オレとナカタ、双方のプレゼンが終わり、この半年間でのお互いの工事の成果が発表された。
オレは橋に屋敷に水道、堤防にダム、閘門式水路に温泉保養地、テーマパーク、油田、鉄道、火力発電所を建設した。
我ながらよくもまあ半年でこれだけやり遂げたもんだと思う。
コレが地球の本来の技術だけならどれも半年で出来るとしても足場作りが出来れば良いくらいだ。
だが、オレのスキル、ゴーレムマスターはそれらの大事業を全て短期間で完璧にやりこなす事が可能だった。
だからオレは半年でこれだけの成果を出す事が出来たんだろうな……。
一方のナカタは、橋の建設、水路建設、ショッピングモール建設、そして国営大型スタジアムと選手村の建設を完了させたと報告。
アイツもスキルで作り出せるのが魔法の重機らしいが、それを使ってもこれだけの作業をやらせるにはかなりタイトなスケジュールだと言える。
どうせアイツの事だ、時間を優先する為に多くの人を苦しめながら作業を押し付けて工事を完成させたのだろう。
この世界、労働基準法なんてものは無いから、どれだけの人が過労死や労災で亡くなったのか……それはオレの後ろにいるカシマールの方がよほどわかっているだろう。
「お兄さん、アイツの後ろ……ものすごく多くの人の姿が見えるのだ。ボクには彼ら全員を助けてあげる事が出来ないのだ……」
やはりな、ナカタの後ろにいるとカシマールの言っていたのは、工事の犠牲になって亡くなっていった犠牲者達なのだろう。
あんな奴をこのままのさばらせておくわけにはいかない、ここは何が何でもダイワ王にオレの成果の方が優れていたと認めてもらわないと。
ダイワ王がオレとナカタに結果を伝えて来た。
「コバヤシにナカタ、お前達は双方共にこの国だけでなく、この世界の為になる建造物を造り、社会に貢献してくれた。余が国民達に代わり礼を言うぞ。さて、その上でお互いの成果を比べてみたが……」
結果はどうなる!
「……結果は、どちらか片方だけを勝者にする事が出来ぬ程、甲乙つけがたいものだった。よって、この勝負、引き分けとする!!」
オイオイ、そのオチかよ……と言いたいところだったが、勝ちはしなくても負けにならなくてよかった。
もし負けていたらオレはナカタの社畜にされてこの異世界で一生死ぬまでこき使われるところだった。
もし、そうじゃなかったとしても、オレをナカタから取り戻す為にもし三人の魔王の誰かが手を出して来たら、人間と魔族の大戦争のきっかけになってもおかしくない所だったともいえる。
「引き分け……ですか?」
「納得いきませン! この勝負、どう考えても僕の勝ちでス。彼は人間ではなく魔族に加担し、下手すれば人間の世界に攻め込みやすいきっかけを作っタんでス! これは人類に対すル裏切りではないのですカッ!!」
ナカタ、お前の方こそ、魔族のベライゾンと組んでこの国を牛耳ろうとしていたのはもうわかってるんだぞ、まさに後ろめたい奴ほど饒舌になるってやつだな。
「ナカタよ、コバヤシは三魔王と交渉した上で対等にやり取りをし、人類に損にならないように立ちまわってくれたのだ、それは余が各地にいる斥候から聞いておる」
オレを悪者に出来ず、さらに社畜として飼殺す事も出来なかったナカタは悔しそうな表情でオレを睨みつけて来た。
「クソッ、このままで済むと思うなヨッ!!」
捨て台詞を吐いたナカタはそのまま部屋から出ていこうとしたが、ダイワ王に呼び止められた。
「待て、出るのは話を最後まで聞いてからにしろ」
「何ですト!」
流石のナカタもこの国にいる間はダイワ王に従うしかなさそうだ。
「コバヤシにナカタよ、お前達の建設のレベルの高さは誰もが認めるところだろう。そこで、お前達には二人で一つずつ別の物を同じ場所に作ってもらいたい」
「それは? どういう事ですか」
