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120. 戦姫起動

「お主、何をするんじゃ!」


 この声は……! 俺は耳を疑う。心臓が高鳴り、希望の灯火が胸の内で揺らめく。


 恐る恐る目を開けると、なんとレヴィアが俺に抱き着いて、二人を覆うシールドでヌチ・ギの攻撃を防いでいたのだ。


 目の前でサラサラと金髪が陽の光を浴びて煌めき、ふんわりとさわやかな柑橘系の香りが漂ってくる――――。


「レ、レヴィア様!」


 俺は感極まって思わず叫ぶ。声が震え、涙が頬を伝う。


 レヴィアは静かにうなずいた。その真紅の瞳には、深い慈愛と強い決意が宿っている。


「無茶をするのう、お主」


 世話が焼けるとばかりにニヤッと笑うレヴィア。


 俺はその笑顔に深い安堵を覚えた。


「ドラゴン……、何の真似だ?」


 ヌチ・ギの声が冷たく響く。その瞳には怒りと、そして僅かな恐れの色が浮かんでいる。この世界で唯一自分に比肩する存在、レヴィアの出現が、動揺をもたらしたことは明らかだった。


「この男とあの娘は我の友人じゃ」


 レヴィアは一歩踏み出し、毅然とした態度でヌチ・ギと向き合う。その姿は、まるで古の英雄のように凛々しい。


「相互不可侵を犯してるのはお主の方じゃぞ!」


 金髪おかっぱの少女の姿をしたレヴィアの声には、りゅうの威厳が滲み出ている。周囲の空気が、その威圧感に震えているようだ。


 俺は息を呑む。レヴィアの背中に、希望の光を見た気がした。


「そいつはチート野郎だ」


 ヌチ・ギは歯をみしめ、憎悪の眼差しで俺を指さす。


「チートは犯罪であり、処罰する権限は俺にある!」


 早口でまくし立てるヌチ・ギ。しかし、レヴィアは冷ややかな微笑みを浮かべる。


「レベルを落としたじゃろ?」


 その口調には、かすかなあざけりが滲む。


「ペナルティはもう終わっておる。娘をさらうのはやり過ぎじゃ!」


 レヴィアの瞳に、りゅうの怒りが燃え盛る。その威圧感に、周囲の空気さえも震えているようだ。


 ヌチ・ギは言葉を失い, ただレヴィアを睨みつける。その表情には、焦燥しょうそう憤怒ふんぬが交錯している。だが次の瞬間、彼の目が何かを決意したかのように冷たく光る。


「まぁ、いい……。いずれお前とは決着をつけるつもりだった。少し早まってしまったが……」


 突如、ヌチ・ギは後方へ跳躍する。その動きは、人知を超えた俊敏しゅんびんさだ。


戦乙女ヴァルキュリ! 起動!」


 その叫びと共に、彼は空間を大きく切り裂く。裂け目から溢れ出す光は、まるで稲妻が空中にとどまったような激しいエネルギーを感じさせた。



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