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第101話 新しい……宿舎??

 危ない危ない……今オレがここに到着してよかった。


 下手にコンゴウが王都に足を踏み入れていたら、事情を知らない王都の住民達は大パニックになって逃げだすところだった。

 まあ、以前オレが王都でゴーレムと騎士団の立ち回りをやったのは半年前の事だが、橋の所でのデカいのが暴れていたのをまだ王都の住民は覚えているだろう。


 だからその時よりも巨大なコンゴウがいきなり王都に姿を見せれば、大パニックになるのは間違いなしだ。

 その前にオレがファイアドラゴンの子供のおかげで王都に到着したので、コンゴウが王都に足を踏み入れる前に会う事が出来た。


「コンゴウ、よく来てくれたな。でもすぐに別の所に行くぞ」

「グゴゴゴ……」


 コンゴウはオレの命令に従い、王都から離れ、東に向かって歩き出した。


 よかったよかった、王都の人達に気付かれる前に目的地変更に成功だ。

 コンゴウはオレとファイアドラゴンの子供をその掌の上に乗せ、ゆっくりと歩き出した。

 このペースなら二日あれば十分空軍基地設立予定地に到着できるか。


 二日後、特に何の問題も無くオレが到着すると、カシマール、モッカ、フォルンマイヤーさんが食事をしているところだった。

 この人達は……こっちの気も知らないで。


 まあいい、いない間に何かやっていてくれと言ったわけでは無いので、これから始めればいいな。


 オレとコンゴウがいなければ、建物を建てるどころの話では無いからな。

 それにそろそろ新しいゴーレムが必要でもある。


 ムコーガ、グリュック、ガリバー、マテック、ナメガの五体の大型ゴーレムはもう眠りについたので彼等とはまた別のゴーレムを作り出さないといけない。


「カシマール、ここにオレに協力してくれそうな魂はいるのか?」

「わかった、調べてみるのだ……お兄さん、五人程ボク達を手伝っても良いと言ってくれている子がいるのだ」

「わかった、カシマール。彼等と話をしてくれ」


 カシマールはこの地に眠る魂と会話をし、オレの計画に協力してくれるよう説得してくれた。

 そして、オレを手伝ってくれる五人を呼び出す事になり、ゴーレム作成のスキルで作り出す事になった。


「出てこい、ゴーレム! オレ達を手伝ってくれ、頼む!」

「バゴゴゴゴ……」


 地面が持ち上がり、中から巨大なゴーレムが姿を現した。


「コクサイ、カンクー、セントレア、シンチト、ブーゲンビリア……それが彼等の名前なのだ」


 コクサイ、カンクー、セントレア、シンチト、ブーゲンビリア、か。

 そう、彼等がオレ達の新しい仲間、共に空軍基地を設営する巨大ゴーレム達だ。


 オレのゴーレム作成スキルは新たな仲間を作り出した。

 さあ、これからオレ達のやる事を進めないと。


 オレ達は五体のゴーレムとコンゴウと一緒にこの空軍基地設営の為の作業を開始した。


 どうやらここから遠く見える向こう側でもナカタによる空軍基地設営の作業が始まったようだが、アイツ……巨大なバリケードを作っているみたいで中で何をやっているのかがまるで見えない。

