目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第106話 閃き灯す道

「よし…こんだけ動くようになれば問題ねェな。護衛ご苦労様、また様子見ながら皆の補助頼むぜ」


「 “クギャッ!” 」


鬼の攻撃で麻痺した体がようやく思い通りに動かせるようになった。気持ち少しの違和感は残ってるけど…大人しく静観はしてられない。


鬼が脚を痛めて機動力の下がっている現状、休ませずにガンガン攻めて追い詰めるのがベストな筈。多少無理をしてでもここで鬼の体力を削る…!


私が駆け出すと、他の3人も私の意を汲んで鬼に向かっていく。鬼の正面から3人が、斜め方向から私が距離を詰める。


違う方向から近付いてくる私達を交互に見た鬼は、数の少ない私の方へと走ってきた。まあ定石だ、こっちも心構えはしている。


どんどん距離が近付いていくと、不意に鬼は頭部を横に逸らし、その大きな角で薙ぎ払い攻撃を仕掛けてきた。


だが〝音〟と動きで何を仕掛けてくるか大体予想がついていた為、衝棍シンフォンの石突で地面を突いて体を持ち上げ、華麗に角を跳び越えた。


「脳天かち割れろっ!!〝禍玄かげん震打しんうち〟!!」


落下する勢いを利用して、鬼の頭頂部目掛けて思いっ切り本気打ちを叩き込んだ。直後ほとばしる稲妻は鬼の角を傘代わりにして防ぐ。


今のはかなり効いた筈だ、むしろまだしっかり立てているのが不思議なぐらいに…。だが巨大な目から血が出ているのを見るに、相当効いている。


追撃…は一旦ストップしておこう…。道連れ覚悟で猛攻を仕掛けてくるとも限らないし、ここは少し距離を開ける。後続もいるわけだし…!


「喰らえニー!!〝ロックメテオ〟!!」


木を蹴って高くジャンプしたニキは、人の頭サイズの岩を力いっぱい投げつけた。直接触れられないから…アイツなりに色々考えた末なんだろうな…。


「〝無心の剣フロー・ブレイク〟!!」

「〝溶解薙ぎ断ちゾール・アルミーガ〟!!」


稲妻を器用に避け、アレスとロイスはそれぞれ右と左に分かれて鬼の胴を切り裂いた。堪らず咆哮を上げる鬼…きっともう限界が近い。


他の皆にヘイトに向かないように私も距離を詰め、更なるボーナスを狙ってみるが…鬼に頭上を跳び越えられて攻撃は失敗した。


「まだあんな余力残ってるんだ…本当にタフだね鬼は…」


「つっても底は見えてきた、このまま畳み掛けて終わらすぞ…!」


全身負傷した鬼と向き合い、私達は武器を構えて最後の攻撃に出んとする。──だが何やら鬼が怪しげな素振りを見せた。


突然鬼は地面に突進し、角を地面に突き刺した。何…をしてるんだアレ…? 土下座…? 命乞いのつもりなのか…?


“──ボコッ、ボコボコボコッ!”


少し様子を見ていると、鬼付近の地面がボコボコとまるで沸騰した水のように爆ぜ始めた。そしてそれがどんどん広がっていく…。


“──キーン…!!”


