でも火の魔王エクソンに会いに行く前に、先に一度この原油とガスを枯渇するようにしておかなくてはいけないな。
オレはコンゴウに指示をし、原油が噴き出した場所から別の方向に溝を作らせた。この溝が崖下まで落ちるようになっていれば、噴き出す原油はそこを流れていき、溜まる事無く崖下に落ちるだろう。
この崖下がどうなっているのかは分からない、だが……見る限り底が見えない場所なので、ここから原油を流し続ければ、あの地獄の噴門の下にある石油溜まりは燃料を失い、鎮火に向かうはず。
オレが元々住んでいた世界では、石油の埋蔵量は1兆7324億バーレル、約50年少しで枯渇すると言われている。
だがこれは採掘可能なモノだけであり、海底深くの採掘困難なモノは含まれていなかったのでこれより多くなるか少なくなるかは分からない。
だが、この地獄の噴門の地下にあると思われる石油はどう考えてもそこまでの量では無いだろう。
だからどうにかこの地下の燃料を根こそぎ奪ってしまえば、ここの火を消す事は可能だ。
実際コンゴウのおかげで原油は大きな溝を流れ、崖下に流れ落ちるようになった。
これで石油溜まりの中身を少しずつ減らす事は出来るはずだ。
さあ、それでは一度火の魔王エクソンの所に戻ってみよう。
オレ達はコンゴウや五体の巨大ゴーレムと共に火の魔王エクソンの居城に戻った。
「おおッ! よく戻って来たなッ!! それで、あの地獄の噴門の火は消せそうなのかッ!?」
「はい、今は地下から燃える水を掘り出し、崖下に流れるようにしてあの地獄の噴門の地下のモノが無くなるようにしてからここに来ました」
「そうかッ! オレ様としては、あの地下にあったモノを無駄にするのは勿体ないとは思うのだが、それであの地獄の噴門の火を消せるならその事は見逃してやろうッ!!」
オレ達の報告で火の魔王エクソンは今の状況がどうなっているのかを知る事が出来たようだ。
「それで、実はお聞きしたい事がありまして、こちらに来ました」
「何だッ!? オレ様に何を聞きたいッ!?」
「実は、石油を運ぶパイプを作るのに、サンドウォームの抜け殻のようなモノが無いかと思いまして、この辺りにそういった巨大な虫の抜け殻が見つかる場所はありませんか?」
「巨大な虫だとッ!? それはラーバウォームの事かッ!!」
ラーバウォーム? サンドウォームとは違うのか。
「あの……その、ラーバウォームとはいったい何ですか?」
「ラーバウォームはこの付近に住む巨大な虫だッ! そうだな、あの巨大な虫はどこにでも抜け殻を置いて邪魔になるので抜け殻を片付けさせてはいたのだが、捨てるにも邪魔で困っていたのだッ!!」
どうやらこの辺りではラーバウォームは抜け殻を捨てる邪魔な虫だったらしい。
しかも聞いた話だと、切ってもなかなか切れず、氷ならすぐに砕けるがここには氷や水の使い手はおらず、そして……何よりも火で燃やしても全く燃えない抜け殻は溜まる一方で捨てるに捨てられずに困っていたらしい。
でもそれって、火でも燃えずに頑丈かつ柔軟性があるって事だよな。
それを使えば、重油のパイプラインを作る事も出来るかもしれない!!
「すみません、その抜け殻、全部使わせてもらっていいですか?」
「何だッ! そんなものが欲しいのかッ!! 好きに持っていけッ!!」
火の魔王エクソンは、厄介者のラーバウォームの抜け殻をオレ達が持っていきたいというと、喜んで差し出してくれた。
よし、これならパイプラインを作る事も可能だ!!
オレ達は火の魔王エクソンの城に山積みになっていた数十年分のラーバウォームの抜け殻を持ち、地獄の噴門に向かった。
そして、そこで噴出した原油をラーバウォームの抜け殻に通してみることにした。
すると、ラーバウォームの抜け殻は、オレの狙い通り、原油を外に漏らすことなく、その抜け殻の内側に原油を漏らさず通す事が出来た。
よし、成功だ!
