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第106話 空の……軍勢??


「何? 何だと? 我の村を人間が焼き払ったというのか!!」

「は、はい……ヴォーイング様、何卒、何卒仇を……」

「許さん……人間ども、この我が貴様らを根絶やしにしてくれる!!」


 ここは火災のあった村のさらに東にある山岳地域の城、そこで玉座に座っていた人物、それが空の魔王と呼ばれるヴォーイングだった。


「ジャル、アナ……一体どうなっているのだ? お前達はいったい何をしてきたのだ?」

「申し訳ございません、お父様。まさかこのような事になるとは」

「もうよい、下がれ!」


 ヴォーイングは玉座から立ち上がり、巨大な翼をはばたかせた。

 すると、その羽から巻き起こされた突風は前に立っていたアナとジャルを吹き飛ばし、彼女達は壁に叩きつけられてしまった。


 ジャルとアナはS級モンスターに匹敵する魔族だ。

 だが、空の魔王ヴォーイングはそれを遥かに上回る力があると言われている。


「戦争だ。人間を根絶やしにする戦争を始める!!」


 空の魔王ヴォーイングは部下を集め、村を焼き払われた報復として人間の国を攻め滅ぼす準備に取り掛かった。



「頼む、話を聞いてくれ!!」

「わたし達は人間と話す事はありません、助けてもらった事には礼を言います、ですが帰ってください」


 取り付く島もないとはこの事を言うのか。


 オレ達は食事を提供しようとしたり、作業を手伝おうとしたが、魔族の村の人達は誰一人としてオレ達の話を聞こうとしなかった。


 まあ……ナカタのせいとはいえ、あんなふうに絨毯爆撃されたらそりゃあ信じろと言っても無理があるよな……。


 仕方ない、オレ達は村から離れ、空軍基地設営予定地に戻る事にした。

 オレは心の中に解決できないモヤモヤしたものを抱え込んでいた。

 多分それはオレだけではないのだろう、カシマール、モッカ、フォルンマイヤーさん、そしてラプコンさん、フォスターさん、ハンセンさんも気持ちは沈んでいた。


「皆さん、一体どうなされたのですか?」


 パナマさんが心配そうにオレ達に語りかけてきた。

 オレは……魔族の村が報復として飛行戦艦に絨毯爆撃された事を伝えた。

 すると、パナマさんは驚き、そして彼女も何とも言えない気持ちになってしまったみたいだ。


 この件、決してオレ達は悪くない。

 だが、同じ人間として魔族には憎しみの目で見られてしまっている。

 コレをどうやって解消すればいいのだろうか、もし解消出来なければ人間と魔族の溝は深まり、戦争が本当に起きてしまうかもしれない。


 くそっ! 何でオレ達がナカタの尻ぬぐいでこんな事をしなければいけないんだ!!


 だが、そんな事を言っている場合ではなかった。


「大変だ! 空を見ろ、東の方から大量の魔族が攻めて来たぞ!!」

「な、何だってぇぇ!?」


 恐れていた事が起こってしまった。

 魔族の村を燃やされた報復として、空の魔王ヴォーイングが王都に向かって進軍を開始したのだ。


 このまま空の魔王ヴォーイングの軍勢を通してしまうと、本当に人間と魔族の避けられない戦争が始まってしまう!


「みんな、無茶を言ってすまないが、魔族を殺さずにあの軍勢を食い止めてくれ! 頼む!!」

「わかりました、コバヤシ殿」

「やってみましょう!」


 流石に無茶振りではあったが、それでも命の恩人のオレの頼みだ、国王軍の戦士達はオレの言う事を実行しようとしてくれている。


 さあ、オレ達も戦うしかないのか。

 コンゴウなら相手を倒さず、脅す事も出来るだろう。


「コンゴウ、頼む、一緒に魔王軍を食い止めてくれ!」

「グゴゴゴゴッゴ!!」


 コンゴウの目が光った。

 そしてコンゴウは足を大きく曲げ、一気に魔王軍の真っただ中に飛び込んだ!