「ヤベッ…?! 全員逃げろォ…!!」


急いでこの場からの離脱を試みるが…走る速度を上回る速さで地面が次々爆ぜていき、〝音〟が一番大きく聞こえた瞬間──地面が大爆発を起こした…。


土埃に一瞬にして視界を奪われ…衝撃と爆風によってぶっ飛ばされた…。更には空に向けて山ほど稲妻が走り…私は何度も打たれた…。


そこからは何が起こってるのか分からないまま…宙を漂った…──。







──気付けばうつ伏せで地面の上に倒れていた…。全身の痛みを堪えて上半身を起こすと…そこには凄惨な現場が残されていた…。


めちゃくちゃに掘り返されたかのような地面…倒れた木々…、ここがさっきまで居た場所なのかどうかも分からない…。


皆は無事なのか…? 私と同じように稲妻に打たれたんだとすれば…皆痺れて動けずにいる可能性が高い…。


私が動けるのは…多分この痺れに適応したからだろうな…。痛みだけが残るのも辛いものがあるが…皆の安否を確かめなきゃ…。


それに鬼の生死も気になる…、鬼自身もあの大爆発に巻き込まれていたし…無傷で済むわけがない…。


あの攻撃は鬼にとっても諸刃の剣…っと言うより自爆に近い…。殺られる前に道連れ覚悟で大爆発…、恐ろしいが…それだけ追い詰められていた証拠だろう…。


しっかし捜索範囲広いな…これ相当大規模だぞ…。アクアスとカーリーちゃんも多分巻き込まれてるし…無事だといいんだが…。


“──キーン…!!”


「 “──ガァゴォォ…!!” 」


「うおっ…!? しまった…?!」


突然すぐそばの地面から、青白い輝きを失った鬼が姿を現した…。大口を開けて突っ込んできた鬼に対応しようとしたが…不安定な地面に足を取られ…左腕を噛まれてしまった…。


その一噛みで左腕は折られ…もはや痛みを感じない…。だがペチャンコにはなっていないのを見るに…鬼の力もかなり弱っているみたいだ…。


とは言え自力で腕を引き抜くことはできず…徐々に噛む力が強まり…メキメキと腕が潰されていく…。このままじゃ…腕が噛み切られちまう…。


“──ヒュンッ!”


「 “ギィグァガ…?!!” 」


ゆっくり潰されていく腕に焦りを募らせていると…どこからか飛んできた矢が鬼の右眼に突き刺さった。


鬼が眼を射貫かれた痛みで口を開けた隙に腕を引き抜き、遅れてやってきた激痛に堪えながら衝棍シンフォンを回した。


「〝禍玄かげん竜撃りゅうげき〟!!!」


この一撃で終わらせるつもりで…今出せる全力を鬼の鼻先にぶつけた。これでダメならもう私は戦えない…、右腕も左腕もボロボロ…。


私の全力を喰らった鬼は大きく仰け反り、後ろ脚だけで立って天を仰いでいる。頼む…そのまま倒れてくれ…。


「 “──ガァァァァァ!!” 」


「ダメか…。しょうがねェな…こうなったら脚でも何でも使って…最後まで遊んでやんよ…! 来やがれクソ鬼め…!」


鬼にはギリギリで耐えられたが…もう一歩の所まで来てんだ…絶対諦めねェぞ…! 文字通り噛み付いてでも食らいついてやる…!


実際鬼もふらふらしてて…どこか目の焦点も合っていないように思える。さっきの一撃で脳が大きく揺れて脳震盪にでもなったか…?