 アレがアイツのスキルで作り出した魔法の大型重機によるものなのだろう。

 あんな巨大なバリケード、短期間の人間の作業ですぐに用意出来るものじゃない。


 まあ、今はアイツも造船デッキを作る作業に取り掛からないといけないので、こちらへの妨害工作をするどころじゃないだろう。

 今のうちにまず住居を用意するところから始めよう。


 オレ達はこの場所に駐屯していた部隊長のラプコン、フォスター、ハンセンに話をし、部隊の隊員達に工事に協力してもらう事が出来た。


 五体の大型ゴーレムはオレの指示に従い、指示通りにコンクリを練り上げ、働いてくれている。

 もうオレ達は建物を建てるくらいなら手慣れたもので、大型の建造物でもダムや水路等やテーマパーク等に比べればそれほど難しいモノじゃない。


 数日あればコンクリートで出来た壁が完成し、当面の住居が用意出来た。


 今まであった建物は、あくまでもここがかつて陸軍基地だった時の古い建物であって、隙間風も酷ければ雨漏りもするような安普請だ。

 雨風しのげればまだ野宿よりマシってくらいなので、ここに駐屯する軍のみんなが一刻も早いここの改築を願っていたらしい。


 当分の仮宿舎的な物が完成し、そこを拠点にオレ達は空軍基地の設立をスタートさせた。

 オレ達がダイワ王から指示されたのは、空軍基地でも飛竜部隊の駐屯地になる箇所。

 いうならば飛行機発着場みたいなものだろうか。


 それならば、日本にあった航空自衛隊基地を参考にすればいいか。

 ナカタの方が手掛けているのがスチームパンクに出てくるような大型飛行船の発着場だとすれば、オレの手掛けている飛竜を中心とした空軍基地はジェット機や偵察機を飛ばすタイプの自衛隊基地のようなモノだ。


 つまり、飛竜のメンテをやりやすく、発着が可能でスクランブルにすぐに対応出来るシステムが必要という事になる。

 さて……それに当てはまりそうなところというと……立川か百里、あるいは……小松、いいや……一番大きな場所で考えれば入間ってところか。

 以前オレは入間の航空祭に行った事があるが、あの基地のデカさは半端なかったな。

 そうだ! 目標は自衛隊の入間基地にしておこう!


「みんな、ここをどう作るかの方向性がわかった、話を聞いてくれるか」


 オレはカシマール、モッカ、フォルンマイヤーさん、パナマさんにこの土地をどのように工事するかを伝えた。

 まあ自衛隊だの航空基地だの言っても多分意味が分からないだろうから、大きな櫓の見張り台があって、空を飛ぶ飛竜が快適に飛べる環境を整備しつつ、何体も同時に空に飛びあがっても空中での接触トラブルが起きない為の滑走路を用意し、そして魔力で敵を感知できるレーダーの設置、さらに遠方からの敵を迎え撃てる魔法砲台を設置した場所だというと、流石のフォルンマイヤーさんも驚いていた。


「コバヤシ……なんだその物々し過ぎる場所は、まさかここをそんな場所にするって事なのであるか?」


 この国でも最強と言えるはずの騎士団を率いる騎士団長であるフォルンマイヤーさんが驚くくらいだ、モッカやカシマールには状況がまるで分っていないだろう。

 まあそれでも、ここを飛竜空軍基地にする計画の一部だけでも伝わればいいか。


 全体が見えているのがオレだけだとしても、手伝ってくれて指示通りに動いてもらえるなら問題はない。


 とりあえずは今オレ達のいる場所が当面の宿舎になる。

 ここを拠点に空軍基地を設営するのがオレ達の目標だ。


 今現在ここは陸軍の跡地になっていて、わずかな部隊がここに駐屯している。

 その彼等の寝泊まりしている場所はオレ達が改築したので今までとは比べ物にならないほど快適な場所になった。


 まあ今日はもう休んでも良いかな、宿舎になる場所は確保出来たからな。


 オレ達は外で煉瓦を組み合わせ、間に網を張って食事の準備に取り掛かった。


 だが、その時!! いきなり空から何者かが強襲!

いったい何が起きたというんだ!?


「あら、人間がいるわね。どうします?」

「そうね、アタシ達の邪魔になるようなら殺していいってお父様が言ってましたわ」

「そう、それじゃあ可哀そうだけど、死んでもらいましょうね」

「まあ、せめて苦しまないように殺してあげるのが優しさじゃないかしらね」


 空中に浮いているのは……魔族!?

 まさか、ここが空軍基地になるとわかって先に先制攻撃を仕掛けて来たというのか!


 これはマズイ事になってしまった。

 でも……あの魔族、なんだかどこかで見おぼえがあるような気がする……。

 それにこの声、間違いなくどこかで会ったよな。


「待ってくれ、オレ達は敵じゃない。攻撃を止めてくれ!!」

「あら、あの男……見覚えがあるわね」

「そうね、なんでこんな場所にいるのかしらね」


 え? あの魔族……オレの事を知っているのか?

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