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第96話 電気を……作り出す??

 オレは、火力発電所の建設に関する話を雷の魔王ネクステラに説明した。

 今は魔力の暴発も落ち着いて来た雷の魔王ネクステラだが、今度は安定しすぎてむしろ雷不足という本末転倒状態だ。


 つまり、今度の発電目的は雷の魔王ネクステラに高圧の電気を与える事で、本来の魔力の循環を助ける形だ。


 その為の発電方法としては、石油を使った火力発電を使う事になる。

 それに必要な石油は、火の魔王エクソンの土地から掘り出し、蒸留して精製したものが使われる。


 基本は重油で問題ない。

 それ以上に精製したものとなると、扱いが大変な上……精製コストも大きくかかる。

 そういう意味では地球の大型の軍艦や発電所等に重油が使われていたのも納得だ。


 この重油、精製コストが安い上にかなり大量に運ぶ事が出来、よほどのことがない限りは気化爆発等の危険性が低いので安全だ。

 実際、稼働を始めた鉄道のタンクに積まれているモノも大半は重油、それに軽油、それからガソリンやナフサ等という風に量が少なくなっている。


 量が少ない物はそれだけ気化しやすく、取り扱い要注意で危険度が高いという事だ。


 まあ、この世界に危険物取り扱い免許が無いので、オレが使っているが、この事で誰にも何の法律で縛られるわけではないから、取り扱いにさえ気を配れば特に問題は無さそうだ。


 それよりも早く発電所を作動させないと。


 オレは列車に乗り、反対側に向かい、コンゴウ、五体のゴーレムとカシマールを連れて戻って来た。


 五体のゴーレムはオレかカシマールが一緒にいないと、魂の固定が外れ、元の鉱石に戻ってしまう。

 だからオレがいない間はカシマールに五体のゴーレムを管理してもらっていたワケだが、今度は雷の魔王ネクステラの土地で火力発電所を作る必要が出来たので、この大型ゴーレム達に協力してもらわなくてはいけなくなった。


 まあ、この五体の巨大ゴーレムは下手な重機よりも優秀で、さらに変にバランスを考える事も無くオレの思った通りに動いてくれる。

 これが神様の与えてくれたチートスキルとしてのゴーレムマスターだとすると、この世界のゴリマッチョのあの神様はオレにこの世界で本当に色々と建物や建造物を作らせたいんだろうな。


 五体のゴーレムが協力する事でサクサクと外壁が完成、そして内部に通された電気用の大型電線、これに電気を発電する為の大型コイルがいくつか取り付けられた。


「トーデン、カンデン、雷の魔法は使えるんですか?」

「問題ありません、いつでも大丈夫です」

「こちらも大丈夫です」


 そう、まずは最初に大型発電機を回し続ける為の動力を作らなくては、その為には大規模の電力が必要になる。

 電気を生み出す為に高圧の雷の力が必要というのはある意味本末転倒っぽいが、呼び水、と考えれば特におかしい話でも何でもない。


「それでは、よろしくお願いします!」

「「はい!!」」


 雷の魔王ネクステラが力を発揮できない今、雷の魔族で最強の魔力を放つ事の出来るのはトーデンとカンデンの二人という事になる。

 本来なら雷の魔族は他にもいるそうなのだが、その人物はどうやら雷の魔王ネクステラとは敵対しているらしく、協力してもらえるとは考えられない。


 だからトーデン、カンデンの二人に頼んだ形になったのだが、彼女達の力はかなりのもので、ファラデーさん達魔技師が作った大型発電機は勢いよく回転を始めた。


 やった、成功だ!!


 一度発電を始めれば後はそれを継続するだけ、ここまでなると後は蒸気によるピストンの上下運動がペダルの役割を果たし、発電機を回転させて続けてくれる事になる。


  そして、一度この形で電気が作れるようになると、今度は電気を流して金属を磁石化する事が出来るようになるので、これで作られた磁石にまた鉄のコイルを巻いて発電機を作り、発電所を作れば、電気エネルギーのネットワークを異世界に作る事が出来る!