「 “ギギギ…ギィガガガァ…!!” 」


「オイオイマジかよ…、冗談じゃねェぜ…」


鬼は頭を左右に揺らしながら体を小刻みに振るわせると、また全身の毛皮が少しずつ光り始めてきた…。勘弁してくれよ…この足元の悪さで稲妻は避け切れねェ…。


だからって止められねェし…誰か何とかしてくれェ…。


「──〝斑千風エクゼト〟…!」


「 “グゥガァァ…?!!” 」


まるで私の心の中を見透かしたかのように、ベストなタイミングでアレスが駆け付けた。高速で鬼に近付くと、その剣を額へと一気に突き刺した。


今まで以上に悶え苦しみ暴れる鬼だったが…次第に動きがゆっくりになり、やがてズシンッとその場に倒れて動かなくなった。


それを見た私はその場に座り込み、大きく息を吐いた。張り詰めていた緊張感が解け、討伐成功の安堵で体が凄く重く感じる。


だがそこへ主張してくるのは全身の痛み…特に左腕の痛み…。酷くやられたもんだぜまったく…、命あって何よりだが…。


「助かったぜ荒男…一時はどうなるかと思ったが…──って何してんだ?」


剣を抜き取り、鬼の亡骸から下りたアレスは、何やら地面を漁り始めた。その様子を見つめていると、アレスは木の枝を手に取って何故かこっちに来る…。


「ちょっ待て…! 私結構シャレにならない程度には負傷してんだ…! 乱暴だけは…乱暴だけはしないでくれ…!」


「何言ってんだオマエ…、副木だ副木…! バカ言ってねェで左腕診せろ…!」


大人しく言う通りにすると、アレスは持っていた包帯で木の枝と一緒に私の左腕を固定してくれた。流石はハンター…怪我の処置が手慣れている…。


私達なんて治癒促進薬ポーション飲んだ後は大体適当に放置しちゃってるからな…、これは見習うべきだろうか…。


「ってかこんなことしてる場合じゃねェ…! 皆の安否を確かめねェと…!」


「こんなことって…──ロイスはさっき向こうに倒れてたな、多分まだ痺れて動けないんじゃねェか? 頭巾の方は見てねェが…近くに居るんじゃねェか?」


「クギャも心配だ…、ニキー! クギャー!」


大声を出しながら周囲を捜索していると、森の方からクギャがこっちに歩いてきた。ガッツリ吹き飛ばされてたみたいだが、とりあえず無事そうだ。


問題は未だ見つからないニキだが…マジでどこにも見当たらない…、人影はおろか紫色すら見つからない…。


もしかして生き埋め状態になってるのか…!? もしそうなら大事だ…手遅れになる前に全員でここら一帯を掘り返さなきゃ…。


「──カカー…ニキはここニー…」


「ニキっ?! どっから声が…──あっ居た…。オマエ…よりにもよってか…」


ニキは木の枝に引っ掛かってだら~んとしていた。それも結構高い木に…ありゃアレス達でも登るの一苦労だぞ…。


何はともあれ無事なら良かった。残すはアクアス達だけど、カーリーちゃんが援護射撃できてたってことは無事と捉えていいのかな?


暗い森の奥をきょろきょろ見渡していると、アクアスとアクアスに肩を貸すカーリーちゃんが一緒に茂みから出てきた。


「アクアス大丈夫か…? カーリーちゃんに担がせてオマエ…」


「申し訳ありません…不甲斐ないです…」


「アクアスさんは稲妻からオレを庇ってくれたんだ、しょうがないよ」


確かにカーリーちゃんはほとんど無傷、そうか…よく頑張ったなアクアス。何はともあれ誰も死ななかった、それだけで十分だ。


怪我はちょっと軽視できないレベルで重症だけれども…。アクアス達が治癒促進薬ポーション必要なさそうだし…私貰っちゃおう。


“──ズドンッ!”


「ニュイー…ようやく動けるようになったニ…」


何かが落下してきたと思ってビクッとしたが…ただニキが落下してきただけだった…。アイツ…何食わぬ顔であの高さの木から…、化け物がよぉ…。


「これで他の全員揃ったな? そしたらロイス拾ってさっさと集落に帰るぞ…今厄介な危険生物に見つかるのはごめんだからな…」


「えェー!? もう帰っちゃうニー!? せっかく貴重な鬼の素材が採れるチャンスニよ…?! 旅商人として見逃すわけにはいかないニ…! お願いニ~! ちょっとだけ…! ちょっとだけ剝ぎ取らせてほしいニ…!」


