──時は少し遡り、
<〔Persp
クギャ様のおかげで悪天候の中でもグイグイ進めているのに…一向に姿が見えて来ませんね…。やはり動き回ってしまったのでしょうか…。
ニキ様ならばやりかねませんね…一番やりかねません…。そしてもし本当にそうだったら…どう探せばよいのでしょうか…。
本当に地道な足跡探しになってしまいますね…、ぬかるんでいるので足跡も見やすそうではありますが…。
いえ弱気になってはダメです…! せっかくカカ様に信じて託されたのですから…! 何が何でもニキ様を見つけてみせます…!
「いやー…やっぱ
「 “クギィ…?” 」
「アレス様! クギャ様はカカ様の大切なペット! 家族です! カカ様から大事な家族を奪おうとしないでください!」
「冗談だ冗談…マジにすんな…。──おっ? 向こう開けてやがるな…、一応警戒しとけ…何か居やがるかもしれねェ…」
アレス様の言う通り、クギャ様が進む先には開けた場所が。危険生物が休んでいる可能性もありますし…念の為に
何も居ないことを願いながら、
「 “ソチゴウ! ソチゴウ!” 」
「 “クイタダ! クイタダ!” 」
「いやだからー…生肉は食べられないんニよー…。せめて魚にしてくれニー…!」
「アレは…何をしてるんでしょうか…ニキ様は…」
「知るかよ…」
「 “ギィ…” 」
4本の腕を持つ二足歩行のサル?子グマ?のような生物が…ニキ様に生肉を献上している…。何とも意味不明な光景ですね…。
大きな葉っぱの上に座るニキ様…その前にはキノコや木の実が積まれ…その後ろに生肉を持つ謎生物4匹…。何だか崇められているように見えますね…。
「 “ヴ…? イテキガァ! イテキガァァ!!” 」
「わわわっ…!? 何ですか…!?」
そこまで強くはなさそうですが…ニキ様とどのような関係か分からない以上…無暗に蹴散らしてしまうのも
「2人共! コレ被るニ! 今すぐ被るニ!!」
謎生物の背後から、ニキ様が何かを投げてきた。コレは…葉っぱで織った帽子…? よく分かりませんが…ひとまず言われた通りにします。
「 “ヴヴ…?! ウクゾド! ウクゾド~!” 」
「「「 “ウクゾド~!!” 」」」
「ふぅ…単純な奴等で助かったニ…」
四足歩行で威嚇していた謎生物達は…再び立ち上がって今度は喜びだした…。何故ニキ様は少し扱いに慣れているのでしょうか…。
いよいよ頭が混乱してきましたね…何なのでしょうこのマイルドな悪夢みたいな状況は…。1人はぐれた間に一体何が…。
謎生物達が喜びに震えている間に…ニキ様から説明をいただきましょう…。
▼ ▽ ▼ ▽ ▼
「なるほど…全然要領を得ませんね…」
「マジで何言ってるのか分からんのよニ…、困ったもんニ…」
首の長いワニを仕留めたことで…ニキ様がボスとして認められてしまったのでしょうか…。頭巾被ってるだけの完全別種の生き物ですのに…。
知能が高いのか低いのか…、害意が無いのは明らかですが…これ以上関わらない方が良さそうですね…。
「そんなことより、随分と周囲が荒れてるが…コレはオマエの仕業か…? そんなにこのワニが強かったのか…?」
「それは別の戦いの跡ニ。ほら、あそこに居るニよ」
「うわっ何ですかアレ…!? ミノムシの
「まあ
聞けばあのミノムシ人が、ミクルス様を襲った例の集団の一派だという。突然襲ってきたから返り討ちにしたと…ニキ様は涼しい顔でそう言った…。
服が雨に濡れてて分かりにくいですが…よく見ると流血した跡が確認できる…。この場に残された戦いの痕跡からしても…さぞ激しい戦いだったのでしょう…。
