「わかりました、それで……実はこちらもお願いがあるのですが……」
「どうしたッ! 言ってみるがいいッ!!」
「ここの燃料を運ぶのに、鉄道を敷きたいんです」
「テツドウッ!? 何だ、それはッ!!」
オレは、燃料の安全な輸送方法として、火の魔王エクソンに、鉄道敷設の計画について話してみる事にした。
オレが説明した鉄道は、二本のレールの上に乗せた車輪付きの細長い箱をいくつも繋げ、その先端に機械で出来た車をつけてその車に後ろの車輪付きの車両を引かせるものだと説明した。
「うむッ! わからんッ!! だが、あの地獄の噴門を鎮火し、オレ様に美味いガソリンを飲ませてくれたお前のしたい事なら、オレ様は止めぬ、好きにするがいいッ!!」
ほっ、炎の魔王エクソンは短絡的な性格みたいだが、恩義にはきちんと対応する相手みたいだな、これなら鉄道敷設計画も問題なさそうだ。
「ありがとうございます、エクソン様」
「よいッ! お前はこのオレ様の悩みを解決してくれた友だッ! オレ様が友と認めるのはあの魔王達以外ではほぼいないからなッ! 誇るがいいッ!!」
これでオレは水の魔王、雷の魔王、火の魔王と敵対する事無く、計画が進められるようになったワケだ。
残っている空の魔王ってのがどんな相手かはわからないが、今のとここの三魔王が敵にならないってだけでも安心していいかもしれないな。
ここで地獄の噴門跡の地下から掘り起こした原油を精製プラントで精製した石油が有れば、これを車両に乗せる事により鉄道で雷の魔王ネクステラの土地まで輸送する事が出来る。
でも……実はオレ、鉄道の敷設ってやった事ほとんどないんだよな、オレの持っている知識は最低限の物で、枕木とレールで車輪を常に平行になるように合わせて車輪の通るレールを作らないと脱線してしまうってくらいだ。
それに、あまり速いスピードを出させると輸送は早くなるが、安全面で危険度が増し、下手に脱線、脱輪をすると運ぶものが石油メインとなると大惨事確定だ。
うーむ、どうやって鉄道敷設を確実に済ませるか、そうなるとやはりあまり曲線の多いレールは技術的にも難しいだろう。
幸いここは周りに何も無い荒野が大半なので、踏切を作る必要も無ければ迂回するような曲線カーブを作る必要も無い。
それならば、ただひたすら直線でどこまでも続く長い線路を作ればいいんじゃないのか。
そうだ、線路は続くよどこまでも、って歌があったがただひたすら真っすぐな線路を作ってしまえばいいんだ!!
だが、ここで問題になるのが、どこまでも真っすぐに引くとして、どこまで真っすぐに線路を作ればネクステラの土地に向かえるかってとこだ。
下手に地面からいくら真っすぐに歩いたとしても、先が見えなければ本当に真っすぐに進めているかどうか分からなくなる。
うーん、空から移動して……一度ネクステラの土地からここまで真っすぐな線が引ければなー……って、そうだ!!
