せてもらえるように頼み、彼女の背中に乗って火の魔王エクソンの居城に運んでもらった。
「あ、あれは? ファイアドラゴンだぁー!!」
やはりオレの思った通り、エクソンの兵士達はファイアドラゴンを見て敵襲と勘違いしたようだ。
ここはきちんと説明をしないと、不毛な戦いが始まってしまう!
「待ってくれ、彼女はここを攻めるために来たワケじゃないんだ!」
「あ、貴方は、ネクステラ様のお客人? いったい何故ファイアドラゴンと?」
オレはファイアドラゴンに城に降ろしてもらい、火の魔王エクソンに会わせてもらう事にした。
作業の途中でいきなり切り上げて戻ってきたオレを見たエクソンはかなり機嫌が悪そうだった。
「どうしたッ!? やはり出来ませんと言いに来たのかッ!?」
「いいえ、違います。お願いがありまして……」
「お願いだとッ!?」
ここはきちんと説明をしないと、誤解されたままだと話がややこしくなる。
オレは少しの間ファイアドラゴンを、この城に置いてやってほしいと火の魔王エクソンに頼んだ。
その理由は、地獄の噴門の向こう側に行ってしまわれるとオレ達が元の場所に帰れなくなる事と、下手に連絡無しにファイアドラゴンがいきなり城にやってくると敵襲と勘違いされるので、オレがそれを説明する為にここに来た事を伝えるとエクソンは笑いながら話を聞いてくれた。
「ハッハッハ、そうだったかッ! やはりお前はオレ様の思った通りの奴だったなッ! そうか、確かにいきなり城にファイアドラゴンが姿を見せれば攻撃しに来たと勘違いされるのも間違いないなッ!! わかった、そのファイアドラゴンはこの城で休ませてやろうッ!!」
これで一つ問題は解決した。
オレ達は再びファイアドラゴンに地獄の噴門の所に送ってもらい、彼女は火の魔王エクソンの居城で疲れが癒えるまで休ませてもらえる事になった。
さあ、それでは工事に取り掛かろう。
まずは、地面を掘る事で石油やガスの出る穴を別に増やそう。
「ムコーガ、グリュック、ガリバー、マテック、ナメガ、ここを掘ってくれ!」
「「「「グゴゴゴー!!」」」」
巨大ゴーレム達はオレの指示で地面を一気に掘り出した。
流石に二十メートル級の巨大ゴーレムが地面を掘ると、一瞬で大穴が開いたくらいだ。
コンゴウは今回、地面を掘る作業には参加していない。
もしあの巨体で一気に地面を掘っていて何かとんでもないモノが出てきたら、引火してしまえば第二の地獄の噴門が出来てしまう危険性がある。
だからコンゴウには今回は掘り出した石や土を次々と地獄の噴門に投げ入れる作業を頼んでいる。
むしろこの作業はコンゴウ以外には無理といった方が良い。
燃え盛る火炎の温度は数千度にもなり、普通のロックゴーレムやクレイゴーレム、下手すればアイアンゴーレムですらその熱で溶けてしまう程だ。
だから決してどのような温度でも現在の技術では溶かす事、砕く事の出来ないオリハルコンで出来たコンゴウなら、地獄の噴門を埋める為の岩石や土を投げ入れても特に問題は無いというワケだ。
五体の巨大ゴーレムが掘り出した土や岩をコンゴウが運んで地獄の噴門に投げ入れる。
これを繰り返す事で、地獄の噴門は溶け続けていたはずの岩石や土よりも多くの量によって少しだけ炎の壁の一部に欠けが出て来た。
よし、この調子ならこれを続ければ確実にこの灼熱の火炎を鎮火する事が出来る!
オレは少し離れた場所から五体の巨大ゴーレムとコンゴウに指示を出し、地面を掘ってもらった。
すると、ある程度に掘りぬいた場所で、状況に変化が生じた。
ゴボッ、ゴボボボ!! ブシャアアアッ!!
地面に真っ黒い噴水が噴き出した。
これは……ひょっとして石油かもしれない。
どうやらオレの指示で地面を掘っていたゴーレム達は石油溜まりを掘り当てたようだ。
さて、これをどうやって別の場所に溜めておくべきか。
黒い原油の噴水は止む事も無く、そのまま噴き出し続けている。
今はまだこのままでいいが、もしこれが地獄の噴門に流れ込んだらここからまた消える事のない灼熱の炎が燃え続ける事になる。
さあ、これをどうにかして別の場所に誘導しないと、ここにまで引火して最悪の結果になってしまう。
うーむ、さあいったいどうすれば、この噴出した原油を貯蔵する事が出来るのだろうか…
…。
オレは頭を悩ませた。
「何か……細長くて巨大なパイプみたいなものがあれば、パイプラインを作る事が出来るんだけどな……」
「こばやしっ、ほそくてながいでっかいのがあればいいのかっ」
モッカが何か心当たりがあるようだ。
しかし、こんな所に難燃性のパイプなんてあるワケが無いし、今から金属製のパイプを作っている時間も無い。
「こばやしっ、ほそくてながいものなら、でっかいみみずのぬけがらなんてどうだっ」
「デカいミミズの抜け殻? そんなものがいるなら……」
そういえば以前モッカが呼び出した魔獣に、砂漠に住むサンドウォームという超巨大ミミズがいたことがあったな、この辺りにそれに似た生き物の抜け殻があれば、確かにパイプ代わりに使えるかもしれない。
これは一度火の魔王エクソンに聞いてみても良いかもしれないな。