無事ではないかもしれませんが…合流できて本当に良かった…。急ぎカカ様のもとへ戻り、石版探しを再開しましょう。
「この変な生物達にお別れ言ってくるニ。──ニキ、モウイク、バイバイ」
「 “ヴ? ソチゴウ! クイタダ!” 」
「ちょちょちょっ…! そうじゃないニー…!」
意思疎通は失敗に終わり…謎生物達はニキ様の腕を引っ張って、さっきの特等席に誘導しようとしている…。
困りましたね…、悪意がない分…無理やり連れて行こうとすれば攻撃してくるかもしれません…。かと言って対話は不可能ですし…倒すのも違う気が…。
「頭巾、コイツ等会話は無理でも絵でなら分かるんじゃねェか? 地面か岩にでも絵描いてみろよ」
「なるほど! その手があったニ!」
ニキ様は適当な石を手に取ると、近くの岩に絵を描き始めた。──これは中々…味があるというか…独創的といいますか…、まあ…はい…。
何はともあれ絵は完成。背を向け合い、それぞれの方向へ進もうという意思のこもった絵。果たして通じるでしょうか…。
「 “キクラガ! キクラガ~♪” 」
「ダメみたいですね…」
「画力の問題じゃねェか…?」
「おいっ」
ニキ様のへt…味のある絵を囲んではしゃぐ謎生物達。すると4匹の内3匹は、走って森の中へと入っていった。
絵に満足して帰ったのかと思いましたが、3匹は手荷物を持ってすぐに戻ってきました…。木の棒に結ばれた手作り感満載のレザーポーチ…、ポーチといい石槍といい…見た目以上に器用なのですね…。
謎生物達はポーチを漁り始めると、手のひらサイズの平たい石を取り出した。それを大層嬉しそうにニキ様に見せている…。
「おー、コレ全部オマエ達が描いた絵ニ? ニキよりうま…──どっこいどっこいニね。──ニィ…!? 2人共ー! ちょっとコレ見るニー!」
ニキ様は一つの石を指差し、手を振って
すぐにニキ様のもとへ駆け寄り、アレス様と一緒にその絵を覗き込んだ。絵の内容は何の変哲もない森を描いたもの。色まで塗られている。
ですがその木の上…鉛色の空の真ん中に白い光のようなものが描かれていた。もしこれが見たままに描かれたものならば…これは大きな手掛かりかもしれません…!
「コレ、ドコカ、ワカル?」
ニキ様は片言な言葉で話しかけ、ジェスチャーなどを駆使して必死に意思を伝えようと努力している。伝わればよいですが…。
謎生物達はニキ様の動きをジッと見つめ、そして何かを受け取ったのか、小石で岩に絵を描き始めた。
じきに完成したそれは、大きな〝何か〟の絵。巨大な魚のような姿をしていますが…これが何なのでしょう…?
「 “ツヤイコワ! ツヤイコワ!” 」
「 “ツケヤッテ! ツケヤッテ!” 」
4匹はこの絵を指差して騒ぎ始めた。ここに描かれた生物に何か特別な因縁でもあるのでしょうか…。
「新しい絵が見たいんじゃなくて…コレ、オシエテ!」
「 “ツヤイコワ!! ツケヤッテ!!” 」
「オシエテ!!」
「 “ツケヤッテ!!” 」
何だか子供の押し問答を見ているようですね…。お互い一歩も譲ることなく…自分の主張をぶつけ合っています…。
このままでは埒が明きませんね…どうすれば進展するのでしょうか…。せっかくのまともな手掛かり…逃す訳にはいきませんのに…。
「おい頭巾代われ…このままじゃ一生話が進まねェ…」
「ワカッタ、カワル、ニ」
ニキ様に代わってアレス様が交渉に出た。ニキ様よりかは何とかしてくれそうですが…果たして上手くいくでしょうか…。
アレス様は魚の絵を指差し、次にご自身を指差すと、石で魚の上に
えーっと…
流石にそれは伝わらないのでは…──
「 “ヴ!” 」
伝わったんですか?