「いやいや…──んー…じゃあちょっとだけだぞ…?」

「いいのかよ…」


ニキは弾けるような笑顔を見せると、木陰に置いていたリュックの中からノコギリを取り出し、鬼の角を剝ぎ取り始めた。


“──ギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギ


「痛たたた…酷い目に遭ったよまったく…。しかし凄いね鬼は…噂以上の強さだったよ…、流石はの原形と言われる生物なだけはあるね…」


コギコギコギコギコギコギコギコギコギ…ギギギ…ギィ…ギ…ギコギコギコギコギコ


「〝鬼人族デモナ〟か…? でも正確な情報かどうか分かんないぞそれ…?〝竜族ガラ〟と〝竜人族ゴラン〟だって〝竜〟と言いつつ偽竜種レックスだしな」


ギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコ!   ──ギコギコギ


鬼人族デモナは謎が多いですからね…、何しろ世界中で入国禁止を言い渡されている種族ですから…。ドーヴァにも居てませんしね」


コギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコ


「居なくていいだろ…ただでさえ凶暴で好戦的って噂なんだからよ…」


ギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギ


「へェーそうなんだ、オレ知らなかった」


コギコギコギコギコギコギコギィ…ギギギギ…──バキィ!!”


何やらへし折れるような音がして振り向くと…ニキが死骸の上で凄くどんよりしていた。力いっぱいノコギリ引き過ぎたんだろうな、あの怪力頭巾。


ともあれ角はゲットできたんだし、これでアイツも満足した筈。ようやく集落に帰れるぜ…、ぐっすり寝たい…朝までぐっすり…。


「ニキ~、帰るぞ~!」


「は~い! ──もうちょっとだけダメニ…?」


「ダメじゃバカタレ…! 早くこっち来い…! 置いてっちまうぞ…!」




     ▼   ▽   ▼   ▽   ▼




川人族サールの集落 ─ヒュアリル─ >


「おー! 帰ってきたか若人達よっ! 何か遠くで爆発音したから大丈夫かと心配しとったわ、心配しすぎて脚攣ったわっ!」


「またですか?」

「攣り癖ついたんじゃないニ?」


依頼を終えて序口の森から戻ってきた私達は、討伐完了の報告をしに酋長の家を訪れた。そこにはマリさんも居て、食事の準備をしていた。


キッチンから漂ういい匂いが、戦いの疲労で空いた胃袋を刺激してくる。頑張った私達の為に作って待っててくれたらしい、ありがたい…!


