広場には多くの人が集まり、五体のゴーレムを見物している。
一体で大きさが桁違いのコンゴウには、人を入れやすくする為に少し遠くに離れてもらう事にした。
今日はテーマパークは休園にしている。
何故ならスタッフの大半がこの広場に集まり、五体のゴーレムの事を見ているからだ。
オレはカシマールに頼み、この五体のゴーレムの中の魂を休ませてあげる事にした。
「お兄さん、それでは始めるのだ」
「わかった。頼む、やってくれ」
カシマールが天に向けて大きく手を掲げると、五体のゴーレム(ムコーガ、グリュック、ガリバー、マテック、ナメガ)の身体がうっすらと光り出した。
「さあ、戦い続け、この血に残った魂よ……もう休む時が来たのだ。この数か月間、お前達はとても、とてもよく働いてくれた……そのおかげで魔族と人間達の対立はほとんど無くなったのだ。全部、お前達が頑張ってくれたからなのだ」
「「「「「グゴゴ……」」」」」
ゴーレムから五色のうっすらとした光が抜け出し始めた。
これがかつてこの地を激戦地として戦った魔族と人間達の五人の将軍や英雄達の魂なのだろう。
「お前達のEの刻印を解くのだ。さあ、天に還り……ゆっくり休むといいのだ……」
五体のゴーレムから完全に魂が抜けると、そこには魂を失い、鉱石と金属に戻ったゴーレムの残骸が崩れ始めた。
五人の魂は天に還っていったのだ。
工事や鉄道敷設で彼等と共に働いた魔族や人間のスタッフ達は、天に還っていった五体のゴーレムの魂に向け、敬礼をし、哀悼の意を示した。
そして、どこからともなく巻き起こった拍手は彼等の手向けになったのだろう。
さあ、それではこのゴーレムだった鉱石を綺麗にしてから王都に向かうか。
ゴーレムを構築していた鉱石や金属は魂の核を失い、ただの残骸になってしまった。
だが、そのままここに置いていくわけにもいかないので、これらを片付けないと……。
今日はスタッフ達を休みにしていたのだが、先程ゴーレムの事を見ていたスタッフ達が次々と集まり、残骸だった鉱石や金属を綺麗に並べ直してくれた。
今回はオレはなにも指示をしていない、どうやらこれは彼らが自主的に動いたもののようだ。
「「コバヤシ様、我々も手伝いに来ました」」
「え? トーデン、カンデン?? これはネクステラ様の指示なのか?」
「いえ、そうではありません、これは我々の意思です」
前回オレが力を貸してほしいと言った時には指示が無いから出来ないと言っていたはずのトーデンとカンデンの二人が、自主的に手伝いに来たのは……ゴーレム達と一緒に仕事をした事での見送ってあげたいといった感情なのだろうか。
「ありがとうございます、ご協力、感謝します」
どうやら魔族達にとって五体のゴーレムの中にいた魂は、尊敬に値する先人であり、優秀な戦士だったらしい。
なるほど、だから魔族達が喜んで片づけを手伝ってくれたって事か。
五体のゴーレムを構築していた鉱石や金属はそれぞれテーマパークの礎になったり、新たな鉄道の敷設に使われるようだ。
だが、残された大きな五個の平たい石がきれいに磨かれ、石碑としてテーマパークの端に並べられた。
どうやらここがかつての激戦場だったと言われる場所らしい。
そこに置かれた石碑には、ムコーガ、グリュック、ガリバー、マテック、ナメガ、それぞれの名前が刻まれ、生前の姿が描かれていた。
どうやら、長生きの魔族の中には実際の彼等の姿を見た者が残っていたようだ。
流石は魔族、人間とは寿命が違うので、数百年前の事でも覚えているのがいるって事か。
まあ見た感じ、ムコーガ、グリュック、マテックは魔族、ガリバー、ナメガは人間だったようで、彼等ももう人間と魔族が争っていない事を理解して天に還ってくれたようだな。
ゴーレムを眠らせ、オレ達は今日と明日ゆっくりと休む事にした。