オレは次の計画を進める為、コンゴウに超巨大な土で出来た器を作らせた。
ものすごく乱暴な形だが、これは原油貯蔵タンクになる予定だ。
せっかく燃え続ける炎があるんだ、それならこれを使って一体形成の巨大な焼き物を作ってしまえばいい。
コンゴウは超巨大な土で出来た器を地獄の噴門に持ち込み、その猛火で一気に焼き上げ、そして外に取り出した。
完成したのは、超巨大な土器とも言えるモノだった。
オレは他のゴーレムに指示を出し、その土器の穴を空けた部分にラーバウォームの抜け殻を繋がせた。
すると、原油はそのままその陶器の器に並々と注がれ、あっという間に一杯になってしまった。
よし、これを繰り返して原油を地獄の噴門から根こそぎ掘り尽してしまおう!!
コンゴウはオレの指示通り、燃え盛る火炎を使い巨大な土器を次々と焼き上げ、そして大量の原油タンクを作ってくれた。
この作業を何日も続ける事で、地獄の噴門は勢いが弱まり、炎の範囲がどんどん狭くなっていった。
「コンゴウ、もういい。今度は地獄の噴門に岩をどんどんと放り込んでいくんだ!」
「グゴゴゴ……ゴ!」
オレの指示に従い、コンゴウは山を切り崩してはその岩石を地獄の噴門に埋めていった。
その間他のゴーレムはオレの指示で貯めた原油をラーバウォームのパイプでつなぐ事により、石油精製プラントを造ってくれている。
石油精製の方法は、50メートル程の巨大タンクに五本のパイプをつなぎ、その前に原油を数百度で加熱する事で常圧蒸留装置を作り、350度以上の重油、アスファルト、250~320度の軽油、180~250度の灯油、ジェット燃料、30~180度のガソリン、ナフサ、そして気化したLPガスに分類される。
この世界でここまで分化させる必要があるかどうかは分からないが、一応作っておいて損は無いだろう。
この中で実際に発電に使われるのはガソリン、そして大掛かりな施設の場合は重油でのボイラーだ。
ガソリンを使うのはむしろ家庭用等の小型発電で、テーマパークのような大きな物の電力を生み出すには重油くらいのコストと安さでないと成り立たない。
まあ値段の事は考える必要は特にないが、持ち運ぶ事や扱いの容易さでは重油の方がガソリンに比べてよほど手間がかからない。
ガソリンは下手すれば気化し、なおかつ可燃性が高いので危険度が重油の比ではない。
――、仕方ない、一度区分けする事にした石油精製だが、取り扱いの危険さでいうならガソリンやLPガスはこの世界で使うにはまだ早すぎるかもしれない。
これは燃やして破棄してしまうか……。
だが、オレ達がガソリンやLPガスを破棄しようとすると、そこに火の魔王エクソンの部下が姿を見せた。
「エクソン様がお呼びです、すぐにお城にいらして下さい!!」
いきなりの呼び出しだ、いったい何があったのだろうか?
オレ達は火の魔王エクソンに会う為、彼の居城に向かう事にした。
「あ、エクソン様からのことづけです、お前達の作ったという燃える油、それを全部の種類持ってこいとの事です」
燃える油を全種類?
それってつまり、LPガス、ガソリンにナフサ、軽油、灯油、重油の全部の種類を持って行けという事か?
まあいい、言われたとおりにしてみよう。
せっかく全種類を分けて作ったんだ、何かに使えるならそれもアリかもな。
オレはガソリンとLPガスだけは気密性の高い金属製の器を用意し、後は土で焼いた器に入れて火の魔王エクソンの元に向かった。
「よく来たなッ!! その手元にある物をオレ様に見せろッ!!」
そう言うと火の魔王エクソンはオレ達の持ってきた種類別に分けた油を奪い取り、部下に何かのコップを用意させた。
いったいどうするつもりなんだ??
すると、火の魔王エクソンはコップの中に入れたガソリンを一気に飲み干し、満足そうな表情を見せた。
「うむッ!! これはウマいッ!! もっと無いのかッ?」
オレは信じられない光景を目の前で見てしまった!!