盛りつけられた郷土料理の数々、湯気の立つスープ、ふかふかのパン、それらの皿が次々床に並べられていく。


並べ終えたらいよいよお待ちかねの時間。料理を囲むように敷かれた丸いクッションに腰を下ろし、大人数での夕食を楽しんだ。


変わった味付けの料理が多いが、中々癖になる味わいでとても美味だ。中央に据えられためっちゃデカいカエルの丸焼きも…見た目はアレだがチョーウマい。


そしてコレ、気になっていた潤甜菜ロースビーツの和え物。シャキシャキ食感にほんのり甘みがあり、酸味の利いた味付けと相まって言葉にならない美味しさだった。


その後もマリさん手製の料理を味わい尽くし、その全てを胃袋に詰め込んだ。潤甜菜ロースビーツの葉を煎じたお茶が…口の油分を優しく流してくれる。


「そういや酋長、トンネルの件どうなった?」


「ああそれな、オマエ達が帰ってくるちょっと前に撤去作業が終わったそうじゃ。──まさか今から行くんか…!?」


「行かねェよ…誰がこんな夜分に…」


トンネルの方も無事解決したようだ、これでようやく事を先に進める…。石版集めも大事だが…今の最重要事項はムルクさん達の制止だ。


一等星ハンターという貴重な戦力を失うわけにはいかない…ムルクさん達が魔物と遭遇する前に止めなくては…。


っと言っても今から向かったところで…どうせ大して進めず危険な森の中で野宿になるだろうし…、出発は明日あすの明朝だ。


まだ寝るには少し早い時間帯だが、明日あすに備えてもう眠りにつくことにした。アレス達は酋長の家に、私達はマリさんの家にお邪魔する。


今日は色々と疲れる一日だったし…ゆっくり体を休めよう…。言ってしまえば明日あすからが本番なわけだしな…、トホホ…。







──あした


「んぁー…眠いぜぃー…」


「遅ェぞオマエ等…! ったく…緊張感無ェな…」


まだ太陽が完全に昇っていない明朝、私達はトンネルの前に集合した。そこにはアレス達だけでなく、酋長とカーリーちゃんも居た。


酋長の横には大きな牛?みたいな生き物が3頭、大人しくその場に伏せていた。穏やかそうな草食動物だ、目が小っちゃくて可愛い。


「あれ? カーリーちゃんも一緒に行くの?」


「うん行く、オレも行く」


「ダメだ! オマエは森番らしくこの集落を守ってろ!」


「やだっ! オレも行くっ!」


朝っぱらから耳に響く言い合い…嫌でも眠気が薄れていく…。拒否するアレスと行きたいカーリーちゃんの争い…気が強い者同士の争い…。


「まあまあアレス、カーリーの森番としての経験や索敵能力は僕達にとっても助かるし、そう無下にしなくても…」


「そうだぞ荒男、二等星ハンターだか何だか知らんが…森のことは森番が一番よく知ってる筈だろ? それに最低限自衛の術もあるし、私達だって居んだから」


「オマエ等なぁ…」


アレスがこれ以上何かを言ってくる前に、カーリーちゃんはロイスの後ろに隠れてジーッとアレスを見つめている。


それでも何かを言おうと口を開いたが…結局大きくため息をついて折れた。頼れる森番のカーリーちゃんが仲間になった。


「話はまとまったようじゃな、それじゃ〝モーブゥ〟に乗って向かうがよい」


生成色のお腹、錫色すずいろの毛皮、曲がった角、そして小っちゃな目──この生き物はモーブゥって言うのか。


どうやら2人乗りだそうで、3頭居れば大丈夫だろうと連れて来てくれたらしい。──まあ普通はそう考えますよね普通は…。


「オレはロイスと一緒に乗る」


わたくしはカカ様とご一緒します」


「じゃあニキはアレスの後ろに乗るニ~」


ロイスとカーリーちゃんがモーブゥに乗り、アレスとニキもモーブゥに乗り…そしてもう1頭のモーブゥには──ニキのリュックが乗った…。


重いのよアイツのリュック! 2人分かそれ以上に重い! 酋長も唖然としてるよ…「えっ…? それ乗せるの…?」みたいな顔してるもん。


「クギャ…重いだろうけど頑張ってくれな…」


「恨むならどうぞニキ様を…」


「 “クギィ…” 」


ちょっと嫌そうな顔を浮かべるクギャだったが…私とアクアスは迷わず背に乗った。酋長からランタンを受け取り、アレス達を先頭に洞窟を進み始めた。


トンネル内には灯りが一切なく、ランタンで照らさないと指先も見えないほどに暗い。それにとても静かだ…私達以外の生物の気配がない。


少し怖いのか、アクアスは私の腰に回す腕をギュッと締めた。でも確かにこれはちょっと怖い…、先も真っ暗…後ろも真っ暗…。


しばらく進んでも全然出口が見えてこず…今どこらへんに居るのか分からないのが余計に不安を煽る…、得も言えぬ漠然とした恐怖がある…。


超大きな山脈だから…ただ真っ直ぐ進むにしてもめちゃくちゃ距離がある…。モーブゥもそこまで速いわけじゃないし、気長に到着を待つほかない。


移動中はカーリーちゃんに私達の目的を話したり、下らない雑談をしたり、怖い話をしようとしたニキを怒ったりした。


私達について来た理由をカーリーちゃんに尋ねたら、「昔からネブルヘイナ大森林に行きたかったから」だと教えてくれた。


危険だからずっとダメと言われていたが、鬼を討伐した私達と一緒なら行ってもいいと言われたそうだ。だからあんなに必死だったんだね…。


もはや暗がりの恐怖も忘れてきた頃、進む先の方に小さな光が見えてきた。少しずつ大きくなっていく光…──そしてついに外へ出た。


「おお~! ついに着いたニ~!」


「ここが…!」


「おぉ…! なんじゃこりゃ…」



──第106話 閃き灯す道〈終〉

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?