ファイアドラゴンの背中に乗れば、数日で王都に到着できるので、呼び出しの日にちまでには十分間に合う。
久々に入れた温泉は、体の芯まで温まり、日々の仕事の疲れが取れるものだった。
まあ、この温泉をここに用意したのもオレだから、ある意味自画自賛になってしまうかも。
風呂上がりに冷たい飲み物を飲み、オレは久々にゆっくりと体を休めた。
王様の呼び出しは一応期日的なものがあるだろうけど、ファイアドラゴンがいてくれるから問題なく行けそうだ。
二日後、オレ、カシマール、モッカ、フォルンマイヤーさん、それにパナマさんは、ファイアドラゴンの背中に乗せてもらい、王都に向かって飛び立った。
コンゴウは自力で歩いて王都に向かってもらう事にしたが、あの強さと大きさなら何の問題も無く王都に到着できるだろう。
子供のドラゴンも空を飛べるようになっていたので、モッカはそちらの方に乗せてもらっているみたいだ。
「こばやしっ、ふぁいあどらごん、あとふつかあればおうとにつくって」
「わかった、それなら十分間に合うな」
ファイアドラゴンは全速力で空を飛び、オレ達は二日で王都に到着した。
王都に到着したオレ達は、王宮に招かれ、ダイワ王に今までの経緯を話す事になった。
「おお、コバヤシか、久しいな。それで、どうじゃ? 仕事の方は上手く行っておるのか?」
「はい、国王陛下。オレはこの半年で多くの仕事を手掛けてきました。今日はその後報告をさせていただきます」
オレは、ダイワ王に対し、この半年での仕事の事を報告した。
最初にアンディ王子の離宮の改修作業を完成させた事を皮切りに、ボリディア男爵領でのふもとの村の氾濫防止用の堤防建造と貯水池の設置、枯渇したコチャバン村の地下水を掘り出す井戸と水道設置、そしてウンガ子爵領でのハイダム村の大型ロックフィルダム建造に閘門式水路の完成を伝えた。
そして人間の国だけではなく、雷の魔王ネクステラの土地と隣接する場所でのテーマパーク建設に温泉保養地の設営、さらに火の魔王エクソンの土地での地獄の噴門の鎮火からの石油精製プラント設営にそれを運搬する鉄道の敷設、そして雷の魔王ネクステラの土地での火力発電所設営までやり遂げたと伝えると、ダイワ王は驚きのあまり杖を落としてしまった。
「な、何という事だ。まさか魔族の三魔王と対等に交渉を進めて事業を成し遂げたというのか……信じられん!」
まあ信じるも信じないも、オレが実際にやって来た事は結果として残っているワケだから、オレが嘘をついているのではないとは理解してもらえるだろう。
「お待ちくださイ! 国王陛下。僕もご報告したい事ガございまス!」
このしゃべり方、ナカタの奴か。
オレの功績横取りに失敗したはずのナカタが自信満々に現れた。
コイツ、いったい何をしたというんだ?
オレは王都から離れていたのでナカタがこの半年どのように動いていたのかまでは把握できていない。
「でハ、次は僕の事業についテお知らせさせていただきまス」
ナカタがダイワ王に伝えたのは、橋の建設、水路建設、ショッピングモール建設、そして国営大型スタジアムと選手村の建設を完了させたとの内容だった。
その橋と水路、オレの功績横取りじゃないのか? と言いたかったが、ナカタは違うと突っぱねて来た。
どうやら、オレが作ったのとは別の方法で橋と水路を造ったという事らしい、どこまで本当何だか分からないが、その後のショッピングモールや国営大型スタジアムは本当にナカタが作ったのかもしれない。
オレがゴーレムを使いこなせるように、アイツは重機を自在に作り、操る事が出来る。
その重機の数をどれだけ使いこなせたのかまでは分からないが、ナカタはショッピングモールや国営スタジアムを作った事をダイワ王にかなりの熱の入れようで説明していた。