謎生物達は絵石をポーチにしまうと、肩に担いで今すぐ出発しようと意気込みだした。本当に伝わったのですね…。
「じゃあ早速出発するニ~! レッツラゴーニ~!」
「待ってくださいニキ様…! 先にカカ様達と合流した方が良いと思います…!」
「そういえばカカとロイスとカーリーが居ないニね。じゃあどうするニ? 一度皆の所に戻るニ?」
「いや、往復すんのは面倒だ…リクを飛ばしてアイツ等にここまで来てもらおう。雨が止んだら手紙を書く、それまでは待機だ。今のうちに行先聞いとけ」
再びニキ様がジェスチャーで会話を試みる。
ニキ様の必死なジェスチャーを凝視する謎生物達は、何とか意図を理解したらしく、真似をするかのように自分達もジェスチャーし始めた。
これは何を現してるのでしょうか…両手を空に掲げてふりふりしています…。凄く難しいクイズですね…何一つ分かりません…。
ニキ様…も分かっていませんねこの様子は…、見つめたまま固まってしまっています…。やはりアレス様に頼りましょう…。
「これは…何だろうな…、空に向かって手を振る仕草は…たまに町のガキ共がやってた気がするな…。何だったか…星…? いや…キラキラだったか…? 星…キラキラ…──あぁ…そういうことか…」
「分かったニ?! 行先はどこニ?!」
「〝
──現在、
<〔Persp
「…っで! 私達にそっち行けと! ──行けるかァァァァ!! こっちは最悪の状況なんだよっ! 病人が居んだ病人がっ!!」
「病人のそばで騒がないでくだサーイ」
「ロイス! 手紙書け! 私達は
ニキを連れて戻って来るだけの簡単な話だったのに…何だってこんな事に…。完全に別行動じゃねェかよ…。
本当にプラン通り行かねェもんだな…私達の石版探し…。向こうは手掛かりの為に
合流できるのはいつになることやら…、ハァ…お先真っ暗だぜ…。先の事はカーリーちゃんを助けてから考えることにしよう…。
「手紙を出したらもう寝るぞ、
「分かった、少し早目に起こしてくれてもいいからね」
「ボクも寝ルー。──おネエさん…ボク枕が欲しくテサ」
「言っとくが胸は貸さねェからな? 触れたらぶちのめすぞ」
ドタバタな2日目はこうして幕を下ろしていく。
誤って居眠りしちゃわないようにしねェとな…。まあ大丈夫か…徹夜にはなれてる。話し相手が居ないのが寂しいとこだがな…。
──
「おい起きろ変態、さっさと朝食摂って出発すんぞ」
「エー…まだ眠いヨー…、ウゥー…! 目覚めのパイターッチ!」
“バキッ…!!”
「目ェ覚めたか…?」
「オハヨウゴザイマス…」
朝っぱらからバカするパークをぶちのめし、昨晩の残り物を胃に詰め込む。カーリーちゃんは食欲がかなり減衰していて…ほとんど何も食べなかった…。
体を起こすのも辛そうだ…、呼吸も荒いし目も虚ろ…可哀想に…。辛いだろうけど…ハヤタタを手に入れるまでの辛抱だからね…。
ロイスがカーリーちゃんをおぶり、周囲を十分警戒しながら私達は川を上り始めた。水を飲みに来た生物と鉢合わせにならなきゃいいが…。
「ハァ~、おネエさんの頭の上は居心地が良いナ~」
「私で楽しようとすんな…、オマエ浮けるんだから浮いて前を行けよ…」
「ヤだよ怖いもン…、おネエさん強いからそばに居させてヨ」
確かにコイツ戦闘面で何の役にも立たなそうだな…、せいぜいデコイが関の山…。単純にお荷物…早く家に帰してやりてェ…。
アクアス達も大丈夫かな…、手紙には何か謎の生物がどうとか書いてあったけど…苦労してなければいいが…。
際限ない不安を抱え…罹患者と変態の精を連れてひたすら川を上っていく…。危険植物の箱庭〝
森の万能薬〝ハヤタタ〟を手に入れる為に──。
──第114話 ツケヤッテ!〈終〉