ガン! と、俺は何かに頭をぶつけた衝撃を覚え、意識が現実世界へと引き戻されていく――――。
「う、ここはどこだ?」
周囲を見回すと……、確かにポッドの中だが……冷たいガラスの上に寝ころばされていた。これは、天地が逆転しているのではないか?
何とかガラスカバーを開け、
「なんだこりゃ!?」
戸惑いの声を上げた瞬間、微かな
「うぅ……」
振り向いた先で目にしたのは、凄惨な光景だった。テーブルの上に横たわるドロシー。
「ドロシー!」
俺は血の気が引く思いで駆け寄り、その
「あ、あなた……」
力のない声を絞り出すドロシー。その
「何されたんだ? 大丈夫か?」
弱り切ったドロシーの姿に、俺の目から熱い涙がこぼれ落ちる。
「だ、大丈夫よ……。あなたが……倒してくれたんでしょ……」
力なく微笑むドロシーの表情には、
「間に合ったんだな……良かった……」
俺は強くドロシーを抱きしめ、安堵の涙を流す。その柔らかな温もりが、彼女の確かな存在の証となって心に染み入った。
「ただ……あれ……どうしよう……」
「え?」
ドロシーの震える指先が指し示す先には、あの巨大な漆黒の壁がある。
「あれ……何なの?」
「
「蜘蛛……? 虫の蜘蛛なの? 壁じゃなくて?」
「蜘蛛なの……」
俺はドロシーの言葉の意味を理解できずにいた。崩壊した神殿を覆い尽くすこの漆黒の壁が、なぜ蜘蛛と呼ばれるのか? その疑問が頭の中を巡る中、不吉な予感が背筋を走る。もしやこれは、管理者の残した最後の
ガコン!
重厚な音と共にレヴィアのポッドが開かれた。
「なっ! なんじゃこりゃぁ!」
「蜘蛛……なんだそうです」
俺が告げると、レヴィアは漆黒の壁を
はぁっ!?
叫び声をあげたレヴィアは、大きくため息をつき、ガックリとうなだれた。
「これはアカン……。もうダメじゃ。ヴィーナ様にすがるより他なくなったわ……」
あれほど怖がっていた女神にすがらざるを得ない。それは事態の深刻さを物語っていた。
俺は首をひねりながら鑑定スキルを発動させた――――。
アシダカグモ レア度:★
家の中の害虫を食べる益虫 全長:二百五十三キロメートル
特殊効果:物理攻撃無効
「ただの星1の蜘蛛で……、へっ!? 二百五十三キロメートル!?」
俺は思わず絶叫した。その数字の異常さに、背筋が凍る。
「九州と同じくらいのサイズの蜘蛛じゃ。その上物理攻撃無効ときている。もうワシでは手のつけようがないわ」
レヴィアは
「じゃ、この壁は?」
「蜘蛛の足に生えている毛の表面じゃないかのう? 足一本の太さが数キロメートルはあるでのう」
俺は言葉を失った。その規模は、人智を超えた
「ヌチ・ギの巨大化レーザー発振器が蜘蛛に……。止めようと思ったんだけど体が動かなくて……」
ドロシーが
ゴゴゴゴゴゴゴ
突如として地鳴りのような振動が響き渡る。蜘蛛が動き出したのだ。
バラバラと神殿の大理石が崩落してくる。粉塵が舞い、