ダイワ王は部下に巨大な地図を用意させた。
そこを見ると、赤く塗りつぶされた地域は……オレ達がまだこの国の中で足を踏み入れた事のない場所だった。
「ここはかつて陸軍の駐屯地を置いていた場所だ。今は陸軍の本拠地が別の場所に代わり、ここは空いた土地になっている。それでここを新たなる空軍基地として設営してもらいたい」
「空軍基地ですか??」
「そうだ、わが国には海軍と陸軍は有るが、空軍を新たに設立する必要が出て来たのだ。それは、魔王との対立に備えた上での話だ」
魔王といえば、水の魔王ベクデル、雷の魔王ネクステラ、火の魔王エクソンがいるが、確かコンゴウの魂が言うには……もう一人魔王が存在していたと聞いた覚えがある。
「魔王……ヴォーイング!」
「そうだ、魔王軍最強の空を制覇する魔王、空の魔王ヴォーイング、その軍団に備える為、我が国は空軍を設立する必要があるのだ!」
空の魔王ヴォーイング……一体どのような相手なのか。
「空軍は大型の武装飛行戦艦を使った大艦隊と、飛竜に乗ったドラゴンライダー部隊による飛行部隊の二つが必要になるだろう。そこで、ナカタには大艦隊の補給や運用が出来る空軍基地を、小林には飛竜部隊の偵察や運用が出来る空軍基地をそれぞれ設営してほしい。二人共、時間はあまり無い、これをやり遂げる事が出来るな?」
どう聞いても不公平に感じるが、ここは下手に不平不満を表に出さない方が良いだろう。
「わかりました、やってみます」
「勿論でス! 僕に任せてくださイ。まあ、コバヤシはせいぜい飛竜の牧場でも造ってのんびりしていればいいんじゃないですカ?」
コイツ……完全にオレを馬鹿にしてやがる。
まあ今は下手に怒っても良い事はない、それならとにかくダイワ王の言っていた空軍基地の設営に取り組んだ方が良いだろうな。
「わかりました、それではオレ達は空軍基地を設営する為に現地に向かいます」
「頼んだぞ、コバヤシ」
オレはダイワ王に頭を下げ、部屋から退出し、みんなで王都から東に向かい空軍基地設営予定地に向かった。
ファイアドラゴンはオレ達を乗せる為に王都で待ってくれていたらしく、彼女のおかげでオレ達はナカタよりも先に空軍基地設営予定地に到着した。
ふう、休んでいる暇はそう無さそうだな。
まずは基地の前に当面のオレ達の寝泊まりできる場所を用意しなくては……。
オレは空軍基地の前にこの場所に作れる建物が何かを考えたが……何かが足りない。
――そうだ、コンゴウがここにいないんだ!!
オレはどうにか元の王都に戻ろうと思ったが、流石に何度もファイアドラゴンに往復してくれってのは、虫のいい話だ。
だがもし歩いて行こうとしたらここから王都までどれだけの時間がかかる事やら。
困っているオレを見かねたモッカが話しかけて来た。
「こばやしっ、どうした?」
「い、いや……実は、コンゴウを王都に置き忘れたので連れてこないとと思って……でも、これ以上ファイアドラゴンに無理させるわけにはいかないから……。
「こばやしっ、ふぁいあどらごんのこどもがのせてくれるってっ」
何だって!? そうか……そうだな、もうファイアドラゴンの子供はオレくらいなら背中に乗せて飛べるくらいの大きさになっていたんだな。
ファイアドラゴンの子供はオレを乗せ、王都に向かって飛んでくれた。
流石に親みたいな速さで飛ぶ事は出来なかったが、それでも普通の人間が歩くよりはよほど早い、おかげでオレは一日程で王都に到着した。
さて、コンゴウはそろそろ王都に到着しているはずなんだが……あの巨体は……いたっ!!
「コンゴウ、こっちだ。こっちに来てくれ!」
「グォオオゴゴゴ……!」
コンゴウは丁度王都の見える場所に到着したところだったようだ。
よかった、下手にあの巨体で王都に入ってしまえば怪獣映画よろしく大パニックになるところだった……。