 これで安定した電気が作れるようになれば、電気による工業のオートメーション化、安全な機械の導入といった方法を都市部だけでなく、郊外にも進める事が出来る。


 あまりに急激な電化は世界のバランスや環境を壊しかねないが、環境に配慮した電気の利用はこの世界に便利と安心を与える事が出来るだろう。


 また、もし最悪電気が暴走しそうな場合は、雷の魔族がその力をコントロールする事も出来る、これは現代日本では決して不可能な解決方法ともいえるが、この異世界ならではの解決方法ともいえるだろう。


 オレ達が設営した発電所は勢いよく始動、そして高圧の電力を作り出す事に成功した。


 やった、これでテーマパークの再開も可能になるだろう。

 また、この高圧の電力は電線を通し、雷の魔王ネクステラの城にも届けられている。


 これで雷の魔王ネクステラも魔力を取り戻せるに違いない、オレ達が苦労して石油を届けたり発電所を作った努力は無駄にはならなかったと思う。


 これでようやく一仕事終えたともいえるかな、さあ、雷の魔王ネクステラの城に向かおう。

 まあその前に、全身ゴムで出来た衣服だけは着ておいた方が良いかな、万が一雷や電気を自分達が浴びるとひとたまりもない。


 オレ達が雷の魔王ネクステラの城に向かうと、そこにいたのは青年の姿のネクステラだった。


「おお、お前か。よく来たな。お前のおかげで儂の調子も戻ってきたようじゃ、どうも雷の魔力を一気に使い切ったのが不調の原因だったようじゃからな、その枯渇した分をお前が送ってくれたおかげで儂の魔力の流れが本来の物になったようじゃ」


 なるほど、言い方は変だが、充電池や発電機の中身が空っぽになるまで中身を出してしまったので、その後再び再起動するまでに何かしらの外部からのエネルギーが必要な状態になったと考えればいいか。


 例えるなら、充電しながら使っている限りはスマートフォンは電源が落ちずにそのまま使えるが、完全に電源が落ちてしまったスマートフォンを充電しようとしても、画面が付かず、充電しているかどうかが分からないくらいになり、再起動かけるには通常の電力よりも多めの電力を外部から注ぎ込まなくてはいけない状態か。


 だから雷の魔王ネクステラが本来作り出せるはずの雷も全部外部に放出してしまった為、本人の雷が完全に空っぽになり、枯渇して作り出す事も出来なくなってしまった。


 雷の魔王ネクステラは人の恐怖をエネルギーに雷を作り出す事が出来るようだが、それでもエネルギーとしての雷が無い無の状態からはいくら恐怖を集めても雷を作り出す事は出来ないようだ。


 だからオレ達の作った発電所の電力がその呼び水となり、雷の魔王ネクステラは本来の力を取り戻せたらしい。

 今の彼は自らの魔力で雷を自在に作り出し、操る事が出来るみたいだ。


「ぬん、これだけ力が回復してくれば、もう問題はなかろう。さあ、テーマパークとやらを再開するがいい! トーデン、カンデン。お前達も力を貸してやれ」

「承知致しました」

「かしこまりました。ネクステラ様」


 雷の魔王ネクステラが復活し、テーマパークは再び電力を使った形で再開が可能になった。


 その後も火の魔王エクソンの土地から運ばれた石油は火力発電所に運ばれ、テーマパーク運営の電力として使われるようになり、雷の魔王ネクステラの力はもう必要なく運営できる状態になった。


「コバヤシ、ご苦労だったな。流石はベクデルが紹介しただけの事はある。お前は儂の期待以上の働きを見せてくれた。それで儂からお前に褒美をやろう」

「いえ、オレは褒美が目的だったんじゃないですから、お言葉だけで」

「そうはいかん、何も渡さないとなると、儂の雷の魔王としての沽券にかかわるのじゃ」


 そこまで言うなら何をもらえるか分からないけど素直に受け取っておくかな……。


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