「モッカ、ファイアドラゴンと話をする事は出来るのか?」
「もんだいないっ、ふぁいあどらごん、こばやしのことすきっ」
「わかった、頼む。ファイアドラゴンを呼んでくれるか」
「わかった、ちょっとまってっ」
モッカは笛でファイアドラゴンを呼び、何かを話していた。
「こばやしっ、ふぁいあどらごん、なにをしてほしいかってきいているっ」
「そうか、そうだな……ファイアドラゴンにオレを背中に乗せてほしい、それでただひたすら真っすぐに飛んでネクステラの土地まで連れて行ってほしいと伝えてくれるか」
「わかった、そうつたえるっ」
モッカの能力のおかげで今までもどれだけ助かった事か。
彼女は魔獣使いのスキルを持っているので、たいていのモンスターと会話をする事が出来る、彼女にとってはファイアドラゴンも古代の叡智を持つ竜ではなく、大きなトカゲ扱いみたいだな。
モッカが伝えてくれたおかげで、オレはファイアドラゴンの背中に乗せてもらえる事になった。
コンゴウや他のゴーレム、そしてフォルンマイヤーさんとカシマールは今回ここに残ってもらう事にした。
石油の精製にも人手が必要だし、それに鉄鋼を使ったレールを作る必要があったからだ。
コンゴウには鉄鋼のある山で掘削をしてもらい、そこにあった鉄鉱石を集めてもらう事にした。
五体のゴーレムはオレが居なくても魂の固定が出来るようにカシマールに制御を頼み、石油の精製や鉄鉱石を砕いて製鉄する作業を。
そしてフォルンマイヤーさんには魔族の兵士達と協力してもらって食事を用意してもらったり、休憩が確実に取れるようにスケジュールの管理等のマネジメントをしてもらう事にした。
さあ、オレとモッカはファイアドラゴンの背中に乗ってただひたすら真っすぐに線を引くために一度ネクステラの土地に向かわないと。
オレとモッカを背中に乗せたファイアドラゴンは、ものすごい速さであっという間に空を飛んでくれた。
その速さはまさに飛行機ともいえるほど、このファイアドラゴンがオレ達の敵じゃなくて本当に良かったと思う。
まあ、オレ達が彼女の子供を助けてあげたって事が今に繋がっているとすれば、まさに情けは人の為ならずってとこだな。
ファイアドラゴンに乗って一日もかけず、オレとモッカはネクステラの土地に到着した。
本当なら温泉でも入ってさっぱりしたいとこだけど、オレとモッカだけ入って他の頑張っているのを出し抜くのは自分的にやりたくない。
まあ冷たい飲み物くらいは飲むけど、今度風呂に来るとしたら、全員で鉄道敷設を終わらせてからだ。
さあ、少し飲み物を飲んで休んだら、またエクソンの土地まで真っすぐに戻るぞ。
ここでオレはモッカに頼んで、ファイアドラゴンに低空で飛びながら真っすぐにブレスを吐きながら飛んでもらえないかと頼んでもらった。
そう、ファイアドラゴンのブレスで地面に真っすぐな焦げ跡を作れば、そこを真っすぐに線路を平行に敷設すれば鉄道を敷く事も可能だという事だ。
「こばやし、やすみながらでいいならやってくれるってっ」
「わかった、それで問題ない」
オレが頭を下げたファイアドラゴンの頭をなでてやると、グルグルと鳴きながら機嫌良さそうに尻尾を振っていた。
「頼んだぞ、ファイアドラゴン」
「グォオオオンッ!!」
ファイアドラゴンは高らかに吠えると、オレとモッカを乗せ、低空飛行でエクソンの土地に向かって飛びあがった。
「ふぁいあどらごん、ぶれすをはいてっ」
「ギャアアアッ!!」
ファイアドラゴンは大きく息を吸い込むと、一気に一直線に真っすぐ炎のブレスを吐いてくれた。
このブレスは全力ではないのだろうけど、それでも地面に焦げ跡を作るには十分すぎる威力だ。
その後ファイアドラゴンはオレの思った通りに真っすぐ南を目指しながら何度もブレスを吐き続けてくれた。
途中で何度か休憩のために地面に降りたが、それでも遠方まで真っすぐ吐かれた日のブレスが道標になり、ファイアドラゴンは本当に曲がる事も無く真っすぐに炎の道を作り続け、一日をかけてみんなの待つ場所まで戻って来た。
「ファイアドラゴン、一回火を吐くのをやめてくれ」
「ふぁいあどらごんっひをはくのをとめろっ」
オレが言った事をモッカがファイアドラゴンに伝えてくれた。
すると、ファイアドラゴンは火を吐くのを止め、そのまま真っすぐに南に向かって飛んでくれた。
もし、ファイアドラゴンが火を吐く先に魔族やフォルンマイヤーさん、ゴーレム達が居たら致命傷か即死しかねない。
だからオレはみんながいる場所に近づいたのが分かったのでいったんファイアドラゴンにブレスを吐かせるのを止めさせたというワケだ。
その後無事、オレ達は元の場所に戻る事が出来た。
その後にみんなにいったん少し離れた場所に避難させた後、オレはモッカと再びファイアドラゴンの背中に乗せてもらい、途中で火を吐くのを止めさせた場所から再び火のブレスで真っすぐな焦げた道を作らせた。
よし、これでようやく真っすぐな線路を敷設できる道が作れた。
それじゃあ鉄道敷設工事に取り掛かろう!