俺は信じがたい光景に目を見開いた。
動き出した蜘蛛の足は、
「何をボヤッとしとる! 逃げるぞ!」
レヴィアの
蜘蛛の足は神殿をモナカのように軽々と割りながら崩落させ、轟音を響かせていく。
うひぃ! ひゃぁ!
「早くせんかい!」
レヴィアは、頭を抱える俺たちをまるで
この
危機を乗り越えたと思えば、さらに大きな脅威が待ち受けていた。俺は事態の重大さに、思わず目眩を覚える。
亀裂を通して、今まさに蜘蛛の足が全てを破壊しつくしていくのが見える。その存在は、人類の想像を超えた
◇
御嶽山のスイートホームに逃げてきた三人――――。
ログハウスのデッキに立つレヴィアが、思いがけない物を取り出した。スマートフォンだ。この異世界でスマートフォンとはさすがに違和感がある。まあ、海王星で見てきたモノたちからすれば些細なことかもしれないが。
複数のカメラレンズを備えた
「え!? もしかしてiPhone……ですか?」
「そうじゃ、最新型じゃぞ、ええじゃろ」
レヴィアは
ただ、異世界でもスマホなんて使えるのだろうか?
「え? 電波届くんですか?」
「ちっくら空間をつなげて電波を拾うんじゃ」
「女神様に連絡取るのにスマホってなんだか不思議ですね……」
「こういうローテクのガジェットというのは風情があって人気なのじゃ。それに正式な申請だとご本人まで届かんかもしれん……」
なるほど、神々の世界でも非公式な連絡手段の方が確実な場合があるのだろう。
「さて、かけるかのう……。ふぅ……。緊張してきた……」
レヴィアの表情が
レヴィアは深く息を吸い、
そして、幾度ものコール音ののち、それはつながった――――。
「ごっ! ご無沙汰しております~、レ、レヴィアです。あ、はい……はい……。その節はどうもお世話になりまして……。はい。いや、そんな、滅相もございません。それで……ですね……。少々、ヴィーナ様にお願いがございまして……。え? いや、そうではないです! はい! はい!」
レヴィアの
「その辺りはご学友の瀬崎豊が説明すると申しておりまして……。はい、はい……」
は……?
突然の
「ちょ、ちょっと困りますよ……」
慌ててレヴィアの耳元でささやくが、レヴィアは俺を手で追い払い、抗議を受け付けない。
「マ、マジかよぉ……」
緊張が俺の身体にも伝染していく。
「え? 猫? もう、猫でも何でも……」
なぜ猫? 会話の文脈が全く掴めない。なんでこのような非常事態に猫の話題が出てくるのか?
「では、今すぐ転送します。はい……、はい……。では、よろしくお願いいたします」
通話を終えたレヴィアは、深いため息をつく。その表情には、重圧から解放された安堵の色が浮かんでいた。