「ナ、何ダ!?」

「ゴーレムダト? ドコカラ現レタ?」


 魔族達はいきなり群れの真ん中に飛び込んできた黄金の巨大ゴーレムに驚いていた。


「コンゴウ、アイツらをびっくりさせてくれ!!」

「グゴゴゴッ!」


 コンゴウは地面を引き剥がすと、おもむろに魔族の群れ目がけてぶん投げた。


「ひっ、ひけー!」

「退避ー!!」


 流石の魔族もいきなり飛んでくる地面の岩盤にはビックリして地面に不時着せざるを得なかったようだ。


「ま、まさか……アレはコンゴウ!? 何故アレが今の時代に?」

「お父様、アレをご存じなのですか?」

「アレは……我がまだ若かりし頃、他の三魔王と共に束になっても勝てなかった古代人の作った超巨大ゴーレムだ。しかし、なぜアレが今……まさか!!」

「お父様!?」


 空の魔王ヴォーイングは地面に降り、部下全員を集めた。

 そして何かを話しているようだ。


「アイツら、いったい何を話しているんだ?」


 どうやら話が終わったようだ、だが……空の魔王ヴォーイングは軍勢を連れ、元飛んで来た方向に目指して撤退していった。


 どうにか……助かったんだろうか。


 オレはコンゴウと共にみんなの待つ基地に向かった。


 空の魔王ヴォーイングの来週に備えていた基地の全員は、魔王が撤退していったと聞いてようやくほっとできたようだ。


 しかし、このまま放っておくわけにもいかない。

 それより、空の魔王ヴォーイングが撤退したとなると、あの村の再建も魔族達が出来ないという事も言える。


 そうなると、あの村民達は建物も無く雨風に晒されたまま日々過ごさなくてはいけなくなってしまう。

 それはあまりにも可哀そうだ、彼等を助けてあげないと。


 本来なら空軍基地をここに作る話を進めなければいけない状態なのだが、肝心のナカタは雲隠れ、攻めてくるはずだった空の魔王はコンゴウの前に撤退、となると無理してここを空軍基地にする必要は無さそうだ。

 それならあの焼き出されてしまった魔族の村人達を助けてあげる方がよほど良いだろう。


 そうしないとオレの心の中のモヤモヤも解決出来ない。


 決めた! オレは罵倒されてもあの村を立て直しに行くぞ。


「みんな、明日になったら出かけるぞ。やはりあの村をこのまま野放しにしておくわけには行かないんだ」

「わかったのだ!」

「モッカ、こばやしてつだうっ」

「それでこそコバヤシなのである。私も当然協力させてもらうのである」

「コバヤシ様。後方で物資の支援が必要でしたらわたくしがすぐに用意させて頂きますね」


 カシマール、モッカ、フォルンマイヤーさん、パナマさんがオレに協力してくれると言ってくれた。

 やはり彼女達はオレの大切な仲間だ。


「自分達も協力します」

「手伝わせてください」

「お願いします」


 ラプコンさん、フォスターさん、ハンセンさんも手を貸してくれるらしい。

 これだけの人がいればあの村を立て直すのもそう時間はかからないだろう。


 オレ達は次の日、魔族の村目指して出発した。

 全員で到着する為に空を飛ばず地面から歩いて向かったが、大体半日程度で村に到着できた。


「またお前達か、何をしに来た!!」

「帰れ、帰れ!!」

「今アンタ達にかまっている場合じゃないんだよ」


 当然ながら魔族の村民達はオレ達を敵視している。

 村の中の方に入れようとせず、全員で阻止しようとしているくらいだ。


 仕方ない、それでは村の中に作るつもりだった建物をここの外れに用意するとしよう。


「コンゴウ、力を貸してくれ!」

「グゴゴゴゴ……」


 コンゴウが目を緑色に光らせ、石を積み始めた。

 石と言ってもあのコンゴウが積む石だ、その大きさはもう岩ともいえるレベルだろう。


 コンゴウが土台を積むと、今度は柱をコクサイ、カンクー、セントレアが立て、それをシンチト、ブーゲンビリアが固定させてあっという間に大きな建物の巣組みを作ってしまった


「よし、次は階段だ、お年寄りでも上りやすいように段差は小さくして手すりをつけてくれ」


 ゴーレム達はオレの命令通りに動き、あっという間に建物の骨組みを作ってしまった。

 オレ達が建物を建築していると……やはり気になる人達がいるのだろうかチラチラと作業を眺める魔族が